はじめに
今回は英単語の覚え方・コツを考えていきます。第二言語習得研究・最新の脳科学研究に基づいて効果的な英単語学習方法を紹介していきます。どれぐれいの語彙が必要なのか、どれぐらい深く学習するべきかという基礎知識を確認した後で、第二言語習得研究・脳科学研究に基づく学習のヒントの事例や研究を紹介していきます。最後に学習スタイル診断を紹介するので、自分に合った学習戦略み基づいて英単語学習をぜひはじめてみてください。
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参考文献
「脳科学的に正しい英語学習法」
「英語の学び方入門」
「英語は科学的に学習しよう」
「外国語学習の科学」
「英語独習法」
英単語学習の基礎知識
そもそもなぜ英単語を覚えるべき?
ヒッグス氏の研究では、英語を習得するために語彙・文法・発音・流暢さ・社会言語性の5つの要素があることが明らかになっています。英語学習の初期段階では語彙、文法、発音が3つの柱となり、特に語彙学習が45%をしめるようです。ある程度の語彙力を最初に身につけることが初学者には大切だということを示しています。最低限の土台を作るために英単語の学習は必要ということで、やはり英単語の学習は避けることはできません。
引用:Higgs' Graph of Learner Needs
Qian(2002)の研究によれば、語彙をどれぐらい広く・深く学習したかで英文読解の質が変わり、その67%が語彙力に依存していると主張しています。リーディング力のアップにも語彙力の強化が必要なようです。
実は英単語の覚え方の研究は盛んに行われ、様々な研究成果が出ています。コロンビア大学の研究では、伝統的な英単語の意味を覚える(words cards)学習よりも、写真やトピックと関連させて覚えたほうが生徒の英単語テストのスコアが高い結果が出ています。英単語の覚え方やコツを第二言語習得研究や脳科学研究を参考に、考えていきたいと思います。
引用:The Acquisition of Vocabulary Through Three Memory Strategies
どれぐらいの語彙が必要?
コーパス(Corpus)
まずは英語学習において、最低限どれぐらい英単語を覚えるべきでしょうか?目的や目指すべき到達度によってことなりますが、その鍵となるのがコーパス(Corpus)です。コーパス(Corpus)は特定の目的をもって収集されたテキストの集合体です。本来は言葉の研究目的に収集されたものですが、第二言語習得の際にも大いに活躍します。
コーパスの3つの条件
- 条件1:ある目的をもって集められたテキスト
- 条件2:実際に使われた言葉である
- 条件3:コンピューター処理できる
引用:コーパス超入門 投野由紀夫
コーパスには上記の3つの条件にあるように、私達が実際に使用した言葉を分析できるようにまとめてくれています。よく使う言葉や言葉の繋がり等をコンピューターで提示してくれるということです。私達はコーパスを使って、最頻出の言葉だけを学習することができます。
英語で最頻出の単語10を見てみると、「The」がトップとなります。「The」が多いということは、名詞が多いということです。英語は基本的に、主語と述語で構成されているので、必ず主語に名詞が使われます。このように最頻出の単語を抽出すると、言語の特徴が現れてきます。これもコーパスの良いところです。
英語で最頻出の単語10
- the
- be
- of
- and
- to
- in
- have
- it
- he
参考:BNC(British National Corpus)より
コーパスによれば1000万語の英文では、100単語で会話データの67%を網羅できるというデータもあるようです。最頻出の英単語を勉強することの大切さを教えてくれます。
1000万語で占める割合(会話データ)
単語数 | カバー率 |
---|---|
100 | 67% |
200 | 74% |
500 | 82% |
1,000 | 87% |
2,000 | 92% |
参考:BNC(British National Corpus)より
コーパスは特定の単語との相性(頻出度の高い単語)も教えてくれます。例えば、「I am」の後ろには、高確率で「Sure」が来ることがわかっています。単語との相性を知っていれば効率的に英単語を覚えることができます。
I am +形容詞のトップ10
- Sure
- Sorry
- Afraid
- Glad
- Surprised
- Happy
- Concerned
- Able
- Pleased
- Delighted
参考:BNC(British National Corpus)より
動詞を使った英熟語を覚える際にも、コーパスがあれば最頻出の熟語から覚えることも可能です。リーディングやリスニングの際にも特定の語を予想することで、音声知覚の負担を減らすこともできます。但し、コーパスはある目的に応じて作られたテキストの集合体なので万能ではありません。分析対象のジャンル(映画、会話、音楽、学術書など)によって異なりますので、より詳細に見ていきましょう。
Come+形容詞
- True
- Alive
- complete
- Clean
- Close
- Unstuck
- Cheap
- Full
- Good
- Free
参考:BNC(British National Corpus)より
目的・到達度別
次は、英単語を覚える際には実際どれぐらいの語彙が必要になるのでしょうか?これは自分の目的や到達度によって異なります。TOEICで高得点が取りたい、英語検定3級を合格したい、海外の大学院で博士号を取りたい人では必要な語彙力が異なります。
語数 | TOEIC | 英検 | |
---|---|---|---|
12,000 | ネイティブ同等 | 950 | 英検1級 |
10,000 | 海外企業勤務 | 860 | |
8,000 | 海外大学留学 | 730 | 英検準1級 |
5,000 | 難関大学入試 | 600 | |
4,000 | センター試験 | 470 | 英検2級 |
3,000 | 高校必須 | 英検準2級 | |
2,000 | ー | 英検3級 | |
1,000 | 中学必須 |
引用:みんなが嫌いな「英単語」学習。「英単語」を覚える必要性について
グローバル教育機関EF(Education First)は、2,500〜3,000語があれば全ての英会話の90%を理解できると言っています。下記のサイトで3,000の英単語を公表しています。
使用頻度・ジャンル別
2,000〜3,000という語数には妥当性があるでしょうか?ジャンル別の観点にも注目していきましょう。複数のコーパスを分析した研究によると、2,000語で80%以上をカバーしていることが明らかになりました。倍の4,000語になると90%以上のカバー率となります。2倍の単語を覚えたのにカバー率が10%しか上がらない結果となっています。
頻度レベルごとの語彙
Word list | LOB | FLOB | Brown | Frown | Kolaphur |
---|---|---|---|---|---|
2,000 | 84.33% | 83.07% | 81.54% | 81.79% | 84.15% |
4,000+固有名詞 | 95.39% | 95.1% | 94.14% | 93.93% | 94.64% |
8,000+固有名詞 | 98.31% | 98.03% | 97.6% | 97.28% | 98.05% |
固有名詞 | 5.29% | 5.66% | 6.12% | 5.43% | 4.55% |
引用:How Large a Vocabulary Is Needed for Reading
次はジャンル別のカバー率(95%)を研究した成果を見ていきましょう。第二言語習得の授業で話す言葉は2,000語で足りるようですが、映画やテレビでは3,000語が必要となるようです。一般的な新聞や小説は4,000語以上が必要という結果になりました。
ジャンル別の語彙
ジャンル | 出典(コーパスの種類) | カバー率95% | カバー率98% |
---|---|---|---|
教師が選定した音楽 | Tegge,2017 | 2,000+PN,MW,TC | 4,000+PN,MW,TC |
授業で教師が話す言葉(ESL) | Horst,2010 | 2,000 | 5,000 |
人気音楽 | Tegge,2017 | 3,000+PN,MW,TC | 6,000+PN,MW,TC |
映画 | Webb&Rodgers,2009b | 3,000+PN,MW | 6,000+PN,MW |
友達との会話 | Nation,2006 | 3,000+PN | 7,000+PN |
テレビ | Webb&Rodgers,2009a | 3,000+PN,MW | 7,000+PN,MW |
授業での議論 | Dang&Rodgers,2009a | 4,000+PN,MW | 8,000+PN,MW |
TED Talks | Coxhead&Walls,2012 | 4,000+PN | 8,000〜9,000+PN |
新聞 | Nation,2006 | 4,000+PN | 8,000〜9,000+PN |
小説 | Nation,2006 | 4,000〜5,000+PN | 8,000〜9,000+PN |
技術書 | Hsu,2014 | 5,000+PN,TC,AB | 10,000+PN,TC,AB |
引用:Pop Culture in Language Education: Theory, Research, Practice | Lexical Knowledge required for 95% and 98% coverage of different geners
やはり2,000語の語彙数は様々なコーパスで高いカバー率を示したので、これらの語をじっくり学習することが大切です。後述しますが、単語の深さを意識して実際に使える単語レベルになるようにじっくり学習をしていきましょう。
どこまで深く学習する?
受容的な知識と発信できる知識
ここまでは単語の広さ(知っている単語の数)について考えてきましたが、ここから深さ(語彙についての知識)について少し考えていきます。
単語の様々な情報
- 単語のパーツ:単語の構成パーツ、派生語
- 複数の意味:単語の複数の意味
- 他の語を連想:関連する他の語を連想
- 文法的機能:品詞や、単語を使用する際のルール
- 使用する際の注意点:ニュアンスや表現上の注意点など
引用:英語の学び方入門(新多了)
単語を深く理解するためには、単語の発音や意味だけを覚えるのは不十分なようです。複数の意味や、関連語、文法的な特徴も理解するのが大切なようです。深く理解することで受容的な知識(receptive knoledge)から発信できる知識(productive knowledge)へと促していきます。
単語を記憶する最初のステップはラベリング(Labeling)です。発音やスペルに対して、意味というラベルを付与していきます。ラベリングの次は、ネットワーキング(networking)です。ネットワーキングは、語と語の関連情報を見つけて、語彙のネットワークを広げていくプロセスです。語彙が有機的につながっていれば、効率的にラベリングされた単語が発信できる知識に変容されていきます。
単語の基礎知識をおさえ単語を深く理解することで、スムーズに文章を読めるようになったり、アウトプットする際にも的確な語彙を選択できるようになります。
語源学習のメリット
英単語を覚える際に、必要なのが英単の語源を意識することです。清水氏によれば、語源学習のメリットは英単語そのものを覚えるのを助けるだけではなく、新しい英単語の意味を推測させると指摘しています。
語源学習のメリット
- 単語の長期的な保持が可能になる
- 未知語の意味推測が可能になる
- 単語の体系的・効率的な学習が可能になる
引用:清水健二『連想式にみるみる身につく語源で英単語』
私達日本人であれば、知らない漢字を見つけても部首を頼りにだいたいの意味を推測することができます。英単語の中にも意味を類推するための語源があります。語源は接頭辞(prefix)、接尾辞(suffix)、語根(root)の3つに分けることができます。接頭語は単語の先頭に、接尾辞は単語の最後に、語根は語中の中にあります。「dependent」という英単語であれば、「de-」 が「下へ」を意味する接頭辞、「pend」が「ぶら下げる」を意味する語根、ent が名詞化する接尾辞となります。
in- / im- は「not=否定」という接頭辞を活用すれば「independent」という未知の単語に出会っても「dependent」が依存するという意味を知っているので、「依存の否定だから独立では?」と意味推測ができます。また、「pend」はぶら下がるという意味を知っていれば、新たに「pending」(ぶら下がる≒保留中)という単語を効率的に学習をすることができます。
記憶の仕組み
エビングハウスの忘却曲線
エビングハウスの忘却曲線とは、エビングハウス氏が1885年に発表した人間の忘却に関する数式です。この曲線は情報を保持しようとしない場合に、時間の経過とともに情報が忘れられる割合を示しています。情報を放置してしまうと、学習者は数日または数週間のうちに学習した知識の記憶を急速に失ってしまいます。一般的には、1時間以内に新しい情報の約50%を忘れ、24時間以内に70%近く忘れてしまいます。
エビングハウスの忘却曲線を右上にシフトさせる方法か数多く研究されています。例えば、間隔を開けて複数回学習する分散学習や常に教材にアクセスできる環境を作ることなどです。英単語を覚える際には、自分なりに工夫をして忘却曲線をできるだけ右上にシフトすることを意識することが大切です。
忘却曲線に挑戦する5つの方法
- Spaced learning(分散学習)
- Make it accessible(アクセス可能にする)
- Keep it engaging(エンゲージする)
- Create a learning culture(学習文化を創る)
- Make it relevant(関連させる)
引用:Learnupon | 5 Ways to Challenge the Forgetting Curve
引用:Learnupon | 5 Ways to Challenge the Forgetting Curve
短期記憶から長期記憶
私たちの記憶は大まかに感覚記憶・短期記憶・長期記憶の3つに分けられています。ほとんどの記憶が数秒程度で忘れ去られてしまいまが、実は既知の事柄と関連付けたり、自分が実際に経験することで長期記憶に保管されます。
長期記憶には様々な種類がありますが、ポイントは顕在記憶と潜在記憶に分かれていることです。顕在記憶は言葉で表現できますが、潜在記憶は無意識に覚えている非言語の性質をもっています。潜在記憶にも二つの種類があります。知覚表象システムは感覚・知覚レベルで使われる記憶で、「信号は赤である」というような対象を認識する時に使います。手続記憶は身体の動かし方や認知技能についての記憶で、ダンス等のスポーツとイメージすれば良いでしょう。
実は記憶の形成にはステップがあり、そう簡単には潜在記憶は定着されません。例えば、車の運転やスポーツも今でこそ簡単にできますが、相当なトレーニングが必要だったはずです。一般的には、思い出や個人的な経験等のエピソード記憶は情報が最適化されて、少しずつ顕在記憶へ変容していきます。
意味記憶はテキストなどを使った学習で身につく、やや抽象的な性質をもつ知識です。その最適化された知識は反復作業やトレーニングにより、潜在記憶へと変容していきます。外国語を理解する際に力を発揮するのは潜在記憶です。
自動化された顕在知識
実は、潜在記憶を獲得するだけでは不十分で「自動化された顕在知識」が必要だと言われています。自動化された顕在知識は、意味記憶と潜在記憶を往復することで養われます。潜在記憶を形成するだけではなく、絶えず知識を言語化する必要があります。なんとなく車を運転できる、感覚でダンスができるだけでは不十分です。なぜ英語学習において、自動化された顕在知識が必要なのでしょうか。英語が話せない人は英語を聞いて、日本語に変換してから英語を理解してしまいます。一方で、自動化された顕在知識をもっている英語学習者はスムーズに英語を聞いて英語を理解できます。
スキーマ学習
スキーマとは認知心理学の概念で、ある事柄についての枠組みとなる知識です。母語についてもっている知識もスキーマの一つで、子供や外国語話者が話した日本語が瞬間的に変だと感じるのは、母語のスキーマがあるからです。ことばについてのスキーマは、言語化できず無意識にアクセスされるもので、英語を学習する際には身体の一部となっている母語スキーマと格闘しないといけません。
今井氏によれば英語スキーマは氷山の水面にあるように見えにくく、以下の6つの要素を地道に調べる必要があると主張しています。
英語スキーマをつくる6つの要素
- その単語が使われる構文
- その単語と共起する単語
- その単語の頻度
- その単語の使われる文脈(フォーマリティの情報を含む)
- その単語の多義の構造(単語の意味の広がり)
- その単語の属する概念の意味ネットワークの知識
引用:英語独習法(今井むつみ)p79
1の単語が使われる構文には「Cambridge Dictionary」がおすすめで、単語を検索した際に「More examples」をクリックすると例文がいくつか表示されるので、その単語でよく使われる構文を知ることができます。
2〜6の要素を調べるには、無料で使える簡易コーパスであるSkeLLが推奨されています。SkeLLはある言葉を検索すると、その言葉の「Examples」(例文)、「Word sketch」(使われ方の分析)、「Similar words」(似ている言葉)、言葉の頻度をすぐに調べることができます。
英語スキーマを身につけるためのステップ
- 自分が日本語スキーマを無意識に英語に当てはめていることを認識する
- 英語の単語の意味を文脈から考え、さらにコーパスで単語の意味範囲を調べて、日本語で対応する単語の意味範囲や構文と比較する
- 日本語と英語の単語の意味範囲や構文と比較することにより、日本語スキーマと食い違う、英語独自のスキーマを探すことを試みる。
- スキーマのズレを意識しながらアウトプットの練習をする。構文のズレと単語の意味範囲をズレを両方意識し、英語のスキーマを自分で探索する。
- 英語のスキーマを意識しながらアウトプットの練習を続ける。
引用:英語独習法(今井むつみ)p79
英語スキーマを身につけるためには、地道に辞書やコーパスを使って日本語と英語の意味範囲などを比較して、日本語スキーマとのずれを探すことが大切だと主張されています。最終ステップとしては、単語から広がる英語スキーマを意識しながらアウトプットの練習を続けることです。
脳科学的に正しい英単語学習方法
脳番地メソッド
脳番地メソッドとは医学博士である加藤氏が提唱している脳を効率よく使って学ぶ理論です。それぞれの脳番地を意識することで、英語の各スキルを効果的に伸ばすことができます。
単語を覚えるには記憶系番地を刺激することが必要となります。特に、エピソード記憶は記憶系番地を強く刺激させ、記憶の連結が高まるようです。また、単語の書き取りをして運動記憶で覚えることは、思考系番地に他のことを考えさせるメリットもあるようです。
脳科学的に正しい英単語学習法
- 単語を覚えるには記憶系脳番地を刺激する
- 電子辞書をもってスーパーで買い物をする
- 身の回りを「英語化」して覚える
- 「長い英単語」で記憶力を鍛える
- 「外国人の名前」を覚えて単語の記憶力を鍛える
- 「単語の書き取り」をして運動記憶で覚える
- 「インプット方法」を決めて集中的に単語を覚える
- 英単語は「付随情報」と一緒に覚える
- 運動系番地で「使える英語」を身につける
- 「何でも記憶するクセ」で単語の暗記力を高める
引用:脳科学的に正しい英語学習方法(加藤俊徳)
脳のエリアを理解してどのエリアを刺激することで、どんな力を伸ばしたいのか明確にすることで効率よく学習をすすめることができます。脳番地トレーニングはまだ解明されていないこともあるようで、今後さらに英語学習に活かされていくかもしれません。
テスト効果
アメリカの大学生に、英文を見ずに10分間で英文の内容をできるだけ思い出し、紙に書き出すというテストを受けさせる調査をしました。複数の学習条件を提示したところ、「英文を繰り返し読む」(= 繰り返し学習)よりも、「英文の内容を繰り返し思い出す」(= 繰り返しテスト)方が効果的であることが明らかになりました。
つまり単語帳で英単語とその和訳をただ眺めているのは、効果的な学習法であるとは言えません。和訳の部分を隠して英単語からその意味を思い出したり、英単語の部分を隠して和訳から英単語を思い出すなど、テストの要素を持たせることで、記憶への定着が高まることが期待されるということです。
英単語帳の中には赤字の部分を隠せるようになっているものがあります。シートを使用した学習法は記憶研究に基づいた効果的な学習法であると言えます。和訳から英単語を思い出せば、自分でテスト効果を取り入れた効果的な学習を行うこともできます。
性格・認知スタイルに応じた学習
学習スタイルのオニオンモデル
学習スタイルのオニオンモデルとは、私たちの認知の違いや性格によって学習スタイルが異なることを示した理論です。私達は同じものを見えても、違った認識や解釈をすることがあるようです。そのような多様な学習スタイルを上手にまとめたのが「学習スタイルのオニオン・モデル」(Curry,1983)と呼ばれる理論です。
引用:Semanticscholar(参考URLより)
学習スタイルのオニオン・モデル
- 性格・認知スタイルの違い(玉ねぎの中心)
- 情報処理に関わるスタイルの違い(玉ねぎの中間)
- 学習環境・学習活動に対する好み(玉ねぎの外側)
中心に行くほど、外からの影響を受けいくい先天的な要素が強い部分です。自分の性格や認知スタイルや情報処理の得意・不得意分野を把握すれば、より効率の良い学習をすることができます。
また、男性と女性は外国語学習時に異なる学習方略を用いる傾向が報告されています。例えば新しい単語を学ぶ際に、女性は声に出して覚える方法を多く用いるなど、聴覚的な方略を利用する傾向があるようです。男性は暗記したい言葉を空間(場所)に配置して覚える視覚的な方略をとる傾向があるようです。
PLSPQ検査(学習スタイル診断)
PLSPQ(perceptual learning style preference questionnaire)は、私たちの認知スタイルの好みなどを6つのタイプに分類・測定してくれるアンケートです。簡単に実施できるのが神田外国語大学が提供するオンライン版「学習スタイル診断」です。16の質問に答えるだけで、学習スタイルを無料で診断してくれます。例えば、「自分は耳から情報を入れるのが得意で、個人学習を好む」など自分が好む学習スタイルを提示してくれます。
英語版であれば下記の「educationplanner」がおすすめです。20の質問に答えるだけで、自分の学習スタイルを診断してくれます。自分の学習のスタイルが「Auditory」(聴覚)、「Visutal」(視覚)、「Tactile」(触知)型なのか診断してくれます。こちらも無料で実施することができます。
参考
Cestofbilash | Higgs' Graph of Learner Needs
Education First|3000 most common words in English
Victoria University of Wellington | Paul Nation's resources
RareJob|みんなが嫌いな「英単語」学習。「英単語」を覚える必要性について
Lextutor | How Large a Vocabulary Is Needed for Reading
Learnupon | 5 Ways to Challenge the Forgetting Curve
Fluentin3months | How to Use a Memory Palace to Boost Your Vocabulary
現代ビジネス | 【研究結果】本当に何かを習得したいなら、学習ではなく〇〇が効果的
Tatsuya Nakata’s Website | 研究業績
共同通信PRWire | 【研究成果発表】英語学習における脳活動に男女差~小学生約500人を対象に英語習熟度と脳活動の関係を調査