英語スピーキングの勉強方法 独学で上達する英会話練習方法 第二言語習得研究を丁寧に解説

はじめに

今回は英語スピーキングの勉強方法を丁寧に解説します。第二言語習得研究をもとに、独学で上達する英会話練習方法をステップに分けて丁寧に解説していきます。まずは、なぜ英語スピーキングは難しいのか?という問いを立て、第二言語習得研究のスピーキングモデルやU字型発達曲線・トレードオフ仮説を外観します。2章では、一般的な英語スピーキングの練習方法としてフォーミュラにもとづくスピーキング、同じテーマ・トピックの反復学習を紹介しながら、プレイン・イングリッシュの重要性も解説しています。3章で2つのスピーキングの正体(モノローグ・ダイアローグ)を整理しつつ、最後に独学でスピーキングが上達する勉強方法をレベルごとに3つ(自己紹介、15/45 トレーニング、パラフレーズレーニング)紹介しています。ぜひ独学の参考にしてください。

  

 

英語を話すためのインプットの重要性を解説しています↓↓ 

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 効果的な英単語の覚え方について考えています↓↓

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第二言語習得研究に基づく英語リーディング力の伸ばし方↓↓ 

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主な参考文献

 

「英語学習論 スピーキングと総合力」

 

「英語の学び方入門」

 

「外国語を話せるようになるしくみ」

 

「英会話日常表現大辞典 10000+」

 

なぜ英語スピーキングは難しい?

なぜスピーキング?

第二言語習得研究のスピーキングモデル

英語スピーキングの難しさを知る手がかりになるのがスピーキングモデルです。このモデルは元々は母語をのスピーキングのプロセスを説明するために考案されたものですが、第二言語を話すプロセスに示唆を与えてくれます。スピーチ・プロダクションモデルは、私たちのアウトプットのプロセスを3段階のステップに分解したモデルです。

 

スピーチモデル

 

まずは概念化装置で、自分の伝えたい想いを形成していきます。例えば、今お腹がすいているなと感じたとしたら、「お腹が空いたなと」心の声が生まれてきます。二つ目の形式化は、「お腹が空いたなと」という心の声を言葉にのせる作業です。空腹という単語を探して「hungry」という単語を頭の中の辞書から見つけると同時に、音韻・音声情報も作成します。最後の調音化は、実際に「I am hungry」と発話するプロセスを指します。 実際にメッセージを言語化する最終ステップです。

 

形式化

  • 語彙・文法コード化:検索した語彙情報から語句を組み立てる
  • 形態・音韻コード化:アクセントや音韻知識を活用
  • 音声コード化:舌の位置、口の使い方、声帯の振動情報を作成

 

母語を話す際はこれらの複雑なプロセスは自動的に処理されますが、第二言語を話す際は各ステップを意識して実行する必要があるため、スムーズな会話が難しくなります。

 

 こちらで第二言語習得研究の全体像を解説しています↓↓

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U字型発達曲線

アウトプットの役割を考える際に、参考になるのがU字型発達曲線と呼ばれるものです。U字型発達曲線は、言語の創造的な使用がどのようなプロセスで実現されるかの示唆を与えてくれます。

 

U字型発達曲線

  • 第1段階:言語をそのまま暗記
  • 第2段階:規則や法則を抽出
  • 第3段階:創造的に言語使用

 

第1段階では、目標となる言語を暗記します。正確性は高いですが、表現が限定的な状態となっています。第2段階では正確性は下がりますが、トライ&エラーを通して一般的な法則を抽出できるようになります。最後の第三段階では、あらゆる状況で柔軟な言語使用が可能になっていきます。

U字型発達曲線

柔軟な言語使用を実現するためには言語の暗記から始まり、一度言語の正確性が減少してから、少しずつ例外的な言語仕様にも対応できるようになり最終的な創造的な言語仕様にたどりつきます。

 

トレードオフ仮説

人間の脳の限られた注意量をどのように調整して分配するのかが、英語スピーキングを実践するうえで大切になります。このような調整や選択はトレードオフ仮説と言われています。この理論に基づくと、英語で話す時は話し手の注意量は2段階で分散していきます。トレードオフを克服するためには、繰り返しと計画時間をもつことが大切だと言われています。 

 

トレードオフ仮説

 

1 段階目では、流暢さと言語形式が分散されてしまいます。経験があると思いますが、英語をすらすらと話そうとすると文法形式への注意がおろそかになってしまい、間違いの数が多くなってしまいます。2段階目では、複雑さと正確さに分散してしまいます。複雑な構文などを使っていざ話そうとすると正確に話すことが難しくなってしまいますので、注意量を調整して話すことが大切になります。

 

英語スピーキングの練習方法

英語スピーキングの練習方法

フォーミュラにもとづくスピーキング

フォーミュラにもとづくスピーキングとは、単語と単語の連なりやチャンク(フォーミュラ・定型表現)を基にしたスピーキングで、以下のフレーズやイディオムを活用します。フォーミュラを活用することで、文の構築が楽になり認知負荷を低減させることができると言われています。

 

フォーミュラの種類

  • 複合語(compounds):water tank、washing machineなど
  • 句動詞(phasal verbs):come out、go byなど
  • イディオム(idioms):spill the beans、see eye to eyeなど
  • 固定フレーズ(fixed pharase):of course、in factなど
  • プレハブ(prefabs):the thing、point isなど

参考:外国語を話せるようになるしくみ p97の一部参照

 

フォーミュラは、英語母国語話者がメンタルレキシコン(脳内に記憶された語に関する知識の総体)内に、単語に分解せずに蓄えていると考えられているのもので、スピーキングの際にはそのまま検索して活用されていると言われています。文法規則や語法情報にもとづくスピーキングと比較して、認知負荷が低くスピーディーな発話が可能です。

 

フォーミュラ スピーキング

 

チャンク学習(パターンプラクティス)について解説しています ↓↓

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プレイン・イングリッシュ

プレイン・イングリッシュ(plain English)とは、できるだけシンプルな表現を使うことです。シンプルな英語を使用すれば、自分の考えを的確かつ短時間で伝えることができます。プレイン・イングリッシュは想像以上の効果を期待できます。

 

  1. 長い単語より短い単語
  2. カッコいい凝った単語よりは、慣れ親しんだ単語を
  3. 抽象的な単語より、具体的なものを
  4. よけいな単語は使わない
  5. できるだけ能動態を使う
  6. 動詞を生かす
  7. できるだけ否定形を避ける
  8. 1つの文にには1つの情報を
  9. まず概論を述べてから、詳細に入る
  10. 原因・結果をはっきり述べる 

引用:英語の学び方入門

 

1〜4は語彙使用の原則で、難しい語彙を避け簡単な単語を使うことを勧めています。5〜7は文法使用のルールで認知的資源をあまり使わない能動態・肯定形を使うことが推奨されています。8〜10は情報伝達のルールで大情報→小情報を意識して的確かつ論理的な伝え方の大原則です。

 

プレインイングリッシュ

 

普段私達が使っている母国語は語彙も文法も高度な場合が多く、そのまま翻訳してしまうと長くて分かりづらい英語になってしまいます。ポイントは日本語の複雑な表現にとらわれずに、1文1情報を心がけて情報を勇気をもって分けることです。

 

同じテーマ・トピックの反復学習

3つ目のトレーニングは、同じテーマ・トピックの反復学習です。同じテーマの反復学習(タスク)の繰り返しは退屈で学習効果が低いと思われるかもしれません。実はタスクを繰り返すことで、第二外国語学習者の流暢さ(1秒ごとの音節の数)が向上する研究成果もあります。

 

タスクの繰り返し

引用:TASK REPETITION AND SECOND LANGUAGE SPEECH PROCESSING

 

流暢さが向上する要因としては、下記の研究でも明らかになっている概念化への注力の減少があるかもしれません。言語形式(sytax)に意識を向ける余裕が生まれると、流暢さも向上するはずです。初学者は様々なテーマのスピーキングに挑戦するのではなく、同じトピックの課題を繰り返しトレーニングすることが大切です。

 

タスクの繰り返し

引用:Two Cases from an English for Business Purposes Program

  

2つのスピーキングの正体

2つのスピーキング

ノローグ

スピーキングはモノローグ(monologue)とダイアローグ(dialogue)の2つに分かれていてそれぞれ必要な能力が異なります。ノローグは一人で話す、スピーチやプレゼンテーションです。例えば、仕事で一方的に話すモノローグが求められているのであれば、事前に構成や話す内容を考えればなんとかなります。但し、多くの人が想定しているスピーキングは次のダイアローグになるはずです。

 

モノローグ

引用:All by yourself: monologues in elementary speaking

 

ダイアローグ

ダイアローグは他者と話す対話になります。したがって、一方通行のスピーチ等と性質が異なります。事前の準備だけでは対処できず、interaction(インタラクション)が重要な要素となってきます。ダイアローグには3つのパターンがあると言われています。

 

ダイアローグの3つのパターン

  • 非対称パターン:片方が話し続け、もう一方が聴いているだけ。
  • 平行パターン:一人が一方的に話し、終わったらもう一方が話す。
  • 協力的パターン:2人が意見を伝え、両者で考えを展開。

引用:英語の学び方入門

 

片方(学習者)のスピーキング力が低い場合は、もう一方(講師)の話を聴いているケースが多くなってしまいます。レベルが高すぎる英会話クラスや教材を使っていると陥りやすいパターンです。平行パターンは、それぞれダイアローグ的なスピーキングを実行している場合で上手にinteraction(インタラクション)が行われていないケースです。協力的パターンのダイアローグは、2人が意見を伝えて話を展開する理想的なダイアローグです。

 

協力的なダイアローグを実行するために、相手の内容を要約したり言い換えたりすることが大切で、一緒に会話を創り上げることが求められます。次の章で説明するパラフレーズも大いに役に立ちます。

 

独学でスピーキングが上達する勉強方法

独学スピーキング

自己紹介(Level 1)

まず最初のトレーニングとしておすすめなのが英語の自己紹介です。自己紹介自体はモノローグの一種なので独学でトレーニングが可能です。但し、英会話で実践する際はインタラクションの要素(質問の応答)が加わります。同じトピック(自己紹介)は何度も繰り返すことで流暢性が高まり、充実した内容を話せる(言語の形式化に比重が置ける)ようになることで自信が付いてきます。

自己紹介ノート

私が実際に実践した方法が紹介すると、まずはノートを用意します。左側はストックノート(覚えた表現や使いたい表現を貯める場所)に、右側は自己紹介の記録用に使います。ポイントはシンプルイングリッシュを意識して、少しずつ使える表現を増やしていくことです。ストックノートは質問と答えのセットにすることで記憶に残りやすくなり、実践でも使えるようになります。5W1Hを使うことで、概要→説明という構造を作りやすくなります。

 

私はオンライン英会話(DMM英会話)を利用して、世界各国の人に自分の自己紹介を何度も伝えるトレーニングをしてきました。DMM英会話は講師の数も多く、グローバルの講師が揃っているので自己紹介を訓練するには最適な環境です。私は講師を固定せずに毎回自己紹介を重視してレッスンを受講していました。

 

DMM英会話|131ヶ国の講師に毎日自己紹介

 

DMM英会話の特徴

  • 世界131ヵ国10,000人以上の講師が在籍
  • 10,623以上の教材がすべて無料
  • 初心者向け日本人講師在籍
  • 英単語学習アプリ iKnow! が無料

 

15/45 トレーニング(Level 2)

2つ目は特定のトピックの内容を15秒で考えて45秒で話す15/45トレーニングです。学習者は十分なプランニングができない状態で、アウトプットすることが求められます。このような練習を繰り返せば、既述した「概念化」(言いたいことのコンセプト・概念を生成する)から「形式化」(生成したコンセプト・概念を言語化する)のプロセスが強化されると言われています。IELTSやTOEFLのスピーキングテストを練習しても同様の効果が得られます。

 

15/45トレーニング

 

注意すべきポイントは15秒の時間を日本語→英語の英作文の時間に費やさないように、しっかり概念化の時間にあてることです。大切なのはアイデアの構築と発話の流れをセットで実行することなので、45秒という時間が短すぎると感じれば90→60→45秒と段階的に短くしても大丈夫です。

 

15/45トレーニングにおすすめのトピックはこちら↓↓

www.bestmytest.com

 

パラフレーズレーニング(Level3)

最後は英語の表現を言い換えるパラフレーズのトレーニングです。英語を言い換えることで、語彙力・要約力が向上するだけではなく、実際のコニュニケーションが円滑になる等メリットがたくさんあります。オーストラリアのメルボルン大学では同義を使ったパラフレーズを教えたことで、語彙力が向上したという研究が発表されています。

 

www.youtube.com

 

AtsueigoさんのYoutubeチャンネルでパラフレーズの具体的にトレーニング方法を丁寧に解説されています。特に、語彙力強化に着目してパラフレーズレーニングの重要性を説明しています。ぜひチェックしてみてください。パラフレーズの語句はAtsueigoさんのようにネットで検索もできますが、ジャンルごとに整理されている参考書などを使って語彙力強化するのもおすすめです。(英会話日常表現大辞典10000+)

 

英語 言い換え表現

 

第二言語習得研究に基づく英語スピーキングの練習は独学でも十分実行可能で、ブログの内容を実践すれば必ず成果が出てきます。但し、自分の学習成果をモニターしてくれたり、フィードバックしてくれる方がいるとより成果が高まるのも事実です。独学では慣れないうちはモチベーションの維持が難しいかもしれません。そこで外部サービスを活用するのも1つの手です。

 

第二言語習得論の第一人者、ケース・ウェスタン・リザーブ大学認知科学科教授の白井氏が社外取締役就任されているスパトレでは第二言語習得論・認知心理学脳科学の研究結果を活用し、確実に英語力を身に付けることを目的とした英語トレーニングサービスを提供しています。

 

スパトレ|第二言語習得論に基づく英語トレーニング

 

スパトレの特徴

  • 実力に合わせた最適な学習方法を提案
  • 第二言語習得論に基づく学習体系
  • プロのトレーナーがあなたを最大限サポート
  • 成果を最短で得るための徹底した予習・復習

 

スパトレでは、大量のインプットと少量のアウトプットを学習の基本とし、英会話レッスンではなく、徹底した自習を重視。また、日本人サポートや外国人トレーナーによる継続的なサポートにより、成果にこだわる英語トレーニングを提供しています。第二言語習得理論をバックに急成長したい場合は上記のようなサービスも活用すると良いでしょう。

 

参考

Cambridge University Press | TASK REPETITION AND SECOND LANGUAGE SPEECH PROCESSING

Cambridge University Press All by yourself: monologues in elementary speaking

Speaker Deck | Designing Task-based ESP Syllabi: Two Cases from an English for Business Purposes Program

BestMyTestNew TOEFL Speaking Topics Updated for the TOEFL Speaking Task 1 - 2020 Edition

Atsueigo|誰でも簡単にペラペラになれるパラフレ英語勉強法!

The University of MelbourneBuilding Vocabulary Knowledge by Teaching Paraphrasing with the Use of Synonyms Improves Comprehension for Year Six ESL Students

モノリンガルとは? メリット・デメリットを徹底解説  バイリンガルとの違いとは!?

はじめに

今回はモノリンガルについて考えていきます。モノリンガルは単一の言語を話す人やその主義を表します。モノリンガルの意味や脳の仕組みも解説していきます。日本のような単一の言語しか話さない国はどの国なのか、モノリンガル主義についても考えていきます。最後にモノリンガルとバイリンガルのメリット・デメリットを解説していきます。バイリンガル教育や言語学習のヒントもたくさん詰まっていますのでぜひ参考にしてください。

 

 

 多言語話者のメリットなどを解説しています↓↓

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主な参考文献

 

「よくわかる言語発達」

  

「レキシコンの構築」

 

「第2言語ユーザのことばと心」

モノリンガルとは?

モノリンガルとは

モノリンガルの意味

モノリンガルとは英語で「monolingual」で、ギリシア語系の接頭辞「mono」(1つの)に「lingua」と「言葉」、「al」(性質)という言葉が一緒になった言葉です。文字通り、1つの言語を話す人やそのグループを指します。

 

able to use one language well

(of a group or place) using one language as the main language

引用:Cambridge Dictionary

 

ケンブリッジディクショナリーによると、メインの言語(母語)を上手に使うことができるのが条件になっています。メインの言語を疎かににしてしまうと、セミリンガルになる危険もあります。詳しくは過去記事を見てください。

 

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話す言語が増えていくと「bi」(2)、「tri」(3)、「quadr」(4)と変化します。数字の1、2、3であればonetwothreeとなりそうですが、バイ(bi)、トリ(tri)、クワド(quadr)はそれぞれラテン語の数字に由来しています。

  

言語の数 英語名
1言語 monolingual(モノリンガル)
2言語 bilingual(バイリンガル)
3言語 trilingual(トリリンガル)
4言語 quadrilingual(クワドリンガル)
5言語 quinqulingual

 

トリリンガルはこちらで解説しています↓↓ 

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モノリンガルの脳

 モノリンガルの脳とバイリンガルの脳の構造そのものに違いはありませんが、モノリンガルとバイリンガルの脳を比較した研究はあるようです。モノリンガルの脳は前頭葉に依存する傾向があり、加齢と関連性があるようです。一方で、バイリンガルの脳は「temporal 」(側頭葉)と「parietal cortex」(頭頂葉)との行き来が増加していると報告されています。

 

モノリンガルの脳

引用:Cognitive control, cognitive reserve, and memory in the aging bilingual brain,2014

 

バイリンガル話者の言語切替による脳の機能的連結性の研究などもあり、今後もますます注目される研究分野かもしれません。特に、個別の言語刺激に対して脳の各分野でどのような反応があるのかが研究の中心になるようです。

 

モノリンガルの国

モノリンガルの国

モノリンガルの割合

世界全体でモノリンガルの割合は約40%と言われています。2ヶ国語を話せるバイリンガルは全体の43%、3ヶ国語を話せるトリリンガルは全体の13%となっています。世界の約6割の人は2ヶ国語以上の言語を話せるという結果になっています。

 

割合 言語
40% monolingual(モノリンガル)
43% bilingual(バイリンガル)
13% trilingual(トリリンガル)
3% Multilingual(マルチリンガル)
1%未満 Polyglot(ポリグロット)

 引用:ILANGUAGES.ORG | Multilingual People(調査年不明)

 

マルチリンガルになる勉強法などを解説↓↓

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モノリンガルの国

モノリンガルの国はいったいどこの国になるのでしょうか。完全なモノリンガル(単一言語を話すグループ)は存在していませんが、モノリンガルの傾向が高い・低い国は分かります。

 

世界の言語多様性

引用:What countries have the most languages?

 

Ethnologueが2021年に発表した言語の多様性ランキングでは、パプアニューギニアが1位となり、世界で最も言語が多い国となりました。人口はわずか880万人と小さいですが、合わせて840の言語が話されていて、その言語数は世界言語のほぼ12%にあたります。

 

一方で、最も多様性が低い国(つまりモノリンガルの国)は、イギリス領インド洋地域British Indian Ocean Territory)と北朝鮮で、1言語しか話されていない国となりました。日本は、詳細は不明ですが18の言語が話されているという結果で全体の117位という結果になりました。(全体は国と地域合わせて235カ国)

 

欧州モノリンガル

引用:What languages have high percentage of monolingual speakers?

 

ヨーロッパに絞って、モノリンガルの割合を調べた調査もあります。6年前の古いデータになりますが、欧州ではギリシャ(EL)、スペイン(ES)、イタリア(IT)、イギリス(UK)、アイルランド(IE)は二ヶ国語以上を話せる人の割合が2割未満となっており、モノリンガルの国の傾向が強いと言えるでしょう。

 

アメリカのモノリンガル主義

アメリカでは1970年代後半からバイリンガル教育への疑問視やヒスパニック系の移民の増加に対して、州単位でも英語公用語の動きが始まりました。2003年には23の州が英語を公用語として認めています。実は以外かもしれませんが、アメリカに国家単位での公用語の規定はありません。現在は32の州で英語が公用語として設定されています。

 

アメリカのモノリンガル主義

引用: Toward a Monolingual USA? The Modern English-Only Movement

 

アメリカの移民の数は世界で一番多く、2020年には5,000万人を突破しており移民国家とも言えます。国家を1つにまとめあげる英語の重要性も分かりつつも、バイリンガルワーカーの地位も着実に上っているようです。

 

www.bbc.com

 

YouGovの調査ではアメリカの43%の人は第二言語を学びたいと思っているという結果が出ました。他の28%の人は第二言語を話す必要はない、13%の人は旅行に行く時のみ基本的な知識が必要だと感じています。残りの15%の人は、その言語が主要な世界言語である場合にのみ必要性を感じると回答しています。

 

アメリカの第二言語

引用:75% of Americans have no second language,2013

 

おそらくアメリカ人にとって世界的に重要な言語の1つとして挙げられるのはスペイン語となるでしょう。アメリカに渡ってくるヒスパニック系の人の存在を無視することはできません。Pew Research Center が2013年に実施した調査によると、スペイン語しか話せない人が38%と一番多い結果となりました。

 

ヒスパニック系のバイリンガル

引用:A majority of English-speaking Hispanics in the U.S. are bilingual

 

モノリンガル・バイリンガル(メリット・デメリット)

メリット・デメリット

語彙サイズの広さ

2008年に神経言語学の雑誌で紹介された研究では、モノリンガルはバイリンガルよりも語彙力が豊富で、流暢に話すという結果が出ています。但し、バイリンガルのそれぞれの語彙サイズを足すと、モノリンガルと同じ語彙サイズになるとも指摘されています。つまり、モノリンガルは単一の言語に集中できるので、その言語では優位性があるということになります。一方で、バイリンガルの語彙量はそれぞれの言語に分散されてしまいます。

 

語彙サイズ

引用:Lexical access in bilinguals: Effects of vocabulary size and executive contro,2008

 

モノリンガルの流暢性が多言語を学ぶことによって、どれぐらい下がってしまうのかが気になるところです。2014年に実施された研究によれば、周囲の環境によりますが語彙力は10〜30%減少してしまいます。

 

モノリンガルの語彙サイズ

引用:Expressive Vocabulary Development in Children from Bilingual and Monolingual Homes: A Longitudinal Study from Two to Four Years, 2014

 

メンタルヘルス

複数の言語を話すことは、脳の健康に寄与するという研究成果が数多く報告されています。2007年にカナダで行われた研究によれば、バイリンガルの人はモノリンガルの人より認知症の発症を4年遅らせるという結果が出ています。

 

project.nikkeibp.co.jp

 

また、別の研究では認知症患者の進行具合が同程度のモノリンガル・バイリンガル患者の脳をスキャナーによって調べたところ、バイリンガルの患者の方が脳が萎縮しているという結果が出ました。つまり、複数の言語を話すことによって脳機能が低下がしないように何かによって守られているということが示唆されています。

 

柔軟性

バイリンガルはモノリンガルよりも認知的柔軟性が高いという研究が数多く報告されています。出生直後ではモノリンガル・バイリンガルともに母語とそれ以外の音を区別できるという点では共通しています。その後、モノリンガルは母語音韻のみを聞けるように音韻の弁別能力が減少するのに対して、バイリンガルは多少の変動はあるものの弁別能力は失われません。

 

柔軟性

 

認知的柔軟性においては、モノリンガルは基本的に1つの単語に対して1つのラベルしか許容できませんが、バイリンガルは常に異言語間同義語を獲得する必要があるので、認知柔軟性を高く保つことができます。

 

Bialystok,1999の実験では、子ども達に一つ目のルール (例えば同じ形のものを分類する) でカードを分類するように教示し、その後新しいルール (例えば、同じ色のものを分類する) で分類するよう教示した時に、バイリンガルの子どもがモノリンガルよりも柔軟にルールを切り替えることができるという結果が出ました。

 

メンタルレキシコン

バイリンガルの認知はモノリンガルに比べやや複雑な構造になっていると言われています。バイリンガルの情報認知のシステムにおいて、最初に提案されたのが階層モデル(Kroll& Stewart,1994)になります。階層モデルの最大の特徴は、全ての概念(意味要素)をL1とL2で共有していることです。一方で、モノリンガルは当然ですが単一の言語形式と概念が強く連結されています。

 

メンタルレキシコン 

但し、階層モデルでは言語間の意味領域の差異をうまく説明できていないことから、特徴要素モデル(De Groot, 1995)も提唱されています。特徴要素モデルでは、L1とL2それぞれ固有の語彙が存在すると主張しています。

 

メンタルレキシコン2

  

参考

Cambridge Dictionary

WikipediaMonolingualism

Dana FoundationThe Cognitive Benefits of Being Bilingual

Researchgate | Cognitive control, cognitive reserve, and memory in the aging bilingual brain

ILANGUAGES.ORG | Multilingual People

Science Direct | Lexical access in bilinguals: Effects of vocabulary size and executive control

Europe pmc |  Expressive Vocabulary Development in Children from Bilingual and Monolingual Homes: A Longitudinal Study from Two to Four Years.

Ethnologue What countries have the most languages?

ATLAS & BOOTS | WORLD’S MOST MULTILINGUAL COUNTRIES – RANKED

reddit | What languages have high percentage of monolingual speakers?

立命館大学 |  論説 アメリカにおけるバイリンガル教育と英語公用語化の是非論

Colorincolorado | Toward a Monolingual USA? The Modern English-Only Movement

YouGov |  75% of Americans have no second language

Pew Research Center A majority of English-speaking Hispanics in the U.S. are bilingual

Science direct | Lexical access in bilinguals: Effects of vocabulary size and executive control

Biology news | Canadian study shows bilingualism has protective effect in delaying onset of dementia by four years

Wiley Online Library | Cognitive Complexity and Attentional Control in the Bilingual Mind

なぜネイティブ英語が聞き取れないのか?原因は? 単語耳と英語舌の作り方・外国語認知メカニズム

 はじめに

英語が聞き取れない原因は?

今回はなぜネイティブの英語・子音が聞き取れない?その原因や英語耳と英語舌の作り方を解説していきます。まぜ、日本人がネイティブの話す英語や子音を上手く聞き取れないのか?という原因について考えていきながら、外国語の認知メカニズムを明らかにします。まずは、外国語聴解に必要な要素(英語が聞き取れない原因)を整理します。その次は、理解される外国語音声の表出するために意識するべきことを確認します。それらの基礎理論を踏まえ、ネイティブの英語耳・英語舌を作りのための具体的なトレーニング方法を説明していきます。最後に、発音の学び方として、トレーニングにおすすめの教材を紹介していきます。

リスニング学習の全体像

今回のブログではリスニング力の音声認識・認知メカニズムに焦点をあてています。頭の中で日本語から英語に翻訳してしまうなどの問題に対してはチャンク学習(パターンプラクティス)がおすすめです。

 

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英語を聞き取るためには語彙力や基礎的な読解力も必要となりますので過去記事を参照してください。

 

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その他 第二言語習得研究関連のブログ

 

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主な参考文献

 

「外国語音声の認知メカニズム」

 

スペリングと発音のしくみがわかる本」

 

「英語学習論 スピーキングと総合力」

 

「英語舌のつくり方」

 

「単語耳」

 

 

 

英語が聞き取れない原因は?

外国語の聴解に必要な要素

音素レベルの識別

外国語を聞き分けるためにまずは、私達が普段「音」とどう向き合っているのかを知る必要があります。実は日本語を話したり、聞いたりする時「音素」(phoneme)というかたちで音を識別しています。「音素」とは抽象的な音のまとまりで、音声学的に異なる音価であっても個別言語(日本語や英語)の中で同じと見なされる音の集まりを指します。ロシアの言語学者ボードゥアン・ド・クルトネが初めてその概念を提唱しました。

 

英語の母音の音素を下記のように無理やりあてはめてしまうと、正しく英語の音声を認知できなくなってしまいます。英語を学習するのであれば、英語の音素の世界で音声を認知して発話することが必要となります。

 

英語の音素

引用:なぜ日本語母語話者は英語の音を聞き誤るのか?

 

「音素」を音声学的に展開したものが「異音」です。「異音」は抽象的な音素を音声学的に具現化したもので、私達が普段日本語の音素の世界で生きていることを自覚させてくれます。英語を含む外国語の発音をマスターするには、まずは日本語の音素の世界から抜け出すことが必要となります。

 

音素

日本語では「とぼ」、「きか」、「テト」の下線部の発音は全て/n/としか認識されません。但し、音声学の世界では別々に認識されています。/n/を区別する外国語話者の人にとっては、/n/の異音として【ŋ】、【m】、【n】が認知されます。

 

英語と日本語の音声の違い

周波数

日本語の周波数は他の主要欧米言語に比べてやや低くなっています。個人差や男女差はあるものの、大きな違いがあると言えるでしょうか。US English(アメリカ英語)は若干共通の周波数はあるものの、UK Engkish(イギリス英語)に関しては周波数のレベルが全く異なります。この周波数の違いに着目した英語学習の方法や発話方法も多数存在しているようです。

 

言語の周波数

引用:Sound Frequencies of Language

 

ルフレッド・トマティス博士は各言語の「Bande Passante」(Preferential Frequency Band=優先周波数帯域)を発見し、耳鼻咽喉科の専門家チームとともに耳と声あるいはリスニングとコミュニケーションのスキルの間に存在する関係を明らかにしながら、TOMATISメソッドを開発しました。声は耳が聞くものによって決定されるという理論をもとに、リスニング力を高めるトレーニングを展開しています。

 

talk-first メソッド

引用:Talk-First 

 

TEDで有名になった脳科学研究者のパトリシア・クール氏は各言語の主要音素を分析し周波数のトライアングル構造を比較しています。各言語の周波数分析は今後も注目されていくかもしれません。

 

周波数のトライアングル

引用:Cross-language analysis of phonetic units in language addressed to infants,1997


 

↓↓興味のある方はチェックしてみてください

www.ted.com

 

音節

音節とは母音ひとつを中心とした音の単位を示します。日本語の一文字を分解してみると、「1子音+1母音」となります。例えば、「n a」 (な)「z e」(ぜ)というように、「子音 母音 子音 母音・・」と規則的に並ぶことが多くなっています。一方で英語は、母音一つ、その母音の前後に合計1~7つの子音がくっつき、一音節を形成していきます。

 

英語の音節

  1. 子音+母音:go [gou]
  2. 子音+子音+母音:play [plei]
  3. 子音+子音+母音+子音:great [greit]
  4. 子音+子音+子音+母音+子音+子音:strict [strikt]

 

上記の4つは全部母音がひとつしか入っていないので、一音節の単語となります。ネイティブスピーカーにとっては一つの音と感じているようで、事項で説明するリズムを形成するために大切な要素となってきます。

 

 ↓↓こちらの動画で英語の音節について分かりやすく説明されています

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リズム

英語のリズムと強弱が分からないと、具体的な音声変化同化、フラップ化などに付いていけません。マクロ的な視点(強弱のリズム)と後述するミクロ的な視点(連結、同化、脱落)などの両面から音声に立ち向かっていくことが必要になってきます。

 

英語のリズム

 

日本語のリズムは一般的には一定のリズムが続きます。一方で、英語には必ず強弱のリズムがあります。英語の強弱リズムのとり方は、後述する英語舌の作り方で詳しく説明していきます。

理解される外国語音声を表出

理解される外国語音声を表出

音声学習の臨界期

人間の音素識別の臨界期は、乳児に対する実験的研究により生後10ヶ月程度であると報告されていましたが、近年は母語以外の音素は成人でも訓練によって識別可能と近年は解釈されるようになっているようです。今回のブログでは成人がいかに、母国語の音素に気づき、事項で説明する母語同一処理をしないようにするかに焦点をあてています。幼児教育に関心があったり、バイリンガルの子供を育てたいという特別な目的がない限り、音声学習の臨界期は気にする必要はありません。

 

英語の臨界期

引用: CRITICAL PERIOD IN SECOND LANGUAGE ACQUISITION Critical Evidence : A Test of the Critical Period Hypothesis for Second Language Acquisition

 

但し、アメリカなどの移民を受け入れる国は年齢と英語の流暢さの関係を明らかにしようとする研究が盛んに行われています。一般的には若い時にアメリカに渡ってきた人の方が英語を流暢に話すデータが出ています。

 

母語同一音声処理

英語を聞き取る時に特定の音素を聞き分けることができなかったり、あるいは英語を発話する時に日本語訛りになってしまうことはよくあります。その原因は、外国語を母語同一音声処理してしまうからです。母語の音声体系で代用してしまうと、当然母語からの干渉や影響を受けてしまいます。日本語と英語は音素・音節・単語レベルで音声特徴が大きく異なります。

 

母音の母語同一化音声処理

  • アと/æ//ɑ//ʌ/ /ə/
  • イ・エと/I//ɪ//ɜ/
  • ウと/ʊ/, /uː/

参考:外国語音声の認知メカニズム p136

 

 子音の母語同一化音声処理

  • thとサ・タ・ザ・ダ行、fやvとの混乱
  • fとフ、vとバ行の混乱
  • lやrとら行の混乱、/w/化
  • /ʃ//ʒ//ʧ/ /ʤ/の正確な区別
  • /t/、/d/、/s/、/z/とッとズの干渉
  • 明るい/l/と暗い/l/の区別、英語らしいrの発音
  • /p/、/t/、/k/の呼気の強さ
  • /w/の母音化

参考:外国語音声の認知メカニズム p136

 

音声学習には、母語からの影響を受けない独立した外国語専用の音声処理システムを、聴覚器官、脳、調音器官に構築していくことが必要になると言われています。 相手に理解されやすい音声を出すには、母国語と区別させることが大切です。

 

理解容易性を上げる

話し手にストレスをかけることなく英語を理解してもらうために、理解容易性を上げることが必要となります。母音・子音を正しく発話できない(理解不可能な誤り)、苛立った滑稽な誤り(弱形や音声変化)、韻律(影響の小さい誤り)があると、理解容易性を下げてしまいます。私達が無自覚になってしまうのは、同じ日本人が話す英語は私達にとって理解容易性が高くなってしまっているからです。 

 

誤りの許容度と深刻度

  • 第1種 言語として認識されない理解不能な誤り:母音に関する間違い、硬音・弱子音と軟音、子音のまとまり・音節構造、意味にかかわる子音の区別、/h/の脱落、単語の強勢
  • 第2種 苛立った滑稽な誤り:/r/の発音、子音の誤り、微妙な母音の誤り、/l/の発音(明るいL、暗いL)、弱形や音声変化、不適切な間の位置
  • 第3種 影響の小さい誤り:韻律、音節主音的子音(子音+/l/)、第二強勢

引用:外国語音声の認知メカニズム p65

 

上記の表は、多国籍の話者を対象として、英語圏で実施された実証研究に基づいて作成されたものです。特に、音節を作り出す母音の間違いと単語の強勢を間違ってしまうと、相手に全く伝わらないという事態に陥ってしまうので注意が必要です。

 

モニタリング

日常生活で母国語を使用する時は、誤りなどを瞬時に修正して流暢に話すことができます。実は私達の脳の中で言語活動が絶えずモニタリングされています。日本語であればそれらは無意識に行われています。英語を含む外国語を話す時には、まずは発言内容を組み立てて、思った通りに表出できているかを、脳内にあるモニターで意識的に監視していくことが求められます。 

 

モニタリング

 

ネイティブのような単語耳作り

ネイティブのような単語耳作り

全ての音を聞き取らない

英語を聞き取る(リスニング力を高めるためには)まずは英語の子音・母音の全ての発音をマスターする必要があります。但し、「話される単語の子音、母音をすべて聞き取らなければいけない」わけではありません。実際のネイティブが話す英語の2〜3割は手を抜いて話されています。発音記号通りに発音されているケースの方が少ないの実態のようです。

 

ネイティブはアクセントのある箇所だけをしっかり発音をして、その他の音は脳で補っているのです。一方で、英語を均一にアクセンをつけて発話してしまうと、ネイティブも単語の予測ができなくなってしまいます。どこに力を入れて、他は手を抜いて良いかを体得するには、しっかりとした母音と子音の発音がしっかりできるのが大前とはなってきます。

アクセントのある音節で単語を識別する

実際に自分の脳にある単語データベースからどうやって単語を識別するかと言えば、音節によって単語を予測することができます。リーディングの際にはできませんが、リスニングでは可能です。ネイティブ・スピーカーは会話の際に英単語を引っ張りやすいように、脳に英単語を整理・格納しています。

アクセントのある音節

例えば、英語では[s]音で始まる単語が一番多く、[s]で始まる音節を含み、そこにアクセントがくる単語は1,500語ほどあります。数は多いですが、[s+子音+母音]で検索すると、10〜20に絞ることができます。ネイティブは絞り込み(先読み処理)を無意識に行って、英会話を効率よく理解しています。

  

英語耳作りの実践方法

子音・母音の発音方法を習得

例えば、[s]という発音を学ぶ際は、母国語同一音声処理して日本語のシ[ʃi/]にならないように注意することです。発音の教材などを使って[s]の音の出し方をマスターしたら、[s]が語頭にある単語を列挙しながら発音の練習を繰り返していきます。

 

[s]が語頭にある単語

  • see
  • sea
  • seem
  • city
  • sys-tem
  • sim-ply
  • sim-ple

 

レーニングを繰り返していくと、発音で単語を覚えていく感覚を得られます。インプットの際にスムーズに音声処理されるだけではなく、アウトプットの際にも土台になるので丁寧に練習を進めていきます。

音声変化のルールを学ぶ

英語には様々な音声変化があります。代表的な連結、同化、脱落の3つです。最低限この3つをマスターしていれば大丈夫です。

 

代表的な音声変化

連結:単語と単語の音がつながる現象

同化:2つの単語がくっついて音が変化する現象

脱落:文末の破裂音や子音が発音されなくなる現象

 

こちらの過去記事で詳しく説明していますので、参照してください。 

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英語舌作りのステップ

英語舌作りのステップ

内容語と機能語に強弱

英語の品詞は「内容語」と「機能語」に分かれています。内容語は文字通り文の中で大切な内容を伝える単語です

  • 内容語:名詞、動詞、形容詞、副詞、指示・所有代名詞、疑問詞、再帰代名詞
  • 機能語:人称代名詞、助動詞、前置詞、冠詞、接続詞、関係代名詞

内容語は大きく、はっきりと長く発音され、機能語は小さく、速く、短く発音される特徴があります。機能語は弱形化されやすくリエゾンや脱落の対象になります。

 

内容語と機能語

 

弱拍・強拍を作って英語の波を作る

内容語と機能語に分類ができたら、それぞれに拍を入れていきます。内容語はそのまま強くはっきりと拍を入れ、機能語には弱い拍を入れていきます。機能語は/h/音やthが脱落したりします。

 

文章に弱拍・強拍を入れる

 

ネイティブの発音を平坦なリズムに変換したものと、日本人の発音を強弱リズムに変換したものをネイティブスピーカーに聞かせた実験を行ったところ、後者の日本人発音を強弱リズムに乗せたものがより理解が高い結果となりました。多少発音が間違っていても、強弱リズムに乗せることで伝わる英語となります。

イントネーション

最後は英語の音程(ピッチ)をマスターして、正しいイントネーションで英語を発話する ステップです。英語には大きく分けて4つのピッチがあります。発音を始める高さは2のノーマルからですが、文の形態などによってピッチが上下していきます。

 

イントネーション 

ネイティブスピーカーはこの4つのピッチをフル活用しています。大切なのはパターンに従って多少大げさになってもいいから真似ることです。パターンを無視して日本語を話すようなイントネーションで話してしまうと、全く相手に伝わらない英語をは話すことになってしまいます。

 

英語舌の作り方

 

リスニング教材などに上記の3ステップで音声を自分で整理すると自然と英語舌が定着していきます。

 

発音の学び方(実践編)

発音の学び方

英語の発音が正しくなる本

まずは、ボトムアップ的に英語の発音を正しく身につけるためにおすすなのが、「DVD&CDでマスター 英語の発音が正しくなる本」です。基礎的な母音と子音の発話方法をDVD、CD、テキストを使って始めから丁寧に学習することができます。Youtubeなどで発話方法を練習するのも良いですが、本書は一般的な英語の発音が録音されているので、安心して学習をすすめることができます。

 

英語の発音が正しくなる本

 

基礎編の主要母音と子音をマスターするだけで、英語の聞こえ方が変わってくるのが実感できます。使用される単語も中学で既得したものばかりで、負荷なく発音の練習をすすることができます。

 

英語の発音が正しくなる本

 

 

 

英語の発音ジム

「通じる発音」と「聞き取れる発音」をマスターすることをコンセプトに日本人が間違いやすいポイントを矯正するために11のミッションのクリアを目指していきます。対話方式になっているため、理論を理解しながら着実にトレーニングを進めることができます。著者の高山氏は発音指導のスペシャリストでNHKラジオの「エンジョイ・シンプル・イングリッシュ」の監修も務めています。

 

英語の発音ジム

 

11のミッション

  1. 余分な「あいうえお」を切り離せ!
  2. 音のかたまりを教えよ!
  3. 「強く・高く・長く・はっきりと」発音せよ!
  4. 子音のかたまりは一気に発音せよ!
  5. こどもとお母さんをくっつけよ!
  6. 音変化に挑戦せよ!
  7. 音を落とせ!
  8. 文をリズミカルに発音せよ!
  9. 音程をコントロールせよ!
  10. 音と文字を一致させよ!
  11. 母音読みにのルールを身につけよ!

 

各ミッションは問題点→解決策→トレーニングという構成になっているので、一つ一つのミッションを達成することでリスニング力を高めることができます。

 

大学受験 リスニングマスター

本書は大学受験向けのリスニング教材ですが、一般の英語学習者におすすめの教材です。音声の話されるスピードも速く、上記の2つの教材を終えた総仕上げに最適です。演習問題を解きながら、音声変化のポイントも復習できるのでおすすめの一冊です。

 

リスニングマスター

 

  • Unit1 単語内の音を聞き取ろう
  • Unit2 単語間の音を聞き取ろう(1)
  • Unit3 単語間の音を聞き取ろう(2)
  • Unit4 弱い・速い音を聞き取ろう
  • Unit5 強い音を聞き取ろう

 

スクリプトが別冊になっているので復習がしやすく なっています。聞き取れなかった音声変化に印をつけたり、強弱やイントネーションを考えたりすればより学習の効果が上がります。

 

リスニングマスター スクリプト

 

 

 

参考

立命館大学研究活動報|なぜ日本語母語話者は英語の音を聞き誤るのか?

Medium | Sound Frequencies of Language

Talk-first | The Tomatis Method®

Institute for Learning & Brain SciencesCross-language analysis of phonetic units in language addressed to infants. 

TEDThe linguistic genius of babies

Semantic ScholarCRITICAL PERIOD IN SECOND LANGUAGE ACQUISITION Critical Evidence : A Test of the Critical Period Hypothesis for Second Language Acquisition

 

英語リーディング力の正しい伸ばし方 第二言語習得研究に基づく効果的なチャンクリーディングとは?

はじめに

英語リーディング力の正しい伸ばし方

今回は第二言語習得研究に基づく英語リーディング力の科学的に正しい伸ばし方を考えていきます。英語リーディングの力を伸ばすには文法や語彙の知識だけで良いのでしょうか?まずは第二言語習得研究に基づく英語リーディングの役割を解説しながら、英語リーディングの認知プロセスを説明していきます。英語をトップダウン処理で理解する方法や、テキストを使った具体的なトレーニング方法も丁寧に解説していきます。

 

 

主な参考文献

 

「英語リーディングの科学 読めたつもりの謎を解く」

 

「入門期からの英語文型指導」

 

「英語の学び方入門」

 

「科学的トレーニングで英語力は伸ばせる!」

 

第二言語習得研究に基づく英語リーディングの役割

英語リーディングの役割

インプット・アウトプットを繋ぐ

英語リーデイィングの正しい伸ばし方を考える前に、まずは第二言語習得研究の認知プロセスを見ていきます。代表的な理論がGass氏の4つのステップ(気づき、理解、内在化、統合)から形成される認知プロセス理論です。

第二言語習得の認知プロセス

 引用:英語学習のメカニズム p24 図2-4

 

私達は膨大な情報(単語、文法など)をインプットしますが、注意を向けられることによって気づきが生まれ、それらが短期記憶に保持されます。「この表現ってこんな意味かな?」と仮説を形成したり検証する(統合)ことで最終的には長期記憶に保持されます。

 

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第二言語習得研究の全体像については上記のブログで丁寧に解説しています。特に英語学習においては最適なインプット・アウトプットが重要となります。

自動化された顕在知識

なんとなく英文を読んだり、リスニングをし続けると日本語に変換して英語を理解することになってしまいます。実は、インプットした情報を4つのプロセスを通じて統合すると自動化された顕在知識を刺激すると言われています。

 

自動化された顕在知識

引用:英語学習のメカニズム p24 図2-4を参考に筆者が作成

 

詳しくは以前の記事を参考にしてほしいのですが、自動化された顕在知識そのものは意味記憶と潜在記憶を往復することで少しずつ形成されてきます。この自動化された顕在知識は英語を英語のまま理解することを可能にしてくれます。

 

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理解可能なリーディング

クラッシェンにより提案されたインプット仮説では、理解可能なインプットを取り込むことが推奨されています。この理解可能とは現在の能力よりも少しだけ難しめ(i+1)のインプットを指します。インプットが難しすぎたり、簡単すぎると気づきが生まれないと指摘しています。

 

初学者であれば現在の能力と同じぐらい、少し易しめ(i、i−1)のインプットも効果的だとも言われています。易しめのインプットであれば余裕をもって処理でき、情報の意味だけではなく形式や機能にも目を向けることができます。

 

多読学習はこちらをどうぞ↓↓

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リーディングとリスニングの共通点(ワーキングメモリ理論)

ワーキングメモリとはBaddeley&Hitch(1974)が考えたモデルで、記憶や情報の処理の仕組みを明らかにしようとしています。例えば、私達は文章を読む際に前文の内容を保持しながら、次の文を読むという並列処理もワーキングメモリで説明されています。Baddeleyの近年の研究では中央実行系(central executive)、音韻ループ(phnological loop)、視覚・空間スケッチパッド(visuo-spatial sketch pad)、エピソードバッハァー(episodic buffer)の3つから構成されていると考えられています。

 

ワーキングメモリー

引用:Simplypsychology Working Memory Model

 

特に、音韻ループは音韻ストア(phonological store)と構音リハーサル(articulatory rehearsal process)の2つの過程の分けられています。リスニングなどは直接音韻ストアに入りますが、リーディングは一度構音リハーサルに入ってから、音韻ストアに入ります。実はリーディングとリスニングから入る情報はいずれも同じ音韻ストアに入ることとなります。

 

音韻ループ

引用:英語のリーディングの科学 音韻ループの2つの過程 p73

 

これはどういうことかと言うと、耳から聞いて意味を理解する「聴解処理」と文を読んで理解する「読解処理」は入力のされ方が異なるだけで、脳内では基本的に同じ回路を辿っているとうことです。読解の場合は視覚で捉えた文字情報をインターナルボイスとして脳内で音声化しています。

 

 ↓↓リスニングとリーディングをつなげるにはシャドーイングも有効です

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英語リーディングの認知プロセス

英語リーディングの認知プロセス

リーディングのプロセス

リーディングの処理プロセスは上位レベルと下位レベルに分けられます。下位レベルでは、1つひとつの文が、単語や文法の側面から処理されます。文単位で語彙やフレーズ、語と語の関係性などが意味ある形として処理されます。上位レベルでは、下位レベルで処理された文単位の情報が積み重なって、テキスト全体の意味が構築され、テキストモデルが形成されます。

 

リーディングのプロセス

引用:英語の学び方入門 図7.1 リーディングプロセス 

 

実は、私達は文章全体を読んだ内容だけで理解しているのではなく、スキーマ(内容やジャンルに関する背景知識)と組み合わせて最終的な理解にたどり着いています。すでに持っているスキーマを使って文章を理解しようとするトップダウン処理と、下位レベルからテキストモデルを形成するボトムアップ処理に分けられます。

テキスト全体を読むとは?

仮に英語で書かれた文章の単語を全て理解し、フレーズや構文も完璧に処理することができればボトムアップ処理だけでテキスト全体を理解することができるかもしれません。但し、現実は完全なテキストモデルを形成することはできず、自分がすでにもっているスキーマを使ってテキスト全体を読むことになります。

 

完全なテキストモデル(単語や語彙だけを駆使して英文全体を理解するモデル)を形成できないことに悲観するべきではなく、リーディングのプロセスを知ることで自分の弱点を知ったり、スキーマを活用することで的確かつ早く理解することができます。

 

スキーマ(すでに持っている知識)の種類

  • 「コンテント・スキーマ」(内容に関する知識)
  • 「フォーマル・スキーマ」(タイプやジャンルに関する知識)

 

英語リーディングに必要な語彙や文法

英語リーディングに必要な単語

単語数と英文カバー率 

語彙知識と英文読解には相関関係があります。Qian(2002)の研究では、語彙知識から読解力を説明できる割合は67%だと言われています。以前のブログでも紹介しましたが、2000前後の単語を覚えていれば、80%前後の英文カバー率を確保できます。

 

頻度レベルごとの語彙

Word family list LOB FLOB Brown Frown Kolaphur
2,000 84.33% 83.07% 81.54% 81.79% 84.15%
4,000+固有名詞 95.39% 95.1% 94.14% 93.93% 94.64%
8,000+固有名詞 98.31% 98.03% 97.6% 97.28% 98.05%
固有名詞 5.29% 5.66% 6.12% 5.43% 4.55%

引用:How Large a Vocabulary Is Needed for Reading 

 

単語の数え方のルール

  • 延べ語数(token):全ての単語を1つずつカウント
  • 見出し語(lemma):辞書の見出し語のように活用形をまとめてカウント
  • ワード・ファミリー(word family):見出し語と派生語を合わせてカウント

 

 ↓↓英単語の覚え方に特化した記事も参考に

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チャンク・センスグループを作れる文型・語彙知識

前章では、リスニングの場合には最初に音を聞きますが、読解の場合は視覚で捉えた文字情報を脳内で音声化することを確認しました。しかし、文章を読んで脳内で音声化しても、それを意味のある形で処理できるかは別問題です。ネイティブが話してくれる音声を聞く場合には、意味の固まりごとに自然と息継ぎをするので、その固まりを追って行けば意味を理解することはできます。

 

チャンクリーディング

 

さきほどの意味の固まりはセンスグループ(チャンク)などと呼ばれています。読みながらチャンクに区切ることで、同時に意味のまとまりをとらえることができます。

 

チャンクとは数個の英単語からなる意味の固まりのことで、英文を頭から読みながら意味の切れ目を自分で判断できるようになれば、英文をより速く正確に読めるようになります。チャンク読みができるようになるということは、英文を「単語単位」で処理するのではなく「チャンク単位」で処理していくということです。つまり4語とか5語ずつ処理していくことですね。そうなると当然、読むスピードが上がっていきます。

引用:科学的トレーニングで英語力は伸ばせる! チャンクリーディングの解説p154

 

 

チャンクリーディングの効果

引用:入門期からの英語文型指導 p84〜86の内容を元に筆者が作成

 

人間の記憶や認知の観点からも区切りを入れることでモノの数をすぐに理解できる研究成果もあります。特に、文型という区切りを入れることで単語の数が増えても認知の負担が変わらいというメリットがあります。

 

 ↓↓パターンプラクティスも読解力の向上につながります

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英文テキスト全体をトップダウンで理解するために

テキスト全体を理解

英語の構造とまとめ方

英文テキストをトップダウンで理解するためには、まずは英文の構造そのものの正体を明らかにする必要があります。ここでは2文以上の文と文との関係性やバラグラフについて考えていきます。英語の段落構成は3つに分類されています。主題分(トピックセンテンス)は文頭か最後にやってきます。

英語の段落構成

引用:英語リーディングの科学 英語の段落構造の例 図2.1. p34 

 

さらに説明文に特化すれば、4つの修辞パターンに分類することができます。記述の集合、因果関係、問題/解決、対比に分類されます。学習者がテキストの構造に気づくことが大切で、日頃からシグナル(テキストマーカー)に意識的に着目しながら4つの修辞パターンを追いかける必要があります。

 

4つの修辞パターン

  • 記述の集合:上位トピックの内容を主に時系列で説明(歴史書など)
  • 因果関係:原因と結果を分析
  • 問題/解決:特定のトピックに対する問題と解決策を提示
  • 対比:あるトピックに対する異なる立場の議論(政治的評論など)

 

第二外国語のリーディングの際に、あらかじめ修辞構造を示すことで学習者の本文理解が高まることはこれまでの研究で示されています。自ら意識的に各段落の役割を考えたり次の情報を予測しながら読むことで、テキスト構造を利用しながら読めるようになるとも指摘されています。

 

テキストの気づきを高める活動

  • テキストの各段落の役割を考える
  • テキストの次の情報を予測する
  • セマンティックマッピングを使用する
  • 要約を書く
  • テキストのメインアイデアを述べている

シグナル(テキストマーカー)に意識的に着目するトレーニングについては、事項でおすすめの教材と合わせて丁寧に解説していきます。

背景知識を効果的に活用

自分の身近ではない話をされると、母国語でも理解が難しいことがあります。一方で、外国語であっても自分の興味のある分野のトピックであれば容易に理解できることがあります。英文で読んでいても「あ、これはどこかで聞いたことがある!」、「次の展開はきっとこうだ!」と思った経験がきっとあるはずです。

 

背景知識

参考:英語リーディングの科学 背景知識と理解の章を参考に筆者が作成

 

背景知識はマクロ的に既有知識を活用してトップダウン処理を促したり、読解の際の負担を軽減させる効果もあります。背景知識を活用するためには、十分なボトムアップ(単語の理解、文理解)が不可欠で、安易な既有知識の活用はミスリーディングにもつながります。トップダウン処理の理解を、ボトムアップ理解で検証するような読解が求められます。

 

↓↓認知言語学スキーマについて解説しています

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英語リーディング力を伸ばす正しいトレーニン

英語リーディング力をつけるトレーニング

ボトムアップ✗チャンクリーディング

ここではテキストモデルを形成するボトムアップが処理できる力を伸ばすために、チャンクリーディングを有効活用した学習方法を紹介していきます。使える・理解できる語句を身に着けながら、英文をまとまったかたまりごと(チャンク)に読解できる力を付けていきます。今井氏が執筆した「英語を自動化するトレーニング」を使って丁寧に解説していきます。

 

 

各ユニットの構成

  • Round1:重要語句・表現をチェック
  • Round2:英文を黙読する
  • Round3:音読で英文を頭に取り込む(チャンクリーディング)
  • Round4:英文の理解度・定着度を確認
  • Round5:英語の発信力を鍛える

  

「英語を自動化するトレーニング」のコンセプトは、1つの英文を音読を中心としたさまざまなタスクを通じて、その英文が読めるだけではなく、学習した語彙や表現を使って発信できるレベルを目指すことです。特に「基礎編」では難解な構文や語彙は出てこないので、無理なく学習をすすめることができます。

 

英語自動化

 

まずは本文に出てくる重要語句と表現をチェックします。チャンクリーディングの際に単語の意味が即座にイメージできるように準備します。空欄補充の問題では語句の使われ方は頭に入れていきます。重要語句・表現を覚えたら黙読のステップに入ります。急がずにじっくり内容を理解できるように読み進めます。もし不安であれば、語句をもう一度確認してもかまいません。

 

オーラルリーディング

 

本文の内容を把握したら音読で英文を頭に取り込む(チャンクリーディング)ステップに入ります。まずはフレーズにごとに区切られた英語を聞き、対応する日本語を確認したり、英語をリピートするトレーニングを繰り返します。最終的にCDで日本語を聞いて英語が出てくるのが理想です。たくさんのユニットをこなすことで意味の固まりを頭の中でイメージできるようになり、日本語を介さずに情景や内容を思い浮かべることができるようになります。

トップダウン✗速読

次は英文テキスト全体理解するためのトップダウン処理ができる力を伸ばすための、速読を有効活用した学習方法を紹介してきます。英文テキスト全体を把握しながら、スピード感をもって英文を読める力を付けていきます。ここでのポイントは、ワーキングメモリモデルでも紹介しましたが、すでに読んだ内容を保持しながら処理できる内容を読むのが前提になります。おすすめは言語学者のポール・ネーションが執筆した「Reading for Speed and Fluency」です。

 

 

「Reading for Speed and Fluency」は速読力を伸ばす教材で、パッセージの語彙と文法レベルが統一されているため、トレーニングの成果を客観的に見ることができます。巻末のスピードチャートでは読む速さと理解度テストのスコア毎回記録することで、自分の読む速さと理解度を数値化して分析することができます。

 

本書の使い方

  1. できるだけ速く文章を理解しながら読む
  2. 本文を最後まで読み終えたら、すぐに経過した時間を記入します
  3. 次のページをめくって、質問の答えを選ぶ(この時本文を見てはだめ)
  4. 質問の答え合わせをします
  5. 読解の速さと答えのスコアを巻末のグラフに記入(250w/mを目指す)

参考:Reading for Speed and Fluency テキストの使い方より抜粋

 

Reading for fluency

引用:Compass Publishing Reading for Speed and Fluency 1 Student Book sample

  

パラグラフリーディング

パラグラフリーディングを解説した教材は数多くありますが、シグナル(テキストマーカー)に意識的に着目するトレーニングとしては「パラグラフリーディングのストラテジー読み方・解き方編」がおすすめです。パラグラフリーディングを活かした、英文の読み方を丁寧に解説しているだけではなく、徹底的にテキストマーカーを意識させる内容となっています。

 

パラグラフリーディングのストラテジー

 

 本書を手に取ったら、論理展開パターンを自分のスキーマとして頭にたたき込み、論理マーカーに着目して筆者のイイタイコトをひたすら追いかけます。パラグラフの冒頭や結論を重視しながら、メリハリをもって読解する習慣が身につきます。なんとなく漠然と英文を読むということがなくなっていきます。

 

 

パラグラフリーディングの基本ストラテジー

  1. 評論文頻出の論理展開パターンを理解
  2. 論理マーカーに注目
  3. 筆者のイイタイコトの出現パターンを知る
  4. 反復回避の3パターンを意識して英文を読む
  5. 未知語の正しい類推方法を知る

引用:パラグラフリーディングのストラテジー読み方・解き方編

 

パラグラフリーディング

 

解説では実際のパラグラフ単位で読解のイメージを論理マーカーに着目して振り返ってくれるので、自分の読みを検証することができます。

 

参考

Simplypsychology :Working Memory Model

Lextutor | How Large a Vocabulary Is Needed for Reading

Compass Publishing

gocognitivealan baddeley: the origins of the central executive

 

認知言語学とは? スキーマを活かした効果的な英語学習方法を丁寧に解説

はじめに

スキーマ 英語学習

今回は認知言語学スキーマを活かした効果的な英語学習方法を丁寧に解説していきます。まずは、認知言語学とはどのような学問なのか考え、生成文法との違いや、誕生の背景もさかのぼります。認知言語学と英語学習は相性が良いと言われていますが、実際はどうやって認知言語学の知識を活かして英語学習をすれば良いのでしょうか。その鍵となるのがスキーマです。スキーマを使った効果的な英語学習方法をはじめから丁寧に解説していきます。

 

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主な参考文献

「はじめての認知言語学

 

「学びのエクササイズ 認知言語学

 

「イメージで捉える感覚英文法」 

 

 

認知言語学とは

認知言語学

文法とは?

文法の歴史は古代ギリシアまで遡ることができますが、言語学者ソシュールによってその基礎が築かれました。意味を対象とする分野は「意味論」、単語の形を取り扱うのは「形態論」など独立した分野も誕生しました。現代言語学においては、一般的には文法とは文中の「言葉の並び方」、あるいは「文の構造」を研究する分野と認識されているようです。

 

世界の言語を「言葉の並び方」(語順)で分類する研究も盛んに行われています。言語学者のdryer氏は2013年に世界の1,337の言語を分類しました。結果は、「SOV」と「SVO」の語順が全体の7割以上を占める結果となりました。比率が多い文型から並べてみると、主語→動詞→目的語の順番に優先度が高くなっています。

 

言語の語順

引用:dryer氏(2013)のレポートを参考に筆者が作成

 

 世界の語順

引用:University at BuffaloMatthew S. Dryer

 

語順一つとっても多様性がある中で、文法という物差しがないと私達は言語を観察することや分析をすることができません。

生成文法の発展 

ソシュールによって基礎が築かれた文法ですが、言語学者は個別かつ例外だらけの言語をどうにか帰納的に説明しようと四苦八苦していました。その流れを断ち切ったのが、チョムスキーの「私達の言語機能は普遍文法(=言語の共通ルール)によって説明できる」という主張です。彼は文法的現象を演繹的に記述し、私達の言語を説明しようとしました。そこで誕生したのが生成文法という理論です。

生成文法

生成文法とは、様々な仮説群とレキシコン(辞書)を演算して生成された文全体と、言語における文法全体が完全に一致するという理論です。生成文法は主観が入らずに誰がやっても同じ理論・結論になります。私達が使用している個別かつ例外だらけの言語それぞれが、一つのきちんと生成できるルールに基づいていると主張しました。

生成文法の特徴

しかし、生成文法は言語活動と認知が独立しているため、私達の個別の経験や体験を言語表現に反映できないという欠点があります。言語活動を知覚と分けたことで言葉を整理した一方で、私達一人ひとりの世界の捉え方が置き去りにされてしまいました。

認知言語学の登場

生成文法は経験主義者の人たちから批判をされてしまいます。経験主義者は、人間は白紙状態で生まれると主張します。人間に生まれつき豊かな言語能力が備わっていると考える立場をとるチョムスキーらとは対立しています。特に、生成文法は言葉の意味を軽視していると批判を受けます。

認知言語学

引用:構文ネットワークと文法 第2章 認知言語学と構文文法 p37(図2.4)

 

認知言語学では、意味と形式が大前提としてつながっていいます。一人一人の外部世界の捉え方が個別の言語表現に影響を与えます。つまり、捉え方の数だけ言語表現が生まれてきます。白紙状態で生まれた人間は、外部世界を無限に色付けすることができると考えます。

 

認知言語学における認知過程

認知過程

概念操作

認知言語学では、その名の通り認知(ものを見たり聞いたり感じたりする感覚の働きと、それをもとにして記憶・学習・判断する精神の働き)のはたらきと言語が密接に関係しています。五感は対象のかたちをとらえ、音を聞いたり、匂いや味を感じる大切な能力で、それらの刺激を通して私達は精神活動(学習・記憶・推論・判断)を営みます。

 

五感のはたらきが対象を認知するための基盤にあるという考え方は、経験基盤主義に基づいています。言い換えれば、対象があっても人間がいなければ経験は生じません。経験とは人間と対象が合作する精神活動の産物で(相互作用)、私達が事物を認知をし、経験ををすることによってのみ、外の世界が広がっていくと考えます。認知言語学における外の世界が広がるとは、概念操作によって内面世界と外界世界の環境を理解する行為そのものです。

 

泳ぐの概念操作

  1. 水の性質(浮力・抵抗力など)と身体機能(手足の動き・呼吸など)の相互作用
  2. 人間と対象が合作して概念化(水に浮かんだ状態で身体を使って前に進む)
  3. 「泳ぐ」(swim)という記号化
  4. 所与の環境を意味づけ(sense-making)

 

例えば、「泳ぐ」という概念操作はどうでしょうか。まず実際に水の中で泳ぐという経験(水の性質に対して身体機能が働く)を通して、泳ぐという行為は「水に浮かんだ状態で身体を使って前に進む」という概念化をします。「泳ぐ」という記号化を通して、「子供が泳いでいる」という外部環境を理解することができるようになります。 

概念操作

引用:はじめての認知言語学 第1章認知 p15(図1) を参考に作成

 

毎日無意識に食べている「リンゴ」でさへも、初めて食べた時には五感を総動員して、丸くて赤い物体を必死に概念化したはずです。「リンゴ」という記号を獲得すれば、自由にリンゴを意味づけすることができるようになります。このように、認知言語学では一つ一つの単語の獲得に五感を関連付ける醍醐味があります。

 

カテゴリー化

認知言語学においてもう一つ重要な概念がカテゴリー化です。認知言語学におけるカテゴリー化は様々な概念をグループにまとめる心的過程(mental process)を指します。心的過程とは心の中で起こっているプロセスで、まとめられるものは外の世界でも近くにあったり(隣接性)、続いて起こったりする(連続性)性質があります。

 

隣接性とは、例えば家の中に椅子、机、タンスなど近くに置いてあるものは家具によってまとめられます。連続性においては、感情や出来事の推移が一つの言葉でまとめられる現象があります。「怒り」は立腹→憤激のように時間の推移が関わっています。

カテゴリー

一般的には、私達はまず「椅子」や「机」などの基本レベルの単語を覚えていきます。その後で、下位レベルの単語や上位レベルの単語を整理していきます。

 

プロトタイプ

プロトタイプ(prototype)とはカテゴリーの中の代表的な事例を表します。プロトタイプを思い浮かべることは重要な認知過程の一つです。一般的には、あるカテゴリーの中の代表例をプロトタイプと呼び、それ以外の事例と区別します。プロトタイプは一つだけではなく、複数存在します。年代や地域によってもプロトタイプは異なるようです。日本では鳥のプロトタイプはスズメやハトかもしれませんが、アメリカではRobin(コマドリ)がプロトタイプとして認識されています。

 

プロトタイプ

引用:ResearchgateWords In The Mind(Birdiness rankings,Aitchison 2004,54)

 

プロトタイプは被験者に「鳥の代表例は?」等と質問をして、即座に想起される事例や順番をもとに算出されます。帰属度(くちばし、産卵の有無、飛行能力などの属性)が高い事例は中心に配置され、プロトタイプ以外は周辺事例(peripheral example)となります。 

スキーマ

スキーマとはカテゴリーの全成員に共通して想定される抽象的な理想像のことです。スキーマはカテゴリーの全成員に対応できるような抽象的な型とも言えます。前述したプロトタイプは、スキーマをもっともよく事例化した好例でもあります。

 

私達は日常の心的経験を繰り返し、スキーマを作り上げていきます。例えば、ものを数える「本」のスキーマ・モデルを考えてみましょう。まずは「一本の鉛筆が欲しいな」や「3本のろうそくを立てる」などの表現を何度も繰り返します。様々な場面で使用されることで脱文脈化が進み、「本」が抽象世界に入り込んでいきます。最終的に「本」は「細くて長いもの」に使うという帰納的知識が身に付いてきます。

スキーマ

ここからは、日常の主体的な心的経験の繰り返しであるスキーマ・モデルをどう英語学習に活かすのか考えていきます。安易に認知英文法を表面的に学習することや、感覚で英語と向き合うのはおすすめできません。

 

スキーマを活かした英語学習

スキーマ英語学習

英語の新しい意味づけ

実際に英語スキーマをどうやって作るのか考えていきます。これから説明する理論は認知言語学者のラネカー(langacker)が提唱した用法基盤モデル(Usage-Based Model)が基本にあります。文法というのは、私達一人一人の言語生活で聞いたり、読んだりした言語表現の集大成であり、具体的な言語表現から抽出されたスキーマボトムアップ的に立ち上がってくるという立場をとります。

英語スキーマ

そのために、まずは英単語をボトムアップ的に新しく積み上げる必要があります。これまでの言語生活で積み上げてきた「リンゴ」と「Apple」が概念的に違いがあれば、修正する必要があります。「リンゴ」と「Apple」に大差はないかも知れませんが、「登る」と「climb」はどうでしょうか。

 

「climb」を使えない例

  • I took a lift and climbed the mountain.(リフトで山を登った)
  • I climbed the mountain by cable car.(ケーブルカーで山を登った)

 

実は「climb」は自力で登らない場合は使えません。自力で登らない場合は「go up」などを使うようです。(参考:教育心理学研究, 2014,62,1-12英語語彙の意味範囲に関する不十分な理解とその修正)このようにある英単語を使用して言語表現をする場合には、しっかりと意味範囲を確認して、新しい意味付けをすることが大切です。

 

英語スキーマを作る

例えば、「run」という単語を勉強するとしましょう。日本語でもランニングという単語を使うと思うので、「走る」という意味を想像できるでしょう。では、実際に「run」という単語を調べてみます。

 

 

「run」のその他の意味

  • ~を経営する, 運営する, 管理する:She ran her own restaurant for five years.
  • (車などが)走行する, 運行する:The buses only run until 11 p.m.
  • (液体が)流れる:Tears ran down her face.
  • (機械などが)動く, 作動する:The engine is running more smoothly now.

 

次は自分の感情や経験が入る場面を想像して、「run」を使って英作文をしていきます。英作文ではなくても英会話でも大丈夫です。ポイントは、例文の構文を参考にして易しい英文を作ることです。自分の身の回りの出来事や体験を絡めて、単語との心理的な距離を縮めていきます。

 

自分の身近な事柄や体験を使った「run」の英作文

  • 姉は中華店を経営していたな。。:My sister runs her own Chinese restaurant.
  • 毎日乗っているの山手線かな。。:Yamanote line runs until around midnight.

 

いくつか例文を見たり、使ったりしている間に「run」の共通するイメージ(スキーマ)をボトムアップ的に作り上げられてきます。「run」のスキーマは、「何かがある方向に休みなく働く、機能する」という知識を得ることができます。

 

 こちらでもスキーマを使った学習方法について考えています↓↓

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英語スキーマから意味を拡張

英語スキーマ

単語を例文を参考に使用してスキーマを作り上げたら、次は多義性やメタファーを観察するステップにいきます。単語には「スキーマ」という抽象的な理想像はありますが、一つの意味しかもっていないわけではありません。例えば、英語の「get」や「make」には20以上の意味があります。人間の言語の特徴として、できるだけ少ない語彙で効率よく伝えようするメカニズムもあるようで、日常的に使う頻度が高い単語には多義的な意味があるようです。

 

多義性はでたらめに広がっているのではなく、プロトタイプ的意味から拡張するという原則があり、そこには後述する心的走査(mental scanning)やメタファー(metaphor)が関わっています。意味拡張には必ず動機が存在しています。私達の「関連付け」という似通ったところを探す心理が横たわっています。意味拡張は自分で言葉を増やすためだけにあるのではなく、分かりやすく伝えるために有効なテクニックにもなります。

  

心的走査(mental scanning)

心的走査とは、対象を心の中で辿る操作のことです。視線が動く経路をとらえる操作とも言えます。下記の文は図のような丘を描写している文章ですが、一つは丘を「上がっている」(rise)と表現していますが、もう一つは「下がっている」(fall)と表現しています。この違いはどこからくるでしょうか。

 

心的走査

引用:学びのエクササイズ 認知言語学 p14,図3を参考に作成

 

心的走査の例

  • The hill rises gently from the bank of the river.
  • The hill falls gently to the bank of the river.

引用:Langacker,1987

 

実は、これが心的走査で私達が丘の形状を心の中で辿る動きが「rise」や「fall」に現れているのです。表現者が課した心的走査によって、静態的な状況があたかも動きのある場面であるかのように描写されています。

メタファー(metaphor)

メタファーとは、ある事柄を、それとよく似た別の事柄を用いて表現することです。前述した、カテゴリー化は概念動詞の境界線を作って、それぞれのふさわしい位置づけを与えることでしたが、メタファーはカテゴリー動詞を比較して、一方をよりよく理解しようする心の働きです。

 

メタファーでは「XはY」と言った時に、Xにあたる概念を目標領域(target domain)と呼び、Yにあたる領域を(source domain)と呼びます。例えば、「人生は芝居」というメタファーでは、人生と言うつかみどころのない概念(目標領域)を、身近で理解しやすい芝居という概念(起点領域)でたとえることによって理解しやすくなっています。

 

メタファーの種類

  • 構造のメタファー:人生が芝居(主役、脇役)によって構造化
  • 存在のメタファー:目標領域をもの化する、「脳が故障」など
  • 方向付けのメタファー:「上下」が気分を表現(feeling up/down)

 

メタファーを使うことによって、外界の世界にある目標領域をわかりやすく理解することができます。また、メタファーを駆使することによって捉えどころのない概念などを相手にわかりやすく説明することができます。特に、方向付けのメタファーは英語でも大いに活用でき、簡単かつ効果的に気分を表現できるテクニックです。

 

イメージ・スキーマによる文法学習

イメージ・スキーマ

最後はイメージ・スキーマを使った文法学習を紹介していきます。イメージ・スキーマとは、身近な身体経験(自分自身を中心とした空間的位置の経験や、モノをつかんで位置を移動させるなどの身を持って経験できること)の中で、一定のパターンを認識し、心の中に貯えたものです。

 

代表的なイメージ・スキーマ

  • SourceからPathを通ってGoalに向かう
  • AとBがlinkしている
  • あるモノがContainerの中に入っている

 

イメージスキーマ

参考:Image Schemas: The Physics of Cultural Knowledge?

 

イメージ・スキーマは国籍や文化によって使用される頻度は異なりますが、言語を跨いだ共通の概念となっています。例えば「in」というイメージ・スキーマは、多くの人がボックスの中に何かがあるという図をイメージすることができます。私達は身近な身体経験を通して、対象となるモノの性質やサイズを乗り越えて、それらに共通する位置関係を概略のみを抽出しています。

イメージ・スキーマ

「in」のイメージ・スキーマ、特に容器のイメージ・スキーマと呼ばれ、汎用性が高いスキーマとなっています。イメージ・スキーマの最大のメリットは、自分でスキーマボトムアップ的に作り上げる必要がなく、すでに頭の中にあるイメージを活かせるということです。スキーマを時間や空間に拡張することで、難しい文法や時制をすんなりと理解することができます。

イメージ・スキーマ in

時間の用法を表す「in」をイメージ・スキーマを使う例を考えて見ましょう。「the hottest in five years.」の5年間という容器の中に、「一番暑い日」があるという空間的イメージと捉えることができます。「In watching the TV, I received a phone call from John.」では、テレビを見ている時間という容器の中に、「電話に出る」という空間があると理解することができます。

 

時間の用法を表す「in」

  • the hottest day in five years.(5年間で一番暑い日)
  • In watching the TV, I received a phone call from John.(テレビを見ていた時に、ジョンから電話があった)

引用:学びのエクササイズ 認知言語学 p47

 

Image Schema-Based Instruction(イメージ・スキーマ指導法)はJALT2015の研究によれば、400人以上の日本学生を対象に実践されたうち67%の学生にポジティブな結果があったと報告されています。その他海外の研究でもESLの学生に対して、Image Schema-Based Instructionは有効な英語学習方法だと報告されています。

 

参考

University at BuffaloMatthew S. Dryer

ResearchgateWords In The Mind

UKessays:PROTOTYPE THEORY and DEFINITIONS:

THE ROLE OF BASIC FACTORS, LEARNT KNOWLEDGE and CULTURE

教育心理学研究:英語語彙の意味範囲に関する不十分な理解とその修正

JALT2015 • FOCUS ON THE LEARNERImage Schema-Based Instruction in English Grammar

CulturecogImage Schemas: The Physics of Cultural Knowledge?

ArbitrerThe Effect of Data-driven Learning & Image-schema-based Polysemy Networks Instruction on Learning Spatial Prepositions of Verticality: The Case of Moroccan EFL Learners

wikiwandImage schema 

トリリンガルとは? 脳内の仕組み・英語の次に選ぶおすすめ言語・芸能人も紹介!

はじめに

今回はトリリンガルとは?というテーマでブログを書いていきます。トリリンガルの言葉の定義や脳内の仕組みを紹介していきます。英語の次に学ぶおすすめの言語や芸能人もご紹介していきます。トリリンガルになるに母国語が大切で、認知・学習言語能力を鍛えないとセミリンガルになる恐れもあります。多言語に興味がる方は、ぜひ読んでみてください。

 

 ポリグロットの勉強法も参考にどうぞ↓↓

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 多言語話者について考えてみました↓↓

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マルチリンガルの勉強法や仕事について↓↓ 

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参考文献

 

「ことばの習得」

 

 

「外国語学習に潜む 意識と無意識」

 

「第2言語ユーザのことばと心」

 

トリリンガルとは?

トリリンガルとは

トリリンガルの定義

トリリンガル(trilingual)とは、三言語話者の人を指す言葉です。バイリンガルは二言語話者を指し、その次は3ヶ国語を話す人でトリリンガルとなります。言語の数が増えると、バイ(2)トリ(3)クワド(4)と変化します。リンガルはlingua(言葉)と、-al(性質)という言葉が一緒になった言葉です。数字の1、2、3であればonetwothreeとなりそうですが、バイ(bi)、トリ(tri)、クワド(quadr)はそれぞれラテン語の数字に由来しています。

 

1 uni unique(ただ一つの)
2 bi bicycle(自転車)
3 tri triangle(三角形)
4 quadr quarter(1/4)
5 quinqu quintet(五重奏)
複数 multi multicultural(多言語)

 

トリリンガルの脳内・脳の仕組みとは?

トリリンガルの脳内はどうなっているのでしょうか。一昔前の理解では、頭の中に別々に働く複数の言語脳を持っていると考えられていましたが、現在は一つの「2ヶ国語脳」、「3ヶ国語脳」、「4ヶ国語」をもっていると考えられています。

 

二言語共有説

引用:Teaching for Cross-Language Transfer in Dual Language Education: Possibilities and Pitfalls Jim Cummins,2005

 

上記のモデルは、カミンズ氏が主張した「二言語共有説」です。第一言語第二言語の間には共有できるCommon Underlying proficiencyCUP)があるとする考えです。第一言語能力(母国語)と第二言語は分かれているのではなく、一つの言語脳から生成されていると考えます。

 

トリリンガルの次は?

3ヶ国語話者のトリリンガル(trilingual)の次は、 4ヶ国語話者のクワドリンガル(quadrilingual)になりますが、4ヶ国語話者になるには相当な努力と時間が必要になります。後述しますが、しっかりとした母国語の力がないとセミリンガルになる危険もありますし、安易に学習言語を増やしてしまうと中途半端になってしまいます。

  

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トリリンガルになるには?

トリリンガルになるには

母国語の学習

第二外国語母語に与える影響は前述したカミンズ氏が立証してきました。特に幼少期に年齢に応じた母語教育を受けることが重要になります。特定の時期を逃してしまうと、大人になってから再学習するのが難しくなります。

 

母国語の確立

引用:ベネッセ教育総合研究所母語以外の言葉を子どもが学ぶ意義

 

上記の図によれば、話し言葉の形成は一般的に4〜6才ぐらいで、2~3才ぐらいの時期に母国語の文化も形成されます。セミリンガルを防ぐには幼児期に母国語の形成を促す環境を整えることが重要です。

 

認知・学習言語能力を鍛える

カミンズ氏は、言語能力を日常の場面に密着した(context-embedded)言語使用が特徴Basic Interpersonal Communicative Skills(BICS)と学問的な思考をするときに必要な言語能力のCognitive Academic Language Proficiency(CALP)2 つに分類しました。

 

  BICS CALP
特徴 具体的・インフォーマル 抽象的・フォーマル
語彙数 3,000語以下 100,000語以上
文章の特徴 短くてシンプル 長くて複雑
コミュニケーションの形式 文脈重視 非文脈下
能力形成までの時間 1〜3年 5〜10年以上

引用:2livnlearnAre You Judging Your English Learners on Their BICS Instead of    Looking for CALP? を参考に筆者が作成

 

第一言語にしっかりと時間をかけてCognitive Academic Language Proficiency(CALP)を形成させないと、抽象的な思考ができなくなります。第一言語が不十分のまま、バイリンガルトリリンガルと言語習得をしようとしても、気心が知れた人との会話(文脈重視)のコミュニケーションしかできなくなってしまいます。

 

BICSとCALP

引用:bestofbilash|BICS/CALP:Basic Interpersonal Communicative Skills vs. Cognitive Academic Language Proficiency

  

母語からの干渉を意識

私達は第二言語を習得する際に、母国語に少なからず影響を受けます。母語の特性が第二言語習得の妨げになっている場合は、母語からの負の移転(negative transfer)が働いているとか、母語からの干渉(interference)が起こっていると言われています。

 

母語干渉の例(負の移転)

  • Teach=教えるの図式を行き先を教えるにも適用※正しくはtell(語彙レベル)
  • スマート=ほっそりの図式を英語に適用(外来語)
  • I was cried by my girlfriend(被害受け身)※彼女に泣かれたとは表現できない

 

負の移転(negative transfer)に対して、実は正の移転(positive transfer)もあります。例えば日本語の所有格の知識が、英語のTom's(トムの)の理解を速めていると言われています。「トムの本」と「Tom's book」が統語的に類似しているので、正の移転が発生すると言われています。

 

言語間の距離

引用:エースプロについての資料

 

正の移転が多いのか、負の移転が多いのかは実は言語間の距離に関わっています。日本語と文法規則などが大きく異なる言語は距離が遠くなりますし、統語論的に類似している言語の距離は近くなります。

 

母語の干渉

同一言語同一環境を守る

家庭内でバイリンガルキッズを育てるためには「One person, one Language」を守るべきだと言われています。例えば、母親は日本語を話し、父親は英語を話すように誰がどの言語を使うのか明確にすることです。メルボルンで行われた研究では、母親が一貫して日本語を使用した環境で育った子供は、その後も流暢に日本語の力を伸ばすことがえきたと報告されています。

 

www.researchgate.net

 

同一言語同一環境を守ることは、大人の学習者にも有効です。2015年にドイツで実施された研究では、同じ出来事を目撃しても使用する言語によって見え方が異なるという結果も出ています。Schumannは、1978年に文化変容モデル(Acculturation model)を提唱し、第二言語習得には心理的距離を縮めることが大切だと主張していました。

 

同一人物、同一言語

もし、複数の言語を適当に使用していると脳が混乱するだけではなく、対象の物や人に対して心理的距離を縮めることができなくなります。ターゲット言語のモチベーションを上げるためにも、同一言語同一環境を守ることが大切です。

英語の次に学ぶ言語は?

英語の次に学ぶ言語

中国語

中国語は、下記のブログでも紹介しましたがおすすめの言語です。2020年の話者数は英語に続いて2番目に多い数で、国連の6つの公用語(他は英語、フランス語、ロシア語、中国語、アラビア語) の一つでもあります。言語パワーもかなり高く、おすすめの言語です。詳しい指標を知りたい方は下記のブログをチェックしてみてください。

 

www.sunafuki.com

 

国語学習における正の移転は、間違いなく漢字になるでしょう。長城学院によれば、中国常用漢字2500字の内、日本語と全く同じ漢字が約1683字があるようです。語彙を覚える負担がかなり下がります。

 

www.chojogakuin.com

 

一方で、負の移転は日本語の文字表記や句読点をそのまま中国語にも応用してしまうことや、中国語の漢字を日本語の意味で理解してしまうことなどが挙げられます。後者の例は、中国語の「安心」は「気持ちが落ち着いている」という 意味で使われますが、「心配しなくてもよい」と言いたい場合は 基本的に「放心」という中国語が該当します。同じ漢字でも意味が異なる漢字があるので、注意する必要があります。

 

負の移転の例

  • 日本語の文字表記をそのまま用いる。
  • 句読点を日本語の習慣に従ってつける。
  • 中国語にない表現をそのまま日本語から導入する。
  • 中国語にあるが、日本語の意味や使い方で使用する。
  • 日本語の表現を翻訳の過程を経て使用する。
  • 日本語の構文で文を作ることによる文法成分の欠如
  • 不必要な成分の生成
  • 日本語の語順
  • 前後関係や接続の問題
  • 文章構成の問題

引用:目標言語から母語への逆向転移の実例日本語から中国語へ

 

スペイン語

スペイン語は国連の6つの公用語(他は英語、フランス語、ロシア語、中国語、アラビア語) の一つで世界的に重要な言語の一つです。スペインだけではなく、中央アメリカ・南アメリカの地域で公用語とされているのも魅力です。

 

www.sunafuki.com

 

スペイン語の母音は「a/e/i/o/u」の5つの母音で、日本語とほとんど同じです。「a/e/o」が強母音、「i/u」が弱母音という区別はありますが、発音は日本語の知識をあてはめる要素が多いです。また、主語が省略されやすいのは日本語と統語論的には似通っている部分です。

 

韓国語 

韓国語は日本人にとって学びやすい言語だと言われています。ディラ国際語学アカデミーの調査によると、韓国語は比較的易しい言語に区分けされています。

 

易しい言語

引用:ディラ国際語学アカデミー

 

ちなみに、なぜ韓国語は日本人にとって易しいのでしょうか。実は、日本語も韓国語も「が」や「は」などを接着剤のようにくっつけて文章を組み立てる膠着語です。

日本語と韓国語

語順も基本的に同じなので、ハングルの読み方と語彙を覚えることができれば、比較的短時間で韓国語を習得できるようになります。

 

トリリンガル芸能人・Youtuber

トリリンガルyoutuber

トリリンガルのトミ【韓国語講座】(日・韓・英)

トミさんは、日本語、英語、韓国語を話すトリリンガルです。韓国には10年、アメリカには5年、カナダには1年在住したことがあるようです。母国語は日本語ですが、韓国語はネイティブレベル、英語はビジネス英語を操ることができます。現在は鹿児島県で韓国語と英語の語学教室を運営しているようです。Youtubeチャンネルでは、韓国語をはじめから丁寧の教えています。

 

www.youtube.com

 

李姉妹ch(日・中・英)

「李姉妹ch」とは、姉のゆんちゃんと妹のしーちゃんの中国人姉妹が中国語のよく使う表現、聞き流しの音声、中国語を勉強する上でオススメのドラマや曲、おすすめのアプリなどを紹介するyoutubeチャンネルです。姉のゆんちゃんは、中国語・日本語・英語を話すトリリンガルで、妹のゆんちゃんは日本語と中国語を話します。インフルエンサーとしても活躍して、本の出版などもしています。

 

www.youtube.com

 

MOMO CHAPELA 【ももチャペ】(西・日・英)

ももさんは、スペイン語・日本語・英語を話すトリリンガルです。メキシコで生まれましたが、アメリカやノルウェーでも教育を受けています。ヨーロッパのバレエ団でダンサーとしても活躍していたようです。ももチャペでは、スペイン語の学習やメキシコ文化について学ぶことができます。

 

www.youtube.com

 

参考

ベネッセ教育総合研究所| 母語以外の言葉を子どもが学ぶ意義

2livnlearn|Are You Judging Your English Learners on Their BICS Instead of Looking for CALP?

bestofbilash|BICS/CALP:Basic Interpersonal Communicative Skills vs. Cognitive Academic Language Proficiency

ACE | エースプロについて

Researchgate | The Japanese Language Development of Children through the ‘One Parent–One Language’ Approach in Melbourne

Researchgate | Two Languages, Two Minds

長城学院 | 学習方法

英語・中国語教育センター  目標言語から母語への逆向転移の実例日本語から中国語へ

ディラ国際語学アカデミー  |  学びやすい外国語、難しい外国語

 

英単語の覚え方・コツ 第二言語習得研究・最新の脳科学研究に基づく学習方法

はじめに

英単語の覚え方のコツ

今回は英単語の覚え方・コツを考えていきます。第二言語習得研究・最新の脳科学研究に基づいて効果的な英単語学習方法を紹介していきます。どれぐれいの語彙が必要なのか、どれぐらい深く学習するべきかという基礎知識を確認した後で、第二言語習得研究・脳科学研究に基づく学習のヒントの事例や研究を紹介していきます。最後に学習スタイル診断を紹介するので、自分に合った学習戦略み基づいて英単語学習をぜひはじめてみてください。

 

 第二言語習得研究から考える英語学習方法はこちら↓↓

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 シャドーイングの実践方法はこちら↓↓

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パターンプラクティスの正しいやり方はこちら↓↓ 

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 参考文献

脳科学的に正しい英語学習法」  

 

「英語の学び方入門」

 

「英語は科学的に学習しよう」 

 

「外国語学習の科学」

 

「英語独習法」 

 

 

英単語学習の基礎知識

英単語学習

そもそもなぜ英単語を覚えるべき?

ヒッグス氏の研究では、英語を習得するために語彙・文法・発音・流暢さ・社会言語性の5つの要素があることが明らかになっています。英語学習の初期段階では語彙、文法、発音が3つの柱となり、特に語彙学習が45%をしめるようです。ある程度の語彙力を最初に身につけることが初学者には大切だということを示しています。最低限の土台を作るために英単語の学習は必要ということで、やはり英単語の学習は避けることはできません。

語彙力のグラフ

引用:Higgs' Graph of Learner Needs

 

Qian(2002)の研究によれば、語彙をどれぐらい広く・深く学習したかで英文読解の質が変わり、その67%が語彙力に依存していると主張しています。リーディング力のアップにも語彙力の強化が必要なようです。

 

実は英単語の覚え方の研究は盛んに行われ、様々な研究成果が出ています。コロンビア大学の研究では、伝統的な英単語の意味を覚える(words cards)学習よりも、写真やトピックと関連させて覚えたほうが生徒の英単語テストのスコアが高い結果が出ています。英単語の覚え方やコツを第二言語習得研究や脳科学研究を参考に、考えていきたいと思います。  

記憶の戦略

 引用:The Acquisition of Vocabulary Through Three Memory Strategies

   

どれぐらいの語彙が必要?

コーパス(Corpus)

まずは英語学習において、最低限どれぐらい英単語を覚えるべきでしょうか?目的や目指すべき到達度によってことなりますが、その鍵となるのがコーパス(Corpus)です。コーパス(Corpus)は特定の目的をもって収集されたテキストの集合体です。本来は言葉の研究目的に収集されたものですが、第二言語習得の際にも大いに活躍します。

 

コーパスの3つの条件

  • 条件1:ある目的をもって集められたテキスト
  • 条件2:実際に使われた言葉である
  • 条件3:コンピューター処理できる

引用:コーパス超入門 投野由紀夫

 

コーパスには上記の3つの条件にあるように、私達が実際に使用した言葉を分析できるようにまとめてくれています。よく使う言葉や言葉の繋がり等をコンピューターで提示してくれるということです。私達はコーパスを使って、最頻出の言葉だけを学習することができます。

 

英語で最頻出の単語10を見てみると、「The」がトップとなります。「The」が多いということは、名詞が多いということです。英語は基本的に、主語と述語で構成されているので、必ず主語に名詞が使われます。このように最頻出の単語を抽出すると、言語の特徴が現れてきます。これもコーパスの良いところです。

 

英語で最頻出の単語10

  1. the
  2. be 
  3. of 
  4. and 
  5. to
  6. in
  7. have
  8. it 
  9. he

参考:BNC(British National Corpus)より

 

コーパスによれば1000万語の英文では、100単語で会話データの67%を網羅できるというデータもあるようです。最頻出の英単語を勉強することの大切さを教えてくれます。

 

1000万語で占める割合(会話データ)

単語数 カバー率
100 67%
200 74%
500 82%
1,000 87%
2,000 92%

参考:BNC(British National Corpus)より

 

コーパスは特定の単語との相性(頻出度の高い単語)も教えてくれます。例えば、「I am」の後ろには、高確率で「Sure」が来ることがわかっています。単語との相性を知っていれば効率的に英単語を覚えることができます。

 

 I am +形容詞のトップ10 

  1. Sure
  2. Sorry
  3. Afraid
  4. Glad
  5. Surprised
  6. Happy
  7. Concerned
  8. Able 
  9. Pleased
  10. Delighted

参考:BNC(British National Corpus)より

  

動詞を使った英熟語を覚える際にも、コーパスがあれば最頻出の熟語から覚えることも可能です。リーディングやリスニングの際にも特定の語を予想することで、音声知覚の負担を減らすこともできます。但し、コーパスはある目的に応じて作られたテキストの集合体なので万能ではありません。分析対象のジャンル(映画、会話、音楽、学術書など)によって異なりますので、より詳細に見ていきましょう。

 

Come+形容詞

  1. True 
  2. Alive
  3. complete
  4. Clean
  5. Close
  6. Unstuck
  7. Cheap
  8. Full
  9. Good
  10. Free

参考:BNC(British National Corpus)より

 

目的・到達度別

次は、英単語を覚える際には実際どれぐらいの語彙が必要になるのでしょうか?これは自分の目的や到達度によって異なります。TOEICで高得点が取りたい、英語検定3級を合格したい、海外の大学院で博士号を取りたい人では必要な語彙力が異なります。

 

語数 TOEIC 英検
12,000 ネイティブ同等 950 英検1級
10,000 海外企業勤務 860
8,000 海外大学留学 730 英検準1級
5,000 難関大学入試 600
4,000 センター試験 470 英検2級
3,000 高校必須 英検準2級
2,000   ー 英検3級
1,000 中学必須

 引用:みんなが嫌いな「英単語」学習。「英単語」を覚える必要性について

 

グローバル教育機関EF(Education First)は、2,500〜3,000語があれば全ての英会話の90%を理解できると言っています。下記のサイトで3,000の英単語を公表しています。

 

www.ef-australia.com.au

 

使用頻度・ジャンル別

2,000〜3,000という語数には妥当性があるでしょうか?ジャンル別の観点にも注目していきましょう。複数のコーパスを分析した研究によると、2,000語で80%以上をカバーしていることが明らかになりました。倍の4,000語になると90%以上のカバー率となります。2倍の単語を覚えたのにカバー率が10%しか上がらない結果となっています。

 

頻度レベルごとの語彙

Word list LOB FLOB Brown Frown Kolaphur
2,000 84.33% 83.07% 81.54% 81.79% 84.15%
4,000+固有名詞 95.39% 95.1% 94.14% 93.93% 94.64%
8,000+固有名詞 98.31% 98.03% 97.6% 97.28% 98.05%
固有名詞 5.29% 5.66% 6.12% 5.43% 4.55%

引用:How Large a Vocabulary Is Needed for Reading 

 

次はジャンル別のカバー率(95%)を研究した成果を見ていきましょう。第二言語習得の授業で話す言葉は2,000語で足りるようですが、映画やテレビでは3,000語が必要となるようです。一般的な新聞や小説は4,000語以上が必要という結果になりました。

 

 ジャンル別の語彙

ジャンル 出典(コーパスの種類) カバー率95% カバー率98%
教師が選定した音楽 Tegge,2017 2,000+PN,MW,TC 4,000+PN,MW,TC
授業で教師が話す言葉(ESL) Horst,2010 2,000 5,000
人気音楽 Tegge,2017 3,000+PN,MW,TC 6,000+PN,MW,TC
映画 Webb&Rodgers,2009b 3,000+PN,MW 6,000+PN,MW
友達との会話 Nation,2006 3,000+PN 7,000+PN
テレビ Webb&Rodgers,2009a 3,000+PN,MW 7,000+PN,MW
授業での議論 Dang&Rodgers,2009a 4,000+PN,MW 8,000+PN,MW
TED Talks Coxhead&Walls,2012 4,000+PN 8,000〜9,000+PN
新聞 Nation,2006 4,000+PN 8,000〜9,000+PN
小説 Nation,2006 4,000〜5,000+PN 8,000〜9,000+PN
技術書 Hsu,2014 5,000+PN,TC,AB 10,000+PN,TC,AB

 引用:Pop Culture in Language Education: Theory, Research, Practice | Lexical Knowledge required for 95 and 98 coverage of different geners

  

やはり2,000語の語彙数は様々なコーパスで高いカバー率を示したので、これらの語をじっくり学習することが大切です。後述しますが、単語の深さを意識して実際に使える単語レベルになるようにじっくり学習をしていきましょう。

単語を深く理解

どこまで深く学習する?

受容的な知識と発信できる知識

ここまでは単語の広さ(知っている単語の数)について考えてきましたが、ここから深さ(語彙についての知識)について少し考えていきます。

 

単語の様々な情報

  1. 単語のパーツ:単語の構成パーツ、派生語
  2. 複数の意味:単語の複数の意味
  3. 他の語を連想:関連する他の語を連想
  4. 文法的機能:品詞や、単語を使用する際のルール
  5. 使用する際の注意点:ニュアンスや表現上の注意点など

引用:英語の学び方入門(新多了)

 

単語を深く理解するためには、単語の発音や意味だけを覚えるのは不十分なようです。複数の意味や、関連語、文法的な特徴も理解するのが大切なようです。深く理解することで受容的な知識(receptive knoledge)から発信できる知識(productive knowledge)へと促していきます。

 

単語を記憶する最初のステップはラベリング(Labeling)です。発音やスペルに対して、意味というラベルを付与していきます。ラベリングの次は、ネットワーキング(networking)です。ネットワーキングは、語と語の関連情報を見つけて、語彙のネットワークを広げていくプロセスです。語彙が有機的につながっていれば、効率的にラベリングされた単語が発信できる知識に変容されていきます。

 

英単語の基礎知識

 

単語の基礎知識をおさえ単語を深く理解することで、スムーズに文章を読めるようになったり、アウトプットする際にも的確な語彙を選択できるようになります。

 

語源学習のメリット

英単語を覚える際に、必要なのが英単の語源を意識することです。清水氏によれば、語源学習のメリットは英単語そのものを覚えるのを助けるだけではなく、新しい英単語の意味を推測させると指摘しています。

 

語源学習のメリット

  • 単語の長期的な保持が可能になる
  • 未知語の意味推測が可能になる
  • 単語の体系的・効率的な学習が可能になる

引用:清水健二『連想式にみるみる身につく語源で英単語』

 

私達日本人であれば、知らない漢字を見つけても部首を頼りにだいたいの意味を推測することができます。英単語の中にも意味を類推するための語源があります。語源は接頭辞(prefix)、接尾辞(suffix)、語根(root)の3つに分けることができます。接頭語は単語の先頭に、接尾辞は単語の最後に、語根は語中の中にあります。「dependent」という英単語であれば、「de-」 が「下へ」を意味する接頭辞、「pend」が「ぶら下げる」を意味する語根、ent が名詞化する接尾辞となります。

 

in- / im- は「not=否定」という接頭辞を活用すれば「independent」という未知の単語に出会っても「dependent」が依存するという意味を知っているので、「依存の否定だから独立では?」と意味推測ができます。また、「pend」はぶら下がるという意味を知っていれば、新たに「pending」(ぶら下がる≒保留中)という単語を効率的に学習をすることができます。

 

www.rarejob.com

 

記憶の仕組み

記憶の仕組み

エビングハウス忘却曲線

エビングハウス忘却曲線とは、エビングハウス氏が1885年に発表した人間の忘却に関する数式です。この曲線は情報を保持しようとしない場合に、時間の経過とともに情報が忘れられる割合を示しています。情報を放置してしまうと、学習者は数日または数週間のうちに学習した知識の記憶を急速に失ってしまいます。一般的には、1時間以内に新しい情報の約50%を忘れ、24時間以内に70%近く忘れてしまいます。

 

エビングハウス忘却曲線を右上にシフトさせる方法か数多く研究されています。例えば、間隔を開けて複数回学習する分散学習や常に教材にアクセスできる環境を作ることなどです。英単語を覚える際には、自分なりに工夫をして忘却曲線をできるだけ右上にシフトすることを意識することが大切です。

 

忘却曲線に挑戦する5つの方法

  1. Spaced learning(分散学習)
  2. Make it accessible(アクセス可能にする)
  3. Keep it engaging(エンゲージする)
  4. Create a learning culture(学習文化を創る)
  5. Make it relevant(関連させる)

 引用:Learnupon | 5 Ways to Challenge the Forgetting Curve

エビングハウスの忘却曲線

引用:Learnupon | 5 Ways to Challenge the Forgetting Curve

 

短期記憶から長期記憶

私たちの記憶は大まかに感覚記憶・短期記憶・長期記憶の3つに分けられています。ほとんどの記憶が数秒程度で忘れ去られてしまいまが、実は既知の事柄と関連付けたり、自分が実際に経験することで長期記憶に保管されます。

 

長期記憶には様々な種類がありますが、ポイントは顕在記憶と潜在記憶に分かれていることです。顕在記憶は言葉で表現できますが、潜在記憶は無意識に覚えている非言語の性質をもっています。潜在記憶にも二つの種類があります。知覚表象システムは感覚・知覚レベルで使われる記憶で、「信号は赤である」というような対象を認識する時に使います。手続記憶は身体の動かし方や認知技能についての記憶で、ダンス等のスポーツとイメージすれば良いでしょう。

 

記憶の種類

実は記憶の形成にはステップがあり、そう簡単には潜在記憶は定着されません。例えば、車の運転やスポーツも今でこそ簡単にできますが、相当なトレーニングが必要だったはずです。一般的には、思い出や個人的な経験等のエピソード記憶は情報が最適化されて、少しずつ顕在記憶へ変容していきます。

 

意味記憶はテキストなどを使った学習で身につく、やや抽象的な性質をもつ知識です。その最適化された知識は反復作業やトレーニングにより、潜在記憶へと変容していきます。外国語を理解する際に力を発揮するのは潜在記憶です。

 

自動化された顕在知識

実は、潜在記憶を獲得するだけでは不十分で「自動化された顕在知識」が必要だと言われています。自動化された顕在知識は、意味記憶と潜在記憶を往復することで養われます。潜在記憶を形成するだけではなく、絶えず知識を言語化する必要があります。なんとなく車を運転できる、感覚でダンスができるだけでは不十分です。なぜ英語学習において、自動化された顕在知識が必要なのでしょうか。英語が話せない人は英語を聞いて、日本語に変換してから英語を理解してしまいます。一方で、自動化された顕在知識をもっている英語学習者はスムーズに英語を聞いて英語を理解できます。

 

潜在記憶の形成

スキーマ学習

スキーマとは認知心理学の概念で、ある事柄についての枠組みとなる知識です。母語についてもっている知識もスキーマの一つで、子供や外国語話者が話した日本語が瞬間的に変だと感じるのは、母語スキーマがあるからです。ことばについてのスキーマは、言語化できず無意識にアクセスされるもので、英語を学習する際には身体の一部となっている母語スキーマと格闘しないといけません。

 

今井氏によれば英語スキーマは氷山の水面にあるように見えにくく、以下の6つの要素を地道に調べる必要があると主張しています。

 

英語スキーマをつくる6つの要素

  1. その単語が使われる構文
  2. その単語と共起する単語
  3. その単語の頻度
  4. その単語の使われる文脈(フォーマリティの情報を含む)
  5. その単語の多義の構造(単語の意味の広がり)
  6. その単語の属する概念の意味ネットワークの知識

引用:英語独習法(今井むつみ)p79

 

1の単語が使われる構文には「Cambridge Dictionary」がおすすめで、単語を検索した際に「More examples」をクリックすると例文がいくつか表示されるので、その単語でよく使われる構文を知ることができます。

 

dictionary.cambridge.org

 

2〜6の要素を調べるには、無料で使える簡易コーパスであるSkeLLが推奨されています。SkeLLはある言葉を検索すると、その言葉の「Examples」(例文)、「Word sketch」(使われ方の分析)、「Similar words」(似ている言葉)、言葉の頻度をすぐに調べることができます。

 

skell.sketchengine.eu

 

英語スキーマを身につけるためのステップ

  1. 自分が日本語スキーマを無意識に英語に当てはめていることを認識する
  2. 英語の単語の意味を文脈から考え、さらにコーパスで単語の意味範囲を調べて、日本語で対応する単語の意味範囲や構文と比較する
  3. 日本語と英語の単語の意味範囲や構文と比較することにより、日本語スキーマと食い違う、英語独自のスキーマを探すことを試みる。
  4. スキーマのズレを意識しながらアウトプットの練習をする。構文のズレと単語の意味範囲をズレを両方意識し、英語のスキーマを自分で探索する。
  5. 英語のスキーマを意識しながらアウトプットの練習を続ける。

 引用:英語独習法(今井むつみ)p79

 

英語スキーマを身につけるためには、地道に辞書やコーパスを使って日本語と英語の意味範囲などを比較して、日本語スキーマとのずれを探すことが大切だと主張されています。最終ステップとしては、単語から広がる英語スキーマを意識しながらアウトプットの練習を続けることです。

 

脳科学的に正しい英単語学習方法

英単語学習方法


脳番地メソッド

脳番地メソッドとは医学博士である加藤氏が提唱している脳を効率よく使って学ぶ理論です。それぞれの脳番地を意識することで、英語の各スキルを効果的に伸ばすことができます。

 

脳番地メソッド

 

単語を覚えるには記憶系番地を刺激することが必要となります。特に、エピソード記憶は記憶系番地を強く刺激させ、記憶の連結が高まるようです。また、単語の書き取りをして運動記憶で覚えることは、思考系番地に他のことを考えさせるメリットもあるようです。

 

脳科学的に正しい英単語学習法

  1. 単語を覚えるには記憶系脳番地を刺激する
  2. 電子辞書をもってスーパーで買い物をする
  3. 身の回りを「英語化」して覚える
  4. 「長い英単語」で記憶力を鍛える
  5. 「外国人の名前」を覚えて単語の記憶力を鍛える
  6. 「単語の書き取り」をして運動記憶で覚える
  7. 「インプット方法」を決めて集中的に単語を覚える
  8. 英単語は「付随情報」と一緒に覚える
  9. 運動系番地で「使える英語」を身につける
  10. 「何でも記憶するクセ」で単語の暗記力を高める

引用:脳科学的に正しい英語学習方法(加藤俊徳)

 

脳のエリアを理解してどのエリアを刺激することで、どんな力を伸ばしたいのか明確にすることで効率よく学習をすすめることができます。脳番地トレーニングはまだ解明されていないこともあるようで、今後さらに英語学習に活かされていくかもしれません。

 

www.nonogakko.com

テスト効果

アメリカの大学生に、英文を見ずに10分間で英文の内容をできるだけ思い出し、紙に書き出すというテストを受けさせる調査をしました。複数の学習条件を提示したところ、「英文を繰り返し読む」(= 繰り返し学習)よりも、「英文の内容を繰り返し思い出す」(= 繰り返しテスト)方が効果的であることが明らかになりました。

 

つまり単語帳で英単語とその和訳をただ眺めているのは、効果的な学習法であるとは言えません。和訳の部分を隠して英単語からその意味を思い出したり、英単語の部分を隠して和訳から英単語を思い出すなど、テストの要素を持たせることで、記憶への定着が高まることが期待されるということです。

 

英単語帳の中には赤字の部分を隠せるようになっているものがあります。シートを使用した学習法は記憶研究に基づいた効果的な学習法であると言えます。和訳から英単語を思い出せば、自分でテスト効果を取り入れた効果的な学習を行うこともできます。

 

gendai.ismedia.jp

  

性格・認知スタイルに応じた学習

認知スタイル

学習スタイルのオニオンモデル

学習スタイルのオニオンモデルとは、私たちの認知の違いや性格によって学習スタイルが異なることを示した理論です。私達は同じものを見えても、違った認識や解釈をすることがあるようです。そのような多様な学習スタイルを上手にまとめたのが「学習スタイルのオニオン・モデル」(Curry,1983)と呼ばれる理論です。

 

学習スタイルのオニオンモデル

引用:Semanticscholar(参考URLより)

 

学習スタイルのオニオン・モデル 

  • 性格・認知スタイルの違い(玉ねぎの中心)
  • 情報処理に関わるスタイルの違い(玉ねぎの中間)
  • 学習環境・学習活動に対する好み(玉ねぎの外側)

 

中心に行くほど、外からの影響を受けいくい先天的な要素が強い部分です。自分の性格や認知スタイルや情報処理の得意・不得意分野を把握すれば、より効率の良い学習をすることができます。

 

また、男性と女性は外国語学習時に異なる学習方略を用いる傾向が報告されています。例えば新しい単語を学ぶ際に、女性は声に出して覚える方法を多く用いるなど、聴覚的な方略を利用する傾向があるようです。男性は暗記したい言葉を空間(場所)に配置して覚える視覚的な方略をとる傾向があるようです。

 

PLSPQ検査(学習スタイル診断)

PLSPQ(perceptual learning style preference questionnaire)は、私たちの認知スタイルの好みなどを6つのタイプに分類・測定してくれるアンケートです。簡単に実施できるのが神田外国語大学が提供するオンライン版「学習スタイル診断」です。16の質問に答えるだけで、学習スタイルを無料で診断してくれます。例えば、「自分は耳から情報を入れるのが得意で、個人学習を好む」など自分が好む学習スタイルを提示してくれます。

 

www.kandagaigo.com

 

英語版であれば下記の「educationplanner」がおすすめです。20の質問に答えるだけで、自分の学習スタイルを診断してくれます。自分の学習のスタイルが「Auditory」(聴覚)、「Visutal」(視覚)、「Tactile」(触知)型なのか診断してくれます。こちらも無料で実施することができます。

 

www.educationplanner.org

 

 

参考

Cestofbilash | Higgs' Graph of Learner Needs

Colombian Applied Linguistics Journal | The Acquisition of Vocabulary Through Three Memory Strategies

Education First|3000 most common words in English

Victoria University of Wellington | Paul Nation's resources

Wiley Online Library | Investigating the Relationship Between Vocabulary Knowledge and Academic Reading Performance: An Assessment Perspective

RareJob|みんなが嫌いな「英単語」学習。「英単語」を覚える必要性について

Lextutor | How Large a Vocabulary Is Needed for Reading

Learnupon | 5 Ways to Challenge the Forgetting Curve

Fluentin3months | How to Use a Memory Palace to Boost Your Vocabulary

脳の学校

現代ビジネス | 【研究結果】本当に何かを習得したいなら、学習ではなく〇〇が効果的

Tatsuya Nakata’s Website | 研究業績

Semanticscholar | The influence of Confucian philosophy on adults' preference for learning: a comparison of Confucian adult learners and non-Confucian adult learners

共同通信PRWire | 【研究成果発表】英語学習における脳活動に男女差~小学生約500人を対象に英語習熟度と脳活動の関係を調査

パターンプラクティスとは?英語学習への効果・正しいやり方を丁寧に解説 瞬間英作文との違いとは!?

はじめにパターンプラクティス タイトル

今回はパターンプラクティスについて考えていきます。パターンプラクティスとはどのようなトレーニングなのでしょうか。英語学習への効果や正しいやり方を丁寧に解説していきます。瞬間英作文との違いも整理しています。パターンプラクティスを正しく理解して、ぜひ実践してみてください。

 

↓こちらでトレーニングができます

www.youtube.com

 

 

↓↓第二言語習得研究から効果的な英語学習方法

www.sunafuki.com

 

 ↓↓英語が話せるようになるためのトレーニングについて

www.sunafuki.com

 

 ↓↓シャドーイングの実践方法

www.sunafuki.com

パターンプラクティスとは

パターンプラクティスとは

パターンプラクティスとは、日本では別名で文型学習などと呼ばれ、文の型(パターン)の知識を活かして、文を少しずつ変化させるトレーニングを指します。一般的には教師によって実践されるトレーニングですが、最近では独学用の教材もあります。

 

a technique for practicing a linguistic structure in which students repeat a sentence or other structure, each time substituting a new element, such as a new verb, as directed by the teacher, or transforming the original structure, as in changing a statement to a question

引用:コリンズ英語辞典

 

パターンプラクティスは文の基本例をもとに、その一部の単語を言い換えるトレーニングで、一般的には「置換」「転換」「拡張」の3つの作業を通して実践されます。

 

パターンプラクティスの主な3つの作業

  1. 置換:His house is big→His house is small
  2. 転換:His house is big→Is his house big?
  3. 拡張:His house is big→His house is very big

 

「置換」は、一部の単語を言い換える最も基本的なパターンプラクティスです。「転換」は基本例を平叙文から疑問文へ、単文から重文へ、能動態から受動態などへ転換させる、「拡張」は形容詞や副詞などの要素を追加していくトレーニングとなっています。つまり、パターンプラクティスは単純な文から複雑な文へ変換させるトレーニングです。パターンプラクティスの本質を理解するために、その歴史を簡単に振り返っていきます。

 

パターンプラクティスの歴史

パターンプラクティスの歴史

オーラルメソッドの普及

オーラルメソッドは、19世紀までの文法・訳読中心主義の教授法に対する教授法として開発され、母語を介しないオーラル・ワーク(口頭作業)を重視します。日本においては、ハロルド・E・パーマー(Harold E. Palmer)が文部省の英語教授顧問として活躍した際に広まったようです。

 

パーマー氏の言語観は、実際の生活場面でコミュニケーションの道具として使えるような技術、すなわち「speech」の重要性を説き、以下の5つの習性と7つの練習活動をキーワードに挙げています。

 

パーマー氏の5つの習性

  • 音声の観察(auditory observation)
  • 口頭での模倣(oral imitation)
  • 口頭での反復(catenizing)
  • 意味化(semanticizing)
  • 類推による作文(composition by analogy)

引用:パーマーのオーラル・メソッド受容についての一考察より作成

 

7つの練習活動

  • 耳を訓練する練習(ear-training exercise)
  • 発音練習(articulation exercise)
  • 反復練習(repetition exercise)
  • 再生練習(reproduction exercise)
  • 置換練習(substitution exercise)
  • 命令練習(imperative exercise)
  • 定型会話(conversational exercise)

引用:パーマーのオーラル・メソッド受容についての一考察より作成

 

これらの練習活動は、後に説明する米国ミシガン大学のチャールズ・フリーズ(C.C. Fries)が提唱したオーディオ・リンガル法に 大きな影響を与えていきます。置換練習はパターン・プラクティスの原型とされ、アメリカの英語教育に大きく貢献していたようです。オーラルメソッドでは、なるべく母語を使わないで教えるため、動作、実物、写真、絵などの視聴覚教具を使うほか、適切な状況を作りだすことが重要だと言われています。

  

アーミーメソッドの展開

第二次世界大戦中,アメリカの軍人を対象に,短期間に集中的に外国語を教えるためのプログラムが開発されました。授業は主にフレーズや語彙を模倣するスタイルで、高い効果が出ていたようです。様々な言語がこの教授法によって教えられたようですが,特に対戦国である日本語教育では大きな成果を挙げたようです。

 

アーミーメソッドの効果

  • 米の軍人がASTPで9週間ポルトガル語を学んだ後に、リズボンの大使館で活躍
  • コロンビア大学では学生がペルシア語の単語とフレーズを、たったの9週間で習得

引用:Armed forces' foreign language teaching: critical evaluation and implication

 

母語の使用について最初に行われる言語学者による文法解説だけで、それ以外の母語の使用は禁止されていました。アメリカは現在でも、軍人向けに質の高い語学教育を提供しているようです。その原点がアーミーメソッドです。

  

アメリカの軍人向け語学学校(DLI)

www.youtube.com

 

オーディオリンガルメソッドの開発

1950年代の終わり,フリーズ氏はアーミーメソッドの見識に行動主義心理学の知見を加えオーディオリンガルメソッドが開発しました。フリーズ氏の言語観は最初にターゲットとなる外国語の音組織を習得した後、発音を体系的に学ぶべきだとしていいます。

 

さらに「pattern」を何度も繰返す基本練習である口頭ドリルが重視され、母語の使用はできるだけ避けるべきものとされています。まず、学習する内容を理解させる講義があり,その後に口頭練習が集中的に行われます。口頭練習で、今回のパターンプラクティスが考案されました。

 

www.youtube.com

 

よくある勘違い

よくある勘違い

文型学習(文法学習)を無視する

1つ目は、テキストの一文目から闇雲に英文を暗証して、文型を意識しないでトレーニングをしてしまうことです。5文型を理解をしていないのに5文型を使ったパターンプラクティスを実践しても効果がありません。もしも文型を理解していないのであれば、パターンプラクティスを始める前にしっかり5文型を整理しましょう。

 

実は5文型という概念はパターンプラクティスの考え方に基づいて誕生した経緯があるようです。英語をパターン化するためには、英語に一定の型を与える必要がありました。文型の理解とパターンプラクティスは切ってもきれない関係にあります。

置換・転換・拡張トレーニングをしないで満足する

パターンプラクティスは、単純に日本語を見て英語を発話するトレーニングではありません。5文型を土台にして、単語を「転換」したり「拡張」するトレーニングも大切な要素です。自分で0から文章を組み立てるわけではありませんが、文を自分なりに転換するのがパターンプラクティスです。

 

日本語を見て英語を発話するトレーニングは、実は「瞬間英作文」です。「瞬間英作文」だけでも英語学習への効果は期待できますが、後述する森沢氏が提唱する「文型操作力」は養うことができません。

パターンプラクティスだけで話せるようになる

パターンプラクティスの肝は、英文を訳さずに読めるようになることです。文法の知識が「わかる」から「使える」知識に変換されます。英文を見て、即座に意味をつかむことができるようになります。但し、5文型の英文をある組み立てるようになったからと言って、創造的に話せるようになるわけではありません。後述する、「情報の格差」などの気づきが必要になります。

 

但し、文法の知識を理解しただけではなく、運用可能な知識としてインプットしたことで今後のアウトプットの質も向上します。いちいち基礎文法を再確認する作業を省くことができるので、英語学習を効率的にすすめられます。 

 

パターンプラクティスの目的 

パターンプラクティスと訓読中心主義

 

パターンプラクティスには、オーラルメソッドとオーディオリンガルメソッドを土台として、構造言語学・行動心理学の知見が組み込まれています。パターンプラクティスを通して得られる力は、文型に基づく文構造を変化させ多様な文を産出させること。さらに、その産出を自動化させる言語能力を獲得することです。

パターンプラクティスの目的

 

なぜ、パターンプラクティスだけで話せるようにならないかの一つの理由としては、インフォメーションギャップ(情報のやり取りをして自分が産出した英文を修正)する工程が欠けているからです。情報の格差を埋めるためには、コキュニケーションを重視するコミュニカティブ・アプローチが必要になってきます。

 

パターンプラクティスの効果・メリット

パターンプラクティスのメリット

運用可能な文法知識の獲得

 パターンプラクティスを何度も繰り返すことで「わかった」文法の知識が頭の中で想像したイメージと結びついて、「つかえる」運用可能な知識へと転換されていきます。パターンプラクティスのトレーニングを何度も繰り返していくと日本語の訳を介するよりも、すぐに英文を意味へと結びつけた方が早くなることに気がついてきます。

 

つまり、「文型」や「文法」の知識をベースに、自分で主体的に情景などを思い浮かべて発話することで、自分の体に基礎的な文法を刷り込ませることができるようになります。

簡単な小説を訳を介せずにスラスラ読める

パターンプラクティスで英文の意味を瞬座につかむことができるようになると、英文との向き合い方も変わってきます。訳に頼ることなく、英語の内容を頭の中でイメージできるようになっていきます。今までの「訓読」→「訳」という作業をしていると、処理スピードが遅くなっていました。「イメージ」から直接「意味」を産出することで、処理スピードが早くなります。

 

パターンプラクティス(瞬間英作文でもOK)をある程度実践できるようになったら、中学英語文法で書かれている小説などをたくさん読むことをおすすめします。レベル別の洋書や教材を活用しても良いでしょう。

 

↓↓洋書で多読の始め方を丁寧に解説しています

www.sunafuki.com

 

「話すための瞬間英作文」でパターンプラクティスを実践

話すための瞬間英作文

話すための瞬間英作文とは

話すための瞬間英作文とは、英語講師の森沢氏が書いたベストセラー英語教材です。「簡単な英文をスピーディーにたくさん作れば英語が話せるようになる」というコンセプトで、日本語を見て反射的に英作文 を作るトレーニングを独学で実践できます。前述したように、瞬間英作文とはパターンプラクィスの基礎となるトレーニングであり、本シリーズではレベル1の位置づけとなっています。

 

第2ステージに突入すると、いよいよパターンプラクティスのトレーニングを本格的に始まります。下記のチャートの②〜⑤がパターンプラクティスの要素がつまった教材となっています。今回は、①「どんどん話すための瞬間英作文トレーニング」と⑤「ポンポン話すための瞬間英作文 パターンプラクティス」を使って、正しいやり方を丁寧に解説していきます。

 

短文暗唱=瞬間英作文トレーニングのステージ進行まとめ表

  • 第1ステージ:中学英語の範囲内で平易な文が文型別に確実にスムーズに作れるようにする。単語・表現に難しいものが一切ないばからしい程容易な文例集を使用。
  • 第2ステージ:中学英語の瞬間的な引き出し、結合が自由にできるようにする。反射的に英文を作る回路の設置完了。例文が、文法・文型別に並んでいないパターン・シャッフルされたもの、あるいは文型が統合された例集を使用。
  • 第3ステージ:さまざまな文型・構文・表現を駆使できるようにする。第2ステージ終了までに獲得した回路を使用し、中学英語の枠を超えたさまざまな文例集・構文集を用い、あらゆる構文、文型、表現を習得していく。 

 引用:どんどん話すための瞬間英作文トレーニン

 

第1ステージ(瞬間英作文)

第1ステージは、「どんどん話すための瞬間英作文トレーニング」のテキストを使用していきます。本書ではpart1〜3まで計790の例文を使って瞬間英作文のトレーニングをすることができます。

 

レーニングの手順

  1. 日本文を見て英作文:左側の日本文を見て、英文を口に出す。
  2. 英文を見て答え合わせ:答えの英文を見て、自分の英文と答え合わせ。
  3. 英文を口に落ち着ける:英文の構造・意味をイメージしながら自然に発話。
  4. 英作文の流し:10の日本文を連続して英作文する

 

まずは、日本文「これは良い本です」を見て、英文を口に出してみます。声に出して見たら、答えの英文「This is a good book」見て、自分の英文と答え合わせをします。注意したいのは、だいたい合っているから大丈夫と思わないことです。例えば、冠子の「a」が抜けていたら、もう一度やり直すことが必要です。

 

英文を口に落ち着けるステップでは、英文の構造・意味をイメージしながら自然に発話していきます。これはSVCの文構造で、「良い本がある」というイメージをしながらナチュラルに発話できるように繰り返し音読します。1~10の例文の構造を理解し、意味を頭の中でイメージしながら自然に発話できるようになったら、「英作文の流し」の最終ステップにすすみます。

 

瞬間英作文第1ステージ

 

第1ステージでは、テキストの全体像をイメージしながら790の例文を完璧に発話できるレベルまで何度もトレーニングを重ねることが必要です。今後のパターンプラクティス(第2ステージ)のためではなく、効率的なインプットやアウトプットにもつながり、今後の英語学習の土台になるからです。

瞬間英作文第1ステージ

付属のCDには、「日本語の音声」→「ポーズ」→「英語の音声」が流れるので、テキストを使用せずにトレーニングをすることができます。

 

 

「どんどん話すための瞬間英作文トレーニング」※CD付きを選択できます。

第2ステージ(パターンプラクティス)

第2ステージは、「ポンポン話すための瞬間英作文 パターンプラクティス」を使用していきます。第1ステージを突破してから、このシリーズを手に取ることをおすすめします。第1ステージのトレーニングをおろそかにしてしまうと、スムーズに学習をすすめることができないので注意しましょう。本書のパターンプラクティスでは、下記のように先行の文を少しずつ変化させながら、次々と新しい文を作っていきます。

 

パターンプラクティスの流れ

  1. 「私は英語を勉強します」(基本文)
  2. 「彼は」に置換
  3. 「しますか?」に転換
  4. 「日本語を」に置換

 

「私は英語勉強します」という基本文を英語で言えるようになったら、次々に英文を「置換」・「転換」していきます。教師が「彼は」と実際に自分に指示をしているようにイメージをして、テンポよく反応すると本来のパターンプラクティスの教授方に近くなります。

 

瞬間英作文第2ステージ

 

本書には「基礎編」と「発展編」がありあすが、基礎編だけでも十分効果があります。第1レベルのように何度も繰り返すよりは、次々に新しい項目にチャレンジして多様な文型に触れることが大切です。「置換」と「転換」に慣れてきたら、自分で英文を「拡張」するのもおすすめです。

瞬間英作文第2ステージ

 

付属のCDには、同様に「日本語の音声」→「ポーズ」→「英語の音声」が流れるので、音声を使ったトレーニングをすることができます。主語や動詞を変えたり、時制も変化させるので脳にかなり負担がかかります。情景をイメージすることを忘れずに、何度も繰り返しトレーニングを進めましょう。

  

「ポンポン話すための瞬間英作文パターン・プラクティス」

 

おすすめの教材(瞬間英作文)

中学英語で24時間話せるシリーズ(初心者向け)

「中学英語で24時間話せるシリーズ」は、市橋氏の「英文法を知っているだけでなく、使い切れるようにすることにある」というコンセプトを体現したテクストです。市橋氏は英会話における英文法の必要性を、日本の英会話教育史上初めて唱えた人だとも言われています。他に「話すための英文法シリーズ」など名著を数多く出版しています。

 

個人的には瞬間英作文を実践するには、まずは「中学英語で24時間話せるシリーズ」から手にとっても良いと思います。例文がとてもシンプルで、1文型にごとに7つの例文がセットになっているので無理なく始めることができます。基礎的な文法学習した後で、気軽に瞬間英作文を実践したい人におすすめです。本シリーズには「part1」と「part2」がありますが、「part1」だけでも十分です。

 

 中学英語で24時間話せるシリーズの特徴

  • 同じ文型の例文が7つセットになっている。
  • 例文が短いので、テンポよく音読できる。
  • ワンポイントで英文法の解説がある。
  • 英文のみを読み上げたCDが付属
  • 「part1」と「part2」合わせて、約900の例文を収録 

 

 「中学英語で言いたいことが24時間話せる part1」

 

  「中学英語で言いたいことが24時間話せる part2」

 

基本にカエル英語の本(超初心者向け)

「基本にカエル英語の本」は英文法学習の教材ですが、瞬間英作文の教材としても活用できます。英文法の基礎から始めたい人におすすめです。特に英語の文型の概念をバケツを使って分かりやすく説明しています。難しい文法用語全く使わずに、イラストなどを駆使して視覚的に理解できるようになっています。

 

基本にカエル英語の本

 

著者の石崎氏は英文法サイト『Get you!!English!!わかりやすい英文法』を運営しており、こちらでも英文法の学習をすることができます。英文法の学習を始めながら、瞬間英作文もやってみたい人におすすめの教材です。すでに英文法を学習している方は、少し物足りなく感じるかもしれません。

 

基本にカエル英語の本2

 

「確かめよう」のパートには左側に日本文、右側に英訳が記載されているので、瞬間英作文を実践することができます。丁寧に解説された文型知識を無理なく、インプットすることができます。

 

 「基本にカエル英語の本 英文法入門レベル1」

 

参考

collinsdictionary:Definition of 'pattern practice'

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』|オーラルメソッド

パーマーのオーラル・メソッド受容についての一考察

VOA News | US Military's Language School Draws Positive Attention

研究ノート:日本語教育における媒介語の使用について|文法訳読法からコミュニカティブ・アプローチまで 

Clara Verina |  The Audio Lingual Method

ベレ出版 | 祝!発行10周年&50万部突破!! 

Get you !! English !!~わかりやすい英文法