はじめに
今回は英語を話す方法の完全英語学習ロードマップを丁寧に解説していきます。私の第二言語習得研究の知見と行動科学(私自身の語学学習の経験を観察して得られた実証結果・多言語話者に取材をして気づいた彼らに共通した行動の特徴)に基づく学習マップを始めから丁寧に解説していきます。英会話の完全独学ができますので、今回のブログをしっかり理解して英語を話せるようになりましょう。
「ポリィの英語講義」というYoutubeチャンネルも開設致しましたので、ぜひこちらもチェックしみてください。こちらのチャンネルでは、今後英語学習ロードマップの実践動画をアップしていきたいと思います。
英語学習ロードマップ
- Phase1 学習方略に基づく学習計画(公開済み)
- Phase2 発音と単語で気づきを促す(公開済み)
- Phase3 浅い理解を深い理解に転換(公開済み)
- Phase4 英語の化石化を防ぐ内在化(公開済み)
- Phase5 英語の自動化で統合を刺激(公開済み)
チャンネル登録していただければ励みになります。よろしくお願いいたします。
第二言語習得研究でもう英語学習は挫折しない
挫折をしてしまう英語学習者
最初から英会話を始める
英語が話せない理由は練習が足りないからと思って、英会話の練習を最初から始めてしまうとどうなるでしょう。経験がある人なら分かりますが、全く会話が続きません。やっぱり自分には英会話ができないと、自暴自棄になってしまいます。現在の自分を責める必要はなく、単純に英語を話せないのは話すための文法・語彙知識が不足しているからです。
実は英語を話すためには、語彙や文法の知識に加えリスニングの力やリーディングの力も必要です。そもそも英語を話すという行為(英会話)は、相手の話を聞いて、それを理解して自分の考えを伝えることです。まずは相手の英語の音声を聞いて瞬時に理解できる力が必要です。
第二言語習得研究においては、英語習得はインプット(知識を得る行為)の際に起こると考えられています。アウトプットは気づきや仮説検証(この表現で合ってるのかな?と確かめる事)の役割が多いとも言われているので文法・語彙知識が足りないと、アウトプットの期待される効果も薄れてしまいます。
英語学習者の成功体験を追随
書籍やインターネットで見つけることができる英語学習の多くは、個人の経験に基づく独自の英語学習メソッドです。その多くは経験則によるもので、デメリットもあります。英語に触れる環境などが特殊で、本人以外には通用しない可能性もあります。そもそも英語を話すようになるためには、学習のフェーズによって最適な学習方法が存在します。
その学習方法に根拠はあるのか?再現性のない学習方法は採用するべきではなく、ある程度客観的に科学的研究に基づいてトレーニングをするべきです。さらに、科学的学習効果を安易に採用するのではなく、自分に合った生活習慣、認知スタイルを見つけ、いつ・どこで何をやるのか落とし込む必要があります。
英語学習の最短ロードを示す科学的研究
第二言語習得研究を活用することで、学習の課題をダイレクトに解決することができます。膨大な教材を読み漁って、闇雲に様々なトレーニングを繰り返すということから解放されます。第二言語習得研究は私たち学習者に安心感を与えるだけではなく、効率的な解決策を提供してくれます。
第二言語習得研究について解説しています↓↓
次はもう少しだけ、第二言語習得研究の中身を見ていきましょう。
英語習得の仕組み
英語習得の4つのプロセス
第二言語習得研究においては、言語は4つのプロセスを通じて習得されると考えられています。インプットされたものが4つの段階を踏んでアウトプットされるという理論です。気づき→理解→内在化→統合を経て自動化された知識が英会話には必要です。
全ての学習者が上手に4つのプロセスを経てアウトプットできているかは怪しく、大部分の人は理解の途中の段階にいます。浅い理解で止まっていると、英語を話すことができません。これまで学習してきた浅い理解を深い理解に引き上げて、内在化していく必要があります。深く理解された文法や語彙の知識は運用能力が高く、英会話で実践的な知識となります。
英語知識の自動化
内在化された知識は、いよいよ最後の統合化のステップに入ります。知識が統合化されるためには、英語知識の自動化が必要だと言われています。知識の自動化には様々な定義がなされていますが、私は下記のようなイメージで捉えています。シンプルですが、概念から形式への話すためのトレーニング、音声から意味理解への聞くためのトレーニングを繰り返すだけです。
上記のサイクルを何度も回すことで、冒頭でお伝えした相手の英語の音声を聞いて瞬時に理解できる力が身に付き、相手の話を聞いて、それを理解して自分の考えを伝えることができるようになります。具体的な方法は次章以降で丁寧に説明していきます。
英語が話せない最大の原因は内在化の欠如
英語が話せないのは内在化が起こっていないことが考えられます。内在化の段階では、すでに形成された仮説が検証されます。「この表現で合っていたのか?」とか、「この表現で伝わるのか?」と相手にぶつけます。もし、伝わらなかったり誤解が生じたら、その仮説は修正されるべきです。
ある特定の言語項目や規則が誤って習得され、その誤用がそのまま定着してしまうと化石化(fossilization)が起こってしまいます。例えば、英語が得意ではない状態で、カタコトの英語を話して相手が理解してしまったら、その表現をずっと使ってしまう恐れがあります。
行動科学で英語学習の習慣化
いつ・どこで・何を迷わない
ここからは私の語学学習の経験と行動科学の研究を基に、英語学習を習慣化するコツをご紹介していきます。できるだけモチベーションに頼らず英語学習をするためには、いつ・どこで・何をするかをあらかじめ決めることが大切です。朝起きて鏡の前で歯磨きをするように、そこに行くと自然と身体が動くような感じです。
例えば、「通勤中に単語帳をカバンから出して日本語の訳を隠して言えるかどうかチェックする」、「お昼休みは携帯のポッドキャストを聞いて公園で歩きながらシャドーイングする」、「お風呂でkindleのgraded readersを読む」というように具体的に何を使って学習するかを決めることがポイントです。毎日何を使って勉強しようかなと考えていると習慣化になりません。
スモールステップの原則
英語学習の最も重要な原則の一つは簡単すぎるぐらいのスモールステップを貫くことです。「これって簡単すぎるかな?」と思うような教材やテキストを選ぶことが大切です。背伸びしてしまったり、なんとなく理解してしまうのは良くありません。簡単なタスクを一つ一つクリアしていく事で達成感が得ることができます。
そもそも言語習得は、理解可能(comprehensible)なインプットによって起こると言われています。言語学者のクラッシェン氏は現在の能力よりほんの少しだけ難しめ(1+i)のインプットが望ましいと主張しています。インプットが難しすぎると、第二言語習得のプロセスを促進できなかったり、気づきが生まれません。
語彙学習
記憶のメカニズム
遅延効果
エビングハウスの忘却曲線によると、人の記憶は時間が経つごとにどんどん忘れていってしまいます。但し、遅延効果を活用すると記憶を忘れにくくすることができます。遅延効果とは復習の間隔をあけることでより長い間記憶に残しやすくするテクニックです。つまり、ある単語に出会った後に、その単語のもう一度出会うまでの時間を長くすると記憶が定着しやすくなります。
悪い例を挙げると、30個の単語を1日で覚えるために、何がなんでも短期間で繰り返し覚えようすると長期的な記憶になりません。記憶が鮮明に残っている段階で、同じ語をふたたび目にしてしまうと遅延効果は働きません。ある程度、多めの単語をまとめて学習し、一定の間隔を空けて繰り返し学習する事で記憶は定着します。
テスト効果
アメリカの大学生に、英文を見ずに10分間で英文の内容をできるだけ思い出し、紙に書き出すというテストを受けさせる調査をした研究があります。複数の学習条件を提示したところ、「英文を繰り返し読む」(= 繰り返し学習)よりも、「英文の内容を繰り返し思い出す」(= 繰り返しテスト)方が効果的であることが明らかになりました。
つまり単語帳で英単語とその和訳をただ眺めているのは、効果的な学習法であるとは言えません。和訳の部分を隠して英単語からその意味を思い出したり、英単語の部分を隠して和訳から英単語を思い出すなど、テストの要素を持たせることで、記憶への定着が高まることが期待されるということです。
英単語帳の中には赤字の部分を隠せるようになっているものがあります。シートを使用した学習法は記憶研究に基づいた効果的な学習法であると言えます。和訳から英単語を思い出せば、自分でテスト効果を取り入れた効果的な学習を行うこともできます。
英単語を深く理解
ラベリング・ネットワーキング
単語を深く理解するためには単語の発音や意味だけを覚えるのは不十分で、それだけでは浅い理解になってしまいます。実際の使われ方やコロケーションも同時に理解することで受容的な知識(receptive knoledge)から発信できる知識(productive knowledge)に変化していきます。
英単語の覚え方はこちらで解説↓↓
単語を記憶する最初のステップはラベリング(Labeling)です。発音やスペルに対して、意味というラベルを付与していきます。ラベリングの次は、ネットワーキング(networking)です。ネットワーキングは、語と語の関連情報を見つけて、語彙のネットワークを広げていくプロセスです。語彙が有機的につながっていれば、効率的にラベリングされた単語が発信できる知識に変容されていきます。
単語の基礎知識をおさえ単語を深く理解することで、スムーズに文章を読めるようになったり、アウトプットする際にも的確な語彙を選択できるようになります。
スキーマ単語学習
スキーマとは認知心理学の概念で、ある事柄についての枠組みとなる知識です。母語についてもっている知識もスキーマの一つで、子供や外国語話者が話した日本語が瞬間的に変だと感じるのは、母語のスキーマがあるからです。ことばについてのスキーマは、言語化できず無意識にアクセスされるもので、英語を学習する際には身体の一部となっている母語スキーマと格闘しないといけません。
今井氏によれば英語スキーマは氷山の水面にあるように見えにくく、以下の6つの要素を地道に調べる必要があると主張しています。
英語スキーマをつくる6つの要素
- その単語が使われる構文
- その単語と共起する単語
- その単語の頻度
- その単語の使われる文脈(フォーマリティの情報を含む)
- その単語の多義の構造(単語の意味の広がり)
- その単語の属する概念の意味ネットワークの知識
引用:英語独習法(今井むつみ)p79
スキーマについてはこちらで解説↓↓
英語スキーマを身につけるためには、地道に辞書やコーパスを使って日本語と英語の意味範囲などを比較して、日本語スキーマとのずれを探すことが大切です。
発音学習
英語の発音
英語には数多くの母音と子音が存在します。英語の発音トレーニングは口の運動のように一つ一つの音を出せるようにすることが大切です。ただし、すぐに全ての音を出せるようになるは難しいので、まずはミニマル・ペアを使って似ている音を区別して整理していきましょう。
ミニマル・ペアとは1カ所の音の違いだけで意味を区別する単語の組み合わせで、例えば、light[lait]とright[rait]がそれにあたります。この2つの単語を正しく発音できるようになるには日本人が苦手なLとRの発音を区別する必要があります。
英語が聞き取れない原因はこちらで解説↓↓
英語の音節
音節とは母音ひとつを中心とした音の単位を示します。日本語の一文字を分解してみると、「1子音+1母音」となります。例えば、「n a」 (な)「z e」(ぜ)というように、「子音 母音 子音 母音・・」と規則的に並ぶことが多くなっています。一方で英語は、母音一つ、その母音の前後に合計1~7つの子音がくっつき、一音節を形成していきます。
英語の音節
- 子音+母音:go [gou]
- 子音+子音+母音:play [plei]
- 子音+子音+母音+子音:great [greit]
- 子音+子音+子音+母音+子音+子音:strict [strikt]
上記の4つは全部母音がひとつしか入っていないので、1音節の単語となります。ネイティブスピーカーにとっては一つの音と感じているようで、ポン・ポンとリズムよく発話するのがポイントです。
文法学習
語順を意識して学習
言語を形態論的に分類すると、孤立語・屈折語・膠着語に分類されます。英語やラテン語は孤立語と同様に、語順が大切になります。日本語で言う「は」や「を」などの対象を決める助詞がないからです。
英文法の勉強法はこちらで解説↓↓
形態論的分類
- 孤立語:単語の形は変化せず、語順で文章が決まる(中国語、ベトナム語)
- 屈折語:単語の語形を変化させて文章を組み立てる(英語、ラテン語)
- 膠着語:「が」や「は」などをくっつけて文章を組み立てる(日本語、韓国語)
孤立語・屈折語は語順が変わると別の意味になってしまうので注意が必要になります。日本語は助詞で意味が変わってしまいますが、英語は下記のように語順で意味が変化していきます。
動詞を中心に学習
英語の5つの文型を整理してみると、全てに共通している要素がSVであることがわかります。英語の文ではSV(主語+動詞)が不可欠で、それ以外は付随的な要素となっています。英文法を学ぶ際には、主語と動詞を中心に学ぶことが大切です。
英語の文型
- 第1文型:SV(主語+動詞)
- 第2文型:SVO(主語+動詞+目的語)
- 第3文型:SVC(主語+動詞+補語)
- 第4文型:SVOO(主語+動詞+目的語+目的語)
- 第5文型:SVOC(主語+動詞+目的語+補語)
SVの後ろの要素を決めるのは動詞です。動詞を学習する際には、例文や実際に使われ方を確認することが大切です。英文を読む時にも動詞部分を意識するために印を付けて読み進めることもおすすめします。
イメージスキーマ
イメージ・スキーマとは、身近な身体経験(自分自身を中心とした空間的位置の経験や、モノをつかんで位置を移動させるなどの身を持って経験できること)の中で、一定のパターンを認識し、心の中に貯えたものです。イメージ・スキーマを使えば、英語の前置詞や時間の用法を自然と理解することができます。
スキーマについてはこちらで解説↓↓
イメージ・スキーマは国籍や文化によって若干の違いはありますが、言語を跨いだ共通の概念となっています。例えば「in」というイメージ・スキーマは、多くの人が箱の中に何かがあるという図を想像することができます。私達は身近な身体経験を通して、対象となるモノの性質やサイズを乗り越えて、それらに共通する位置関係の概略のみを抽出する傾向があります。
参考:Image Schemas: The Physics of Cultural Knowledge?
時間の用法を表す「in」をイメージ・スキーマを使う例を考えて見ましょう。「the hottest in five years.」の5年間という容器の中に、「一番暑い日」があるという空間的イメージを捉えることができます。「In watching the TV, I received a phone call from John.」では、テレビを見ている時間という容器の中に、「電話に出る」という空間があると視覚的に捉えることができます。
パターンプラクティス
パターンプラクティスとは、日本では別名で文型学習などと呼ばれ、文の型(パターン)の知識を活かして、文を少しずつ変化させるトレーニングです。パターンプラクティスを何度も繰り返すことで「わかった」文法の知識が頭の中で想像したイメージと結びついて、「つかえる」運用可能な知識へと転換されていきます。
パターンプラクティスについてはこちらで解説↓↓
但し、パターンプラクティスを実践するに当たって3つの注意点があります。
注意点
1つ目は、テキストの一文目から闇雲に英文を暗証して、文型を意識しないでトレーニングをしてしまうことです。5文型を理解をしていないのに5文型を使ったパターンプラクティスを実践しても効果がありません。
2つ目は、パターンプラクティスは、単純に日本語を見て英語を発話するトレーニングではありません。5文型を土台にして、単語を「転換」したり「拡張」するトレーニングも大切な要素です。自分で0から文章を組み立てるわけではありませんが、文を自分なりに転換するのがパターンプラクティスです。
3つ目は、パターンプラクティスの肝は、英文を訳さずに読めるようになることです。文法の知識が「わかる」から「使える」知識に変換されます。英文を見て、即座に意味をつかむことができるようになります。但し、5文型の英文を組み立てるようになったからと言って、創造的に話せるようになるわけではありません。
英語を聞くためのトレーニング
英語のリズムと音声変化のルール
イントネーション
英語のリズムと強弱が分からないと、後述する細かい音声変化についていけません。英語の音声に対しては、マクロ的な視点(強弱のリズム)とミクロ的な視点(後述する連結、同化、脱落)などの両面から音声に立ち向かっていくことが必要になってきます。
日本語のリズムは一般的には一定のリズムが続きます。一方で、英語には必ず強弱のリズムがあります。英語の大きな音のカーブに慣れる必要があります。
4つの音声変化
一つ目は連結です。連結とは単語と単語の音がつながる現象のことです。英語話者は単語を一つ一つはっきりと発音しているのではなく、実はつなげて発音しています。単語を一つ一つ単独で発音していていると、流暢に話すことができません。主な連結は下の3つです。
連結のパターン
- 子音+母音:take up[téikʌ́p]→「テイク アップ → テイカップ」
- 母音+母音:go ahead[góuwəhéd]→「ゴゥ アヘッド → ゴゥワヘッド」
- 子音+子音:take you[téik j júː]→「テイク ユー → テイキュー」
リスニングで英語を聞き取れない時は、単語が連結されていないか疑う癖をつけましょう。法則を見つける際はカタカナ発音で良いですが、発話する時はフォニックスなどでしっかり練習しましょう。
次は音の消失です。音の消失は「破裂音(p,b,k,g,t,d)+子音」で破裂音が消える現象です。全ての単語をきっちり発音していたら、早く話せないため起こります。文末の破裂音自体が消滅することもあります。
音の消失の例
- 破裂音+ 子音:good time[gú(d)táim]「グッドゥ タィム → グッタィム」
- 文末の破裂音:did it.[dídí(t)]「ディドゥ イットゥ → ディディッ」
3つ目はフラップ化です。tが母音で挟まれていると、ラ行のように音が変化する現象です。最初は下記のように思い切って日本語のカタカナにすると、音を認識できるようになります。
フラップ化の例
- watter→ウォラ
- letter→レラ
最後は弱形で、機能語が非常に弱く発音される現象です。実は英語の品詞は「内容語」と「機能語」に分かれています。内容語は文字通り文の中で大切な内容を伝える単語となっています。一般的に内容語は大きく、はっきりと長く発音され、機能語は小さく、速く、短く発音される特徴があります。
- 内容語:名詞、動詞、形容詞、副詞、指示・所有代名詞、疑問詞、再帰代名詞
- 機能語:人称代名詞、助動詞、前置詞、冠詞、接続詞、関係代名詞
但し、上記の機能語も文脈によって強く発音される場合もあります。例えば、機能語の人称代名詞のhimを例文を使って考えてみましょう。弱形になる場合のhimは、Yesで相手に内容が伝わっているので、himは機能的な役割しか担っていません。一方で、強形のhimは、まさに誰が好きなのかを示す内容的な役割を担っているので、強く発話されます。
弱形になる場合
- Do you like your teacher?
- Yes, I like him.
強形になる場合
- Who do you like?
- I like him.
学校の英語教育では中々弱形を学習する機会がなく、弱形のルールを習得すればヒアリングの力が大きく向上すると言われています。
シャドーイング
シャドーイングとは
シャドーイング(Shadowing)とは英語の音声を聞きながら、その音を真似して発音するトレーニングです。同時通訳の訓練にもよく使われているメソッドです。シャドーイングのポイントは、聞こえてくる音声のすぐ後ろを影(shadow)のように追いかけることです。
シャドーイングは、第二言語習得研究の立場からも高い評価を得ています。特に、言語知識の自動化を促進する効果があると言われています。それだけではなく、短期記憶の定着を促す効果も期待できるようです。第二言語習得研究などでその高い効果が認められ、一般の英語学習者にも急速に広がっています。
シャドーイングの目的は音声知覚のために使用されるリソースをできるだけ減らして、意味理解をさせる余裕を増やしてあげることです。そのために以下のステップで徐々に脳への負荷を高めるトレーニングを実践しましょう。
シャドーイングの実践方法
英語の語順に対応
シャドーイングしたい教材が見つかったら、まずは内容だけを意識して音読します。意味を理解しながら声を出して読んでいきます。英文を音読しながら意味を同時に理解するためには、英文を前から理解をする必要があります。英文精読の癖があると、後ろから訳してしまうので注意が必要です。音声を聞きながら、分からない単語があったらこの段階で調べましょう。
次は、音声を聞いて意味の切れ目・音声の空白のタイミングにスラッシュ(/)を入れて読んでみます。音声と教材を照らし合わせながら、/で区切られたかたまり単位で意味をイメージしながら読んでいきます。余裕があれば、ぶつぶつ声に出して次のコンテンツシャドーイングの練習もしましょう。
最後のステップは、コンテンツ・シャドーイング(内容重視のシャドーイング)です。ここでは、内容だけを意識して音声の1〜2後後ろを追いかけるように発話していきます。できるだけ英文は見ないようにするのがポイントです。
英語の語順に慣れる3ステップ
- コンテンツ音読(内容を理解しながら音読)
- スラッシュ・リーディング(意味のカタマリを区切って読む)
- コンテンツ・シャドーイング
英語の音の獲得
コンテンツ・シャドーイングができるようになったら、今度は発音に意識を移します。できるだけ、発話者になりきって音源を再現できるように音読していきます。リズムやイントネーションだけではなく、音声変化も真似できるように何度も繰り返し音読をしていきましょう。
プロソディ・音読ができるようになったら、音声を再現するプロソディ・シャドーインに移ります。音声の1〜2後後ろを追いかけるように発話するのは、コンテンツシャドーイングと変わりませんが、ここでは音声を忠実に再現しながら追っかけていきます。
英語の音を獲得するための2ステップ
- プロソディ・音読(リズムを理解しながら音読)
- プロソディ・シャドーイング
英語を英語のまま理解
最後の仕上げとして、コンテンツシャドーイングとプロソディシャドーイングができるようになったら、事前に英文を読まないでシャドーイングに挑戦してみましょう。初見の素材を使用することで、より脳に負荷がかかります。注意点としては、全く理解できない音声ではなく、なんとか理解できる素材を選びましょう。
シャドーイングについてはこちらで解説↓↓
多読
英語を英語のまま左から右に語順通りに理解するために、多読が効果的です。英文を前から理解することを心がけて、返り読みは避けましょう。英語の語順の脳回路を強化するだけではなく、英語の総合力の強化にもなります。辞書に頼らなくても、内容をイメージできる本を選びましょう。
Graded Readers(英語学習者用に作成された段階的な読み物)は文法や語彙の制限をしっかり守って編集されているので、上記のように自分のレベルに合った本を見つけることができます。Graded ReadersははOxford、Pearson、Cambridge等から出版されています。
多読についてはこちらで解説↓↓
多聴
多聴は、気軽に自分が興味の持てる音声をたくさん聴くのがポイントです。なんとなく内容が追える素材であれば大丈夫です。多読よりも少しリラックスして、リズムやイントネーションを楽しむ態度でも大丈夫です。憧れの俳優や歌手のインタビューやラジオ(ポッドキャスト)がおすすめです。
言語学者の白井教授は、以下3つの理由から、自分の好きな分野の音声を徹底的にインプットすることをすすめています。
- 動機づけ:自分の興味分野だと、動機づけにつながる。
- 背景知識:背景知識でカバーしやすく、内容理科につながる。
- 単語習得:似たような単語が何回も出てきて、単語習得が進む。
おすすめのポッドキャストを紹介↓↓
英語を話すためのトレーニング
スピーチプロダクションモデル
英語スピーキングの難しさを知る手がかりになるのがスピーキングモデルです。このモデルは元々は母語をのスピーキングのプロセスを説明するために考案されたものですが、第二言語を話すプロセスに示唆を与えてくれます。スピーチ・プロダクションモデルは、私たちのアウトプットのプロセスを3段階のステップに分解したモデルです。
英語スピーキングについて解説↓↓
まずは概念化装置で、自分の伝えたい想いを形成していきます。例えば、今お腹がすいているなと感じたとしたら、「お腹が空いたなと」心の声が生まれてきます。二つ目の形式化は、「お腹が空いたなと」という心の声を言葉にのせる作業です。空腹という単語を探して「hungry」という単語を頭の中の辞書から見つけると同時に、音韻・音声情報も作成します。最後の調音化は、実際に「I am hungry」と発話するプロセスを指します。
形式化
- 語彙・文法コード化:検索した語彙情報から語句を組み立てる
- 形態・音韻コード化:アクセントや音韻知識を活用
- 音声コード化:舌の位置、口の使い方、声帯の振動情報を作成
母語を話す際はこれらの複雑なプロセスは自動的に処理されますが、第二言語を話す際は各ステップを意識して実行する必要があるため、スムーズな会話が難しくなります。
U字型発達曲線
アウトプットの役割を考える際に、参考になるのがU字型発達曲線と呼ばれるものです。U字型発達曲線は、言語の創造的な使用がどのようなプロセスで実現されるかの示唆を与えてくれます。
U字型発達曲線
- 第1段階:言語をそのまま暗記
- 第2段階:規則や法則を抽出
- 第3段階:創造的に言語使用
第1段階では、目標となる言語を暗記します。正確性は高いですが、表現が限定的な状態となっています。第2段階では正確性は下がりますが、トライ&エラーを通して一般的な法則を抽出できるようになります。最後の第三段階では、あらゆる状況で柔軟な言語使用が可能になっていきます。
概念→形式化(文法別)
算出トレーニングの下準備として、文法別に自分の気持ち・行動・考えなどの概念をあらかじめ英語に形式化していきます。ここで、文法項目的に整理するのも目的となっているので、自分がしっかり理解した内容だけを整理していきます。シンプルイングリッシュを心がけ、複雑な構文や表現はできるだけ避けましょう。
具体的にはノートやルーズリーフの左側に日本語訳、右側に英訳を書いて行きましょう。文法がしっかり定着しているのか、パターンプラクティスの要領で知識を定着させていきます。
概念→形式化(場面別)
今度はシチュエーション別に日本語と英語の対照訳を作っていきます。文法別に整理した内容を活用することで、より文法の知識が深い知識に転換されていきます。まずは、自己紹介、家族、趣味など身の回りのことを表現する事をおすすめします。
慣れてきたら、大きな概念である「自己紹介」・「家族」・「趣味」を頭に思い浮かべて、スモールトークの練習もしてみましょう。うる覚えの表現が出てきたらもう一度覚え直しましょう。「こんな事も伝えたい」とか気づきが生まれたら、どんどん表現を追加していきましょう。
算出トレーニング
15/45 exersise
特定のトピックの内容を15秒で考えて45秒で話す15/45トレーニングです。学習者は十分なプランニングができない状態で、アウトプットすることが求められます。このような練習を繰り返せば、既述した「概念化」(言いたいことのコンセプト・概念を生成する)から「形式化」(生成したコンセプト・概念を言語化する)のプロセスが強化されると言われています。IELTSやTOEFLのスピーキングテストを練習しても同様の効果が得られます。
注意すべきポイントは15秒の時間を日本語→英語の英作文の時間に費やさないように、しっかり概念化の時間にあてることです。大切なのはアイデアの構築と発話の流れをセットで実行することなので、45秒という時間が短すぎると感じれば90→60→45秒と段階的に短くしても大丈夫です。
4/3/2 トレーニング
「4/3/2」トレーニングとは4分、3分、2分と、英語で話す時間を短くしながら、同じテーマのスピーチを3回繰り返すトレーニングです。第二言語習得の専門家であるポール・ネーション氏が考案しました。少しずつ時間を減らしていくことで、不必要な説明が省かれていきます。
「4/3/2」トレーニングの手順
- テーマについて考え、適宜単語をメモして話す準備をする
- 4分間話し続ける
- 4分間で話した内容を、今度は3分で話し終える
- 最後に2分で同じ話をする。
タスク・リピティション(task repetition)は、知識の統合化を促す有効な手段だと認められており、特に同じ種類のタスクで中身(情報)を変える方法(procerural repetion)は会話の正確さの程度や言語形式への注意が高まることが過去の研究で明らかになっています。下記の調査では第二外国語学習者の流暢さ(1秒ごとの音節の数)が向上する成果が出ています。
引用:TASK REPETITION AND SECOND LANGUAGE SPEECH PROCESSING
また、別の研究ではタスク・リピティションをすると、言語形式に意識を向ける余裕が生まれるという報告も出ています。
引用:Two Cases from an English for Business Purposes Program
英語学習ロードマップ
Phase1 学習方略に基づく学習計画
最初のフェーズでは、学習方略に基づく学習計画を立てます。まずは、一日の行動を振り返りすきま学習時間を確保します。「いつ・どこで・何を」をあらかじめ決めて、学習内容を迷わないようにすることが大切です。
↓↓ こちらでPhase1について解説しています
実際の学習に入る前に自分の認知特性を知るのも有効です。下記のサイトで「本田40式認知特性テスト」を受けることができ、エクセルシートのアンケートに答えると自分認知タイプを診断することができます。
6つの認知タイプ
- カメラタイプ:写真や絵など二次元で考える
- 3Dタイプ:空間や時間軸を使い三次元で考える
- ファンタジータイプ:文字や文章を映像化して考える
- 辞書タイプ:文字や文章を図式化して考える
- ラジオタイプ:文字や文章を音として情報処理する
- サウンドタイプ:音色や音階など音楽的イメージを脳に入力する
例えば、診断結果が1 と2の人は英単語学習する際にイラストや絵を書いたり、何かの空間と一緒に暗記するとより効果的です。3の人は英単語のイメージを思い浮かべながら記憶すると忘れにくくなるでしょう。4の人は英単語を自分なりに図式で整理するように、自分なりの英単語辞書を作るのがおすすめです。5と6の人は積極的に音声を通して英単語を覚えることで、自然と英単語が定着していく傾向があります。
引用:本田40式認知特性テスト 診断ツール 診断結果
学習方略はこちらで解説↓↓
チェックリスト
✔️一日の行動を振り返りすきま時間を確保した。
✔️「いつ・どこで・何を」学習するか決めた。
✔️認知スタイル・学習スタイル診断を受けた。
✔️項目別の学習スケージュールを立てた。
Phase2 発音と単語で気づきを促す
フェーズ2 からいよいよ、本格的な英語を話すための学習が始まります。すぐに英語を話す練習をするのではなく、単語と発音の学習をしっかり確保しましょう。基本単語1,000〜2,000を正しい発音と一緒に、ラベリングするのがポイントです。英単語の覚え方は、遅延効果とテスト効果を上手に活用して、効率よく暗記していきます。
↓↓ こちらでPhase2について解説しています
チェックリスト
✔️英語の発音トレーニングを取り入れた。
✔️英語の音節を意識して発音できた。
✔️発音と一緒に単語を覚えることができた。
✔️遅延効果とテスト効果を活用して、効率よく語彙学習をできた。
Phase3 浅い理解を深い理解に転換
フェーズ3は文法中心の学習を心がけましょう。文法の基礎項目を語順、動詞中心、イメージスキーマを意識して一気に学習をしましょう。既習した英単語が有機的につながるようになると、相乗効果が期待できます。最後の仕上げとしては、パターンプラクティスで文法の知識を定着化させていきます。
↓↓ こちらでPhase3について解説しています
チェックリスト
✔️語順や動詞を意識して英文法を学習できた。
✔️イメージスキーマを活用することができた。
✔️英単語の使われ方を意識して、英文法に取り入れることができた。
✔️パターンプラクティスで文法の知識を定着化させることができた。
Phase4 英語の化石化を防ぐ内在化
↓↓ こちらでPhase4について解説しています
ある特定の言語項目や規則が誤って習得され、その誤用がそのまま定着してしまうと化石化(fossilization)が起こってしまいます。例えば、英語が得意ではない状態で、カタコトの英語を話して相手が理解してしまったら、その表現をずっと使ってしまう恐れがあります。
それを防ぐためには、「この表現で合っていたのか?」とか、「この表現で伝わるのか?」と相手にぶつける必要があります。オンライン英会話などで、英語を話す機会があれば積極的に覚えた表現を使ってみましょう。このフェーズでは自主的なインタラクションが内在化を促進させます。
もし、英会話をする機会がなくてもディクトグロスというトレーニングを実施することで化石化を防ぐことができます。また、英語のドラマのスクリプトを観察することでも「この表現ってこういう時に使うのか」という、仮説検証を擬似的に体験することもできます。
ディクトグロスはこちらで解説↓↓
チェックリスト
✔️積極的なインタラクションを心がけることができた。
✔️英語のドラマや映画などで、仮説検証をすることができた。
Phase5 英語の自動化で統合を刺激
↓↓ こちらでPhase5 part1 について解説しています
↓↓ こちらでPhase5 part2について解説しています
フェーズ5の段階では、すでに紹介した英語を聞くトレーニングと話すトレーニングを実践していきます。ここで終了ではなく、振り返りや学習計画の見直しが必要になってきます。学習方針の転換や、単語・文法・発音の弱点が見えてくるはずです。フェーズ1からフェーズ5を何度も回すことで、必ず英語は話せるようになります。
知識の自動化について解説↓↓
チェックリスト
✔️英語のリズムと音声変化のルールを学ぶことができた。
✔️6つのステップでシャドーイングを実践することができた。
✔️多読を始めることができた。
✔️楽しく多聴を取り入れることができた。
✔️概念→形式化の練習を文法別にできた。
✔️概念→形式化の練習を場面別にできた。
✔️15/45exerciseや4/3/2トレーニングができた。
第二言語習得研究と行動科学に基づく英語学習ロードマップは独学でも十分実行可能で、ブログの内容を実践すれば必ず成果が出てきます。但し、自分の学習成果をモニターしてくれたり、フィードバックしてくれる方がいるとより成果が高まるのも事実です。独学では慣れないうちはモチベーションの維持が難しいかもしれません。そこで外部サービスを活用するのも1つの手です。
第二言語習得論の第一人者、ケース・ウェスタン・リザーブ大学認知科学科教授の白井氏が社外取締役就任されているスパトレでは第二言語習得論・認知心理学・脳科学の研究結果を活用し、確実に英語力を身に付けることを目的とした英語トレーニングサービスを提供しています。
スパトレの特徴
- 実力に合わせた最適な学習方法を提案
- 第二言語習得論に基づく学習体系
- プロのトレーナーがあなたを最大限サポート
- 成果を最短で得るための徹底した予習・復習
スパトレでは、大量のインプットと少量のアウトプットを学習の基本とし、英会話レッスンではなく、徹底した自習を重視。また、日本人サポートや外国人トレーナーによる継続的なサポートにより、成果にこだわる英語トレーニングを提供しています。第二言語習得理論をバックに急成長したい場合は上記のようなサービスも活用すると良いでしょう。
参考
廣森友人(2015),「英語学習のメカニズム―第二言語習得研究にもとづく効果的な勉強法」, 大修館書店
StudyHacker ENGLISH COMPANY(2021),「マンガでわかる 最速最短! 英語学習マップ 新装増補版」, ベネッセコーポレーション
馬場今日子・新多了(2016), 「はじめての 第二言語習得論講義-英語学習への複眼的アプローチ」, 大修館書店
岡田 祥吾(2019), 「英語学習2.0」, KADOKAWA
門田修平(2018), 「外国語を話せるようになるしくみ シャドーイングが言語習得を促進するメカニズム」, サイエンス・アイ書店
田浦秀幸(2016), 「科学的トレーニングで英語力は伸ばせる」, マイナビ新書
鈴木孝明・白畑知彦(2012), 「ことばの習得 母語獲得と第二言語習得」, くろしお出版
白井恭弘(2008), 「外国語学習の科学 第二言語習得論とは何か」, 岩波新書
卯城祐司(2009), 「英語リーディングの科学 読めたつもりの謎を解く」, 研究社
Culturecog:Image Schemas: The Physics of Cultural Knowledge?
Cambridge University Press | TASK REPETITION AND SECOND LANGUAGE SPEECH PROCESSING
Journal of Inclusive Education | 英語学習に特異的な困難を示す生徒に対する 英語指導法の検討