はじめに
人生の幸福度を上げるにはどうすれば良いでしょうか。実は年齢と幸福度には関連性があります。私たちの人生は決してフラットではなく山あり、谷ありの人生だと言えるでしょう。最近の研究で明らかになってきたことは、人々の人生をならしてみると私たちの幸福度はUを描いて推移していきます。なぜUを描くのか?人生の底に落ちている時はどうすれば良いのか?どんなに辛くても、人生は必ず好転する、そう思えば少しは救われるかもしれません。
負の感情との向き合い方はこちら↓↓
幸せになる習慣を実践するにはこちら↓↓
ポジティブ心理学を勉強したい方はこちら↓↓
参考文献
U字型の幸福度グラフ
加齢と幸福の関係性についてはこれまで数多くの研究が実施されてきました。20年以上の前の研究では年齢と幸せの関連性が無いという説が信じられていました。人生の幸福度をグラフにした研究は数多くありますが、近年はU字型を描くことが徐々に明らかになっています。
アメリカのダートマス大学のデービッド・ブランチフラワー教授は、世界132カ国における幸福感と年齢の関係を調べました。その結果、人生における幸福感が最も薄れるのは先進国で47.2歳、発展途上国で48.2歳となりました。
ブランチフラワー氏は「賃金の多さや寿命の長さとは無関係に、幸福度はU字カーブを描く」と指摘し、中年層を過ぎて高齢に入ると幸福度は徐々に回復すると主張しています。中年層の幸福感が小さいのは、仕事の負担の重さや健康面での不安などが背景にあるとみられています。
結婚と幸福度
デービッド・ブランチフラワー教授の研究によると、イギリスでは既婚者は単身者と比べ、幸福感が大きいという結果も出ています。下記のグラフを見ると、既婚者はU字型のカーブがゆるやかになっています。
引用:NBER WORKING PAPER SERIES IS HAPPINESS U-SHAPED EVERYWHERE? AGE AND SUBJECTIVE WELL-BEING IN 132 COUNTRIES(David G. Blanchflower,2020)
別の研究を見てみると、既婚者と未婚者の幸福度の差が中年あたり(46〜55歳)で顕著になることが分かります。ただし、その後は差が少なくなり86歳以上では逆転しています。
引用:springer How’s Life at Home? New Evidence on Marriage and the Set Point for Happiness(Shawn Grover & John F. Helliwell,2019)
地域ごとのカーブ
地域ごとの幸福度グラフを比較してみると、地域の特性があらわれています。デンマークは全ての年齢を通して幸福度が安定しています。一方で、イギリスは幸福度の幅が広く中年における下落も顕著となっています。
スペインは、人生の幸福度のピークは青年期となり、中年層を経て少し回復していきます。ポルトガルは、他国とは異なるやや右肩下がりの直線を描いています。
引用:NBER WORKING PAPER SERIES IS HAPPINESS U-SHAPED EVERYWHERE? AGE AND SUBJECTIVE WELL-BEING IN 132 COUNTRIES(David G. Blanchflower,2020)
年代別の様々な感情
ところで、私たちは歳を重ねながらどのような負の感情と向き合っていくのでしょうか?下記のグラフは6つのネガティブ感情が年齢ごとにどのように変化するのかを示しています。右肩上がりなのはSadness(悲しみ)、Pain(痛み)、Depression(憂鬱)、warry(心配)の4つです。一方で、Anger(怒り)とStress(ストレス)は逆U字型のカーブを描いいます。
もしかしたら、私たちを中年の危機をむかえてしまう原因はAnger(怒り)とStress(ストレス)にあるのかもしれません。この二つの感情と上手に向き合うことができれば、人生の幸福度のグラフをより上向きに描くことができるかもしれません。
引用:Researchgate HOW DOES SUBJECTIVE WELL-BEING VARY AROUND THEWORLD BY GENDER AND AGE?(NICOLE FORTIN, JOHN F. HELLIWELL AND SHUN WANG,2015)
日本の幸福度のグラフ
日本の幸福度はどうでしょうか。内閣府は毎年、満足度・生活の質に対するアンケートを実施しています。日本の幸福度のグラフはやや他国とは異なるようです。欧米諸国よりも遅れて幸福度が上がり、その上昇度も高くなっています。
引用:内閣府 満足度・生活の質に関する調査(2020)
U字型のカラクリ
「The Happiness Curve」の著者Jonathan Rauch氏は、なぜ50歳を過ぎると人生は好転していくのか明らかにしました。若い時は人生の満足度よりも期待が多いですが、50歳を過ぎると現状の満足度が期待を超えていきます。歳を重ねると「思ったよりは人生は幸せだな」と思えるようになるのでしょうか。
引用:The Happiness Curve: Why Life Gets Better After 50 by Jonathan Rauch
中年の危機の対処法
HEALの法則
程度の違いはありますが、中年にさしかかると人生における幸福度が下がってしまいます。人生で最も憂鬱な時期をどう乗り越えれば良いのでしょうか。神経心理学者のリック・ハンソン氏は幸せになれる脳をつくる「HEALの法則」を提案しています。
ハンソン氏によれば、私たちの脳には「ネガティビティ・バイアス」(物事をマイナスに捉える傾向)があり、ネガティブな気持ちになりやすい生き物だそうです。ネガティブなことがフォーカスされ、記憶に強く残ってしまいます。幸せな生活を送るために、「HEALの法則」が必要だと説いています。以下の4つのステップを踏むことで、より幸せになる脳を作り出すことができます。
HEALの法則
- ポジティブ体験する(Have a positive experience)
- 強化する(Enrich it)
- 吸収する(Absorb it)
- ネガティブ感情をポジティブにリンクさせる(Link)
「HEALの法則」はとてもシンプルで簡単です。自分が大切にしている人や、楽しかった経験を思い浮かべます。自分のそばにあるように強くイメージして、いつもより長く考えてみます。それらの経験や思い出が自分にどう影響を与えてきたのか、何をもたらしてくれたのか思い返してみます。
最後のネガティブ感情をポジティブにリンクさせるとはどういうことでしょうか。例えば、ポジティブ体験が家族との時間であれば、暖かさ、快適さ、などのイメージを前景に保ち、家族と離れている時間を薄暗く認識します。どんな忙しくても、暖かさ、快適さを常にイメージできれば家族との時間を大切にできるかもしれません。
良さをかみしめる3つの気づき
中年の危機を迎えると私たちは不安を抱え、焦燥感をいただいてしまいます。そのためには私たちはU字型のグラフを上にシフトさせる必要があります。そのために有効なのが良さをかみしめる脳を作る方法です。
ネガティブバイアスにかからないためには、「安心感」「満足感」「きづな」の三つを噛み締めるべきだと主張されています。ポジティブな出来事は、短期記憶を経て長期記憶に保存されることで記憶に定着されていくようです。ネガティブな感情は私たちが生存するために本能として一瞬で定着されていきます。
三つのきづき
- 「安心感」:今日は〜をして安心できたな
- 「満足感」:今日は〜をできて満足感を得ることができた
- 「絆」:今日は〜との絆を再認識できた
中年の危機は自分だけにやってくるものではなく、全ての人が経験することです。その倦怠感をまずは受け入れることです。決して悲観的になるのではなく、当然の気持ちとして納得することが大切です。(安心感・満足感)
中年の危機は一人では乗り切ることは難しいかもしれません。全ての人が経験すると知っていても悩みや苦しみは一人では中々消化できないかもしれません。同世代に人と負の感情を共有することで気持ちが楽になるかもしれません。自分よりひとまわり年上の世代は、中年の危機を経験してそれを乗り越えてきています。その人たちと繋がって、話を聞くことで安心感を得られるかもしれません。地域のコミュニティやグループに積極的に入って活動するのも良いでしょう。(絆)
不幸せの公式とは
幸せの公式ではなく、不幸せの公式を考えた人がいます。不幸せは自分の人生の期待から実際の現実を引いた数字だそうです。したがって自分の人生の期待を下げて、現実の幸福度を高まることができれば、不幸せの数値を下げることができます。
不幸せの公式
U(Unhappiness)=I(Image)ーR (Reality)
私達の理想は様々なフィクションに毎日触れることで無限に膨れ上がっていきます。自分の現在地を無視して、時に現実を覆ってしまうこともあります。不幸せの公式を少し意識すれば、「よし!現実と向き合おう。」と冷静に足元を確認できるかもしれません。
U字型の幸福度グラフをシフト
では、U字型の幸福度グラフを上にシフトするためにどうすれば良いでしょうか?矛盾しているようですが、幸せになりたいと強く思ってしまうと逆に幸福度を下げてしまうという研究もあるようです。身の回りの大切にしていることに注意を向けて、自分の気持ちと向き合うのが大切なようです。
引用:THE PARADOXICAL EFFECTS OF PURSUING POSITIVE EMOTIONT(BRETT Q. FORD & IRIS B. MAUSS,2013)
U字型の幸福度グラフを上昇させるには過度な期待をひかえること。自分に安心感、満足感、つながりを感じさせる大切な人や思い出を想起しましょう。忙しやストレスで押しつぶされそうになった時こそ、自分にとって大切なものを振り返る時間を大切にしていきましょう。
参考
内閣府 |「満足度・生活の質に関する調査」に関する第4次報告書
Smartliving360| The little known happiness curve
TEDx Talks|Hardwiring happiness: Dr. Rick Hanson at TEDxMarin 2013
PragerU | Happiness Equation: U = I - R