英語が話せるようになるには 始めから丁寧に 第二言語習得研究に基づく実践トレーニング

はじめに

英語が話せるようになるには

今回は英語が話せるようになるにはどうすれば良いのか徹底的に解説していきます。初心者の方も始められるように始めから丁寧に説明していきます。最近は第二言語習得研究の本や文献を読み漁っているので、私の実体験も合わせてより実践的なトレーニングも具体的に解説していきます。

 

 

参考文献

 

知っているから使えるインプット

知っているから使えるインプット
英語が話せるようになる仕組みの柱は2つあります。一つ目は、インプットした知識をいかに自動化できるのか。二つ目は、スピーチ・プロダクションモデルを理解して実践することです。英語による高度なディスカッションや論理的な発話能力等は別にして、ある程度英語が話せると言われるレベルに到達するには十分なはずです。

 

知識の自動化

スピーキング能力の向上には知識の自動化が大切だと言われています。ただし、知識の自動化がなぜ大切なのか?具体的にどう実践して何を意識すれば良いのかが曖昧になっている人も多いのではないでしょうか。

記憶の種類

記憶の種類

私たちの記憶は大まかに感覚記憶・短期記憶・長期記憶の3つに分けられています。ただし、ほとんどの記憶が数秒程度で忘れ去られてしまいます。日々忘却されてしまう記憶を、永久的に保管するにはどうすれば良いのでしょうか?実は既知の事柄と関連付けたり、自分が実際に経験することで長期記憶に保管されます。

 

長期記憶の種類

長期記憶には様々な種類がありますが、ポイントは顕在記憶と潜在記憶に分かれていることです。顕在記憶は言葉で表現できますが、潜在記憶は無意識に覚えている非言語の性質をもっています。実は、知識の自動化の鍵を握っているのは潜在記憶です。

  

潜在記憶にも二つの種類があります。知覚表象システムは感覚・知覚レベルで使われる記憶で、「信号は赤である」というような対象を認識する時に使います。手続記憶は身体の動かし方や認知技能についての記憶で、ダンス等のスポーツとイメージすれば良いでしょう。

 

もう一つ大切なことは、記憶の形成のされ方にはステップがあり、そう簡単には潜在記憶は定着されないということです。例えば、車の運転やスポーツも今でこそ簡単にできるかもしれませんが、相当なトレーニングが必要だったはずです。

 

潜在記憶の形成

潜在記憶の形成

一般的には、思い出や個人的な経験等のエピソード記憶は情報が最適化されて、顕在記憶へ変容していきます。意味記憶はテキストや本を使った学習で、やや抽象的な性質をもつ知識です。

 

最適化された知識は反復作業やトレーニングによって、少しずつ潜在記憶へと変容していきます。車の運転も技術を習得しただけではぎこちないですが、何度もハンドルを握りコースを走ることで、無意識に運転ができるようになってきます。

 

実は英語学習においては、それだけでは不十分で「自動化された顕在知識」が必要だと言われています。自動化された顕在知識は、意味記憶と顕在記憶を往復することで養われます。顕在記憶を形成するだけではなく、絶えず知識を言語化する必要があります。なんとなく車を運転できる、感覚でダンスができるだけでは不十分です。

 

自動化された顕在知識とは? 

自動化された顕在知識とは
なぜ英語学習において、自動化された顕在知識が必要なのでしょうか。英語が話せない人は英語を聞いて、日本語に変換してから英語を理解してしまいます。一方で、自動化された顕在知識をもっている英語学習者はスムーズに英語を聞いて英語を理解することができるようになっています。

 

自動化された顕在知識は運用能力が高い

「英語を聞く」という作業では、音韻・イントネーション・単語・文法などの知識を総動員して、何度もリスニングのトレーニングをすればなんとかなるかもしれません。ただし、英語のスピーチの仕組み自体はより複雑です。英語が話される仕組み自体をまずは言語化できるようにならないとだめです。

 

英語学習の落とし穴

  • 多聴多読・シャドーイングだけで潜在知識を獲得→スムーズなアウトプット✖️
  • 知識を顕在的、意識的に覚え少しずつ自動化→高い運用能力

 

自動化された顕在知識を促す

顕在知識

日本人にとって英語の知識の自動化とは、英語を聞いて英語で理解することです。そのためには自動化された顕在知識が必要になることを理解してきました。インプットは、上記の気付き、理解、内在化、統合の4つのステップを踏むことで自動化が促進されると言われています。

 

気付き

気付きとはごく当たり前のことに思うかもしれませんが、英語学習という総合的な学習をする際には重要な概念になります。ここで言う気付きとは、今自分が学習(インプット)する際に、自分の注意が特定の項目に向けさせているかどうかを指します。要するに、なんとなくの学習を止めることです。

 

気付きの例

  • 英単語の暗記→IELTS試験に頻出の名詞を意識して覚える
  • 熟語の暗記→センター試験によく出る数量を表す熟語を覚える

 

近年の第二言語習得研究では、気付きを促す様々なメソッドが考案されていますが、代表的なのがインプット強化とインプット洪水です。

 

インプット強化は、目標とする項目を太字にしたり、目立たせることで注意を意識的に向けさせるテクニックです。おすすめの実践方法は自分が完全に理解できたリーディング教材や易しい洋書などの本文から特定の文法項目(助動詞、仮定法など)を見つけ、マーカーを付け、再度意識的に読む学習方法です。

 

もう一つのインプット洪水は、インプット強化をより進化させた学習方法です。先ほど実践した例を使えば、今度はリーディング教材のマーカー部分を隠して、前後の文脈から自分で書けるようにトレーニングします。

 

上記のトレーニングを実践していると不思議ですが、それぞれの文法的特徴をより深く理解できるようになります。文法書で完全に理解した知識ですが、自分は深いレベルまで理解できなかったことに気づかされます。これらのトレーニングを実践しなくても、普段から何かを意識して英語に触れることは、広い意味での気付きを促すことにもつながります。

 

理解・内在化

理解には実は2種類の性質があります。一つ目は、浅い理解です。浅い理解は意味だけを理解することです。英単語を例に挙げれば、単語そのものだけの理解です。二つ目は、深い理解です。深い理解は先ほどの例を使うと、意味に加え形式や機能も理解していることです。その英単語がどのような状況で使用され、どのような機能をもっているかまで理解していることを指します。実は文脈の中で英単語を勉強することは、形式と機能を同時に理解することができるので深い理解につながります。

 

統合

統合はインプットした知識を長期的に留め、スムーズにアウトプットするための準備期間です。 知識を長期記憶としてとどめるためには反復学習が必要です。アウトプットするための最終段階です。知識を統合するためには、様々なアクティビティを組み合わせ反復する必要があります。下記のトレーニングが有効だと言われています。

 

統合を促すトレーニン

  • リピーティング:音声をテキストを見ながら音読
  • シャドーイング:テキストを見ないで音声をリピートする
  • リード&ルックアップ:テキストを短時間で覚え、見ないで復唱

 

上記の実践方法は こちらを参照してください↓↓

www.sunafuki.com

 

スピーチ・プロダクションモデル

スピーチ・プロダクションモデルを理解することで、なぜ知識の自動化が必要なのか、もし自分のスピーキングに問題があったらどこにテコ入れをすれば良いのか分かるようになります。自分の英語が話される仕組みをまずは知る必要があります。

 

スピーチプロダクションモデル

 

スピーチ・プロダクションモデルは、私たちのアウトプットのプロセスを3段階のステップに分解したモデルです。

  

概念化

まず、最初のステップは頭の中の概念化装置で、自分の伝えたい想いを形成していきます。例えば、今お腹がすいているなと感じたとしたら、「お腹が空いたなと」心の声が生まれてきます。

 

形式化

 二つ目の形式化は、「お腹が空いたなと」という心の声を言葉にのせる作業です。空腹という単語を探して「hungry」という単語を頭の中の辞書から見つけると同時に、音韻・音声情報も作成します。

 

形式化

  • 語彙・文法コード化:検索した語彙情報から語句を組み立てる
  • 形態・音韻コード化:アクセントや音韻知識を活用
  • 音声コード化:舌の位置、口の使い方、声帯の振動情報を作成

 

調音化

最後の調音化は、実際に「I am hungry」と発話するプロセスを指します。 実際にメッセージを言語化する最終ステップです。注意したいのは、テキストの例文等を暗記して発話したメッセージは、「概念化」と「形式化」のステップを省略しています。即効性があるかもしれませんが、創造的な言語活動にはつながりません。

 

アウトプットの役割

U字型発達曲線

 

アウトプットの役割を考える際に、参考になるのがU字型発達曲線と呼ばれるものです。U字型発達曲線は、言語の創造的な使用がどのようなプロセスで実現されるかの示唆を与えてくれます。

 

U字型発達曲線

  • 第1段階:言語をそのまま暗記
  • 第2段階:規則や法則を抽出
  • 第3段階:創造的に言語使用

 

第1段階では、目標となる言語をそのまま丸暗記します。正確性は高いですが、表現が限定的な状態です。第2段階では、正確性が減少しますが、トライ&エラーを通して一般的な規則を抽出できるようになります。第三段階では、あらゆる状況で柔軟な言語使用が可能になっていきます。アウトプットの役割は、実践的な言語使用を実現するために、失敗を繰り返し確かな規則を自分で見つけていくことだと言えます。

 

また、トロント大学のスウェイン氏の研究によると、どれほど回りの学習環境が良くてもアウトプットの機会がないと伸びが限定されてしまうということが明らかになっています。さらにアウトプットにはいくつかの役割があると言われています。

 

アウトプットの4つの役割

  • 自らの第二言語能力の穴に気づくことができる
  • 自らの情報の仮説を検証する機会が生まれる
  • アウトプットはインプットとは異なる言語処理を促進する
  • 言語知識の自動化を促進する

出典:「英語学習のメカニズム」(p6062)より引用

 

実際にアウトプットしようとすると、何が言えないのか認識することができます。相手に英語何かを伝えようとする「これ、英語で何て言うのかな?」という疑問がたくさんでてきます。自分の英語運用能力の穴に気づくことができます。

 

仮説検証とは机上で行われるものではなく、実際のインタラクティブな会話で検証されます。例えば、英語ネイティブの方に用意した表現を使った際に、思うように伝わらなかった、誤解をあたえてしまったら自ずと仮説が修正されます。アウトプットを通して、自分が立てた仮説が正しいか確かめることができます。

 

アウトプットはインプットとは異なる言語処理が促進されるとはどういうことでしょうか。英語の情報を脳で処理する時は、単語や表現などから意味内容を推測・理解をします。一方でアウトプットは、当然ですが適切な語彙や文法項目を自ら考えて、選択・判断する必要があります。

 

最後に、アウトプットすること事態が言語知識の自動化を促進させます。「完璧に話せるようになるまで人前で話さない」「文法の理解を深めてから話す練習をする」というのが間違いということです。でたらめな文法や乏しい語彙知識で、過度なスピーキングに突っ走るのは良くないかもしれませんが、ある程度の知識が理解・内在化されたら、以下のトレーニングを実践することをおすすめします。

 

アウトプットの質を高めるトレーニン

リハーサル(独り言)

リハーサルとは頭の中で英語を組み立てて、頭の中で言うトレーニングです。日々の出来事を独り言で言っても同様な効果が得られます。実は声に出して実際に言う活動と、頭の中で言うリハーサルは脳内では類似の処理がされているという研究結果もあるようです。リハーサルは一人で実践できる有効なトレーニングと言えるでしょう。

 

speaking development

引用:Oral rehearsal: Teaching English as a foreign language in Japan

 

但し、リハーサルをするだけでは不十分で自分の言語の穴に気付き、修正をする必要があります。「これ英語で何て表現するんだっけ?」のように新規の情報を検索したり、「もっと上手く伝える表現がないかな?」のように情報を更新していくことでより効果が高まります。ペアで学習する機会があれば、互いの情報を修正することも可能です。

 

atsueigoさんのブログでも「独り言」で伸ばす具体的なトレーニング方法が掲載されています。独り言も「5W1H」を使えば、どんどん話せるようになれます。

 

atsueigo.com 

15/45 Exercise 

特定のトピックを与えられて、15秒で考えて45秒で話すといったトレーニングです。学習者は十分なプランニングができない状態で、アウトプットすることが求められます。このような練習を繰り返せば、既述した「概念化」(言いたいことのコンセプト・概念を生成する)から「形式化」(生成したコンセプト・概念を言語化する)のプロセスが強化されると言われています。

 

上記の「15秒」と「45秒」は一つの目安なので、自分で時間を設定して短時間で話すトレーニングをすることもできます。IELTSやTOEFLのスピーキングテストを自分で時間を設定して実践しても同様の効果が期待できます。スピーキングを試験を実際に受けるために、対策をするのも良いでしょう。

 

好きな食べ物

  • 好きな食べ物はなんですか?
  • どのぐらいの頻度でそれを食べますか?
  • 自分で作れますか?
  • 料理は好きですか、なぜ好き/嫌いですか?

 

旅行

  • この前、休暇の旅行に行ったのはいつですか?
  • どこへ行きましたか?
  • そこでどんなことをしましたか?
  • 国内旅行と海外旅行どちらが好きですか?

 

IELTSのテキスト

 

 

即興スピーチ

即興スピーチ(improvised speech)は第二言語学習では伝統的なメソッドの一つです。また、欧米の小学校等でも日常的に取り入れられている言語能力を促進する活動の一つです。ただし、即興はスピーキング活動の中でも、創造性が必要となるので自分でルールや時間を決めるなどの工夫が必要になります。

 

下記の図によれば、「ロールプレイ」や「ストーリーテリング」等と同様に創造性が必要となり、脳に負担がかかる活動となります。即興スピーチ(improvised speech)はレベル3に該当する活動で、自由度が高いトレーニングのため的確なフィードバックが必要とされています。模範解答等が参照するなど、セルフフィードバックも大切となります。

 

スピーキング活動モデル

  • Level 1: Reproductive language use(模倣、再生産的活動)
  • Level 2: creative language use(創造的使用)
  • Level 3: Creative and productive language use(創造的かつ生産的)

引用:An approach to creative speaking activities in the young learners’ classroom

 

即興スピーチ

引用:An approach to creative speaking activities in the young learners’ 

 

下記の「ENGLISH JOURNAL ONLINE」では3つのユニークな即興スピーキング練習法が紹介されています。興味がある方はチェックしてみてください。おすすめは、キーワードスピーチのエクササイズです。いくつかのキーワードとなる英単語をくじで引き、それらのワードを使って1分間スピーチを行うトレーニングです。語彙の組み立て能力や、言語の概念化・形式化に大きく貢献する活動と言えるでしょう。

 

即興スピーキング練習法

  1. Present(プレゼント)のエクササイズ
  2. One Phrase1つのフレーズ)のエクササイズ
  3. Keyword Speech(キーワード・スピーチ)のエクササイズ

引用:ENGLISH JOURNAL ONLINE

 

ej.alc.co.jp

 

参考

Researchoutreach|Oral rehearsal: Teaching English as a foreign language in Japan

Atsueigo|IELTS8.5の純ジャパが英語のスピーキングを「独り言」で伸ばす練習法公開

Tandfonline|An approach to creative speaking activities in the young learners’ classroom

ENGLISH JOURNAL ONLINE|どんな状況でも英語がとっさに話せるようになる即興スピーキング練習法