幸せを科学する学問・生き方のヒント ポジティブ心理学とは?  

はじめに

虹の写真

 

ポジティブ心理学とは、それまでの臨床心理学などが心の病に対処するためのものだったのに対して、「どうすればもっと幸せになれるのか?」を追求する学問です。私はある講義をきいて、かなり実用的な学問ではないか!もっと学びたくなりました。

 

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臨床心理学は英語はClinical Psychologyですので、鬱病の人や、心に傷を負っている人の治癒・回復を目指します。対象者は心に問題を抱えている人です。一方、ポジティブ心理学は、普通の人がより良い人生を送るための学問ですので、あらゆる人に効果があります。

 

ポジティブ心理学は決してスピリチュアルなものではありません。アンケート調査などを通して、ある行動・認識・習慣が幸せとどう相関しているのか知ろうとする「幸せを科学する学問」と言えるでしょう。例えば、

 

○どのように不安やストレスに対処できるのか

○どうやって怒りの感情を処理するのか

○どうすれば幸せになれるのか

 

上記の答えを示唆してくれるのが「ポジティブ心理学」の役割でもあります。今回は前野氏が書いた「実践 ポジティブ心理学」を参考に、ポジティブ心理学とはどのようなものか解説していきたいと思います。

 

ポジティブ心理学とは

ポジティブとネガティブのバランス

ポジティブ心理学はネガティブな感情を押し殺そうとする学問ではありません。ネガティブな感情とポジティブな感情、両方を認めています。たとえば、つらいことがあって落ち込んでいる自分に対して「落ち込んでいるなんて心が弱いからだ」とか自分を責めるようなことはしません。ポジティブ心理学は、ありのままの自分を認める姿勢をもっています。

 

さて、ポジティブとネガティブのバランスはどれぐらいが良いでしょうか?差し引きでポジティブの感情が上回る必要があるので、当然ポジティブ>ネガティブだと予想がつくかもしれません。ある研究結果によれば、ポジティブとネガティブの比率が3:1だと幸せな人生をおくれるそうです。

 

心が折れにくい人

心が折れにくい人と心が折れやすい人の違いはなんでしょうか?ポジティブ心理学を学ぶうえで大切なキーワードに「レジリエンス」という言葉があります。

 

レジリエンス研究の第一人者であるペンシルベニア大学ポジティブ心理学センターのカレン・ライビッチ博士は、レジリエンスとは「逆境から素早く立ち直り、成長する能力」と定義しています。日本では、打たれ強いこと、折れない心、心のしなやかさ、といった表現が使われることもあります。

 

 レジリエンスを高めるためには、心の柔軟性が必要です。厳しい状況に直面しても、負の側面だけではなく、正の面を見出すことができる人が困難を乗り越えることができます。レジリエンスは先天的なものではなく、誰でも学習可能なスキルのようです。具体的な高め方は、「幸せの条件」で解説します。

 

 

短期的な幸せと長期的な幸せ

幸せにはどんな種類があるでしょうか?幸せは一瞬の喜びだとイメージする人もいるかもしれません。一方で、長い期間に渡って続く喜びだと考える人もいます。ポジティブ心理学では短期的な幸せ(フロー・ゾーン)と長期的な幸せに分けられています。

 

フローとは非常に生産性の上がる状態のようです。例えば、仕事をイメージしてみてください。タスクの困難さと自分の能力のバランスがとれた時に、仕事に没頭できます。簡単すぎても難しすぎてもだめなのです。

 

私の勝手な考えですが、日々の一瞬の喜びの積み重ねが幸せだと思います。仕事に没頭したり、映画を観て感動したり、好きな趣味に熱中したり。時間を忘れている時こそ、幸せを感じているはずです。

 

今ここに集中する

ポジティブ心理学では、今ここに集中することが幸せにつながると考えます。過去の出来事を後悔したり、将来に対して不安を抱きすぎるのは良くありません。そのような状態は「マインドレス」な状態と言われます。

 

では、「マインドフル」な状態=今ここに集中するにはどうすればよいのでしょうか?マインドフルネスの代表は瞑想です。瞑想は呼吸に集中することで、今に集中することができます。今に集中することで、頭がすっきりします。

 

別に瞑想にこだわる必要はありません。とにかく、「明日のテストどうしよう」と不安を抱えている「マインドレス」の状態から「マインドフル」へもっていけば良いのです。実は、動作に集中する、食べることに集中する、とにかく一定の型に集中することで今を意識することができます。

 

フローは無意識に今に集中するのに対し、瞑想などは意識的に今に集中するトレーニングと言えます。

 

www.lifehacker.jp

 

 

楽観主義を育てる

ポジティブ心理学創始者であるマーティン・セリグマン教授は物事を楽観的に捉えるのか、悲観的に捉えるかによって人生の成功や幸せに差が出ると主張しました。では、その差がでる要因とはなんでしょうか。実は良い出来事が起きたとき、楽観主義者と悲観主義者では、説明の方法が違うようです。

 

○楽観的説明スタイル

内的(自分自身に原因がある)

永続的(これからも長く続く)

普遍的(あらゆる場合に作用する)

 

楽観的説明スタイルの人は何か良いことが起きたら、まず自分のおかげで成功したと判断します。その良いことはこれからも同様に続き、他の事象にもあてはまると解釈します。一方で、悲観的説明スタイルの人はどうでしょうか。外的な要因と良いことを結びつけてしまいがちです。さらに、その良いことは今だけのことで、この出来事に限ったことだと説明します。

 

○悲観的説明スタイル

外的(他者に原因がある)

一時的(今だけのこと)

限定的(今の出来事だけに作用する)

 

同じ良いことが起きても説明の仕方が異なるだけで、思考が全くことなります。ある研究によれば、楽観的説明スタイルを持つ人が営業の仕事で高いパフォーマンスを発揮したという結果も出ているようです。

 

では、どうやって悲観主義者が楽観主義者になれば良いのでしょうか。説明の方法を逆にすれば良いのです。詳しく知りたい方はぜひ、「オプティミストはなぜ成功するか」をチェックしてみてください。

 

人とのつながりは幸せにつながる?

「人とのつながりは幸せにつながる」という概念は、ポジティブ心理学を学ぶ上でとても大切なようです。特に、現代はSNSなどで人とのつながり方が劇的に変化していいます。その激動の時代の中で、人とのつながり方が問われているようです。

 

たくさん人と繋がれば人は幸せになれるなか。実態はそうではないようです。一人だと孤独を感じてしまいますし、多すぎてもだめなようです。人間はわがままな生き物かもしれません。

 

daigoblog.jp

 

「コミュニティ」も私たちの幸福度に関わっています。ソーシャル・キャピタルは現代では街づくりの重要な概念ですが、ほどよいつながりが地域の自殺率を下げたという実証研究もあります。

 

○PERMA

Positive Emotion(ポジティブな感情)

Engagement(思い入れ・没頭)

Relationship(関係性・つながり)

Meaning(意味・意義)

Achieving(達成)

 

www.cocoro-quest.net

 

 

レジリエンスを高める

もう一つのアプローチは、レジリエンスを高めることです。ポジティブ心理学実践者のイローナ・ボニウェルは認知行動療法をベースに「SPARKレジリエンス・プログラム」を開発しました。「SPARKレジリエンス・プログラム」はある出来事に対して、自分がどう捉えて、反応するのか教えてくれます。

 

SPARKレジリエンス・プログラム

○Situation(出来事そのもの)

○Perception(出来事に対する捉え方) 

「心に潜む7種類のオウム」

 批判(他人を批判しがちで、白黒付けたいタイプ)

 正義(自分の意見を曲げずに、~すべきだと思うタイプ)

 負け(自分と他人を比較して落ち込むタイプ)

 心配(将来に対して悲観的思うタイプ)

 謝り(問題が起きると自分を責めるタイプ)

 無関心(無関心で面倒なことを避けるタイプ)

○Auto Pilot(自動的に生じてくる感情)

○Reaction(反応・行動)

○Knowledge(捉え方のパターンとそれに伴う感情・行動についての学び)

 

特に、自分が心の中にどんな種類のオウムを飼っているのかを。それが自分の特定の反応・行動につながっています。心の中のオウムを意識することで、自分の捉え方のパターンとそれに伴う感情・行動を学ぶことができます。

 

では、具体的に「レジリエンス」を高めるためにどうすれば良いでしょうか。「4つのレジリエンス・マッスル」というトレーニングがあります。

 

○「4つのレジリエンス・マッスル」

I can(私は~の困難を乗り越えることができる)

I have(私には応援してくれる友達や家族がいる)

I like(私は~の楽しかった思い出・好きなことがある)

I am(私は~の強みがある・能力がある)

 

困難な状況でも、「自分には困難を乗り越えた経験がたくさんあって、応援してくれる友人や大切な人もいる、楽しかった思い出も数多くあり、自分にはすごい強みがある」と思えば、前に進むことができます。日頃から、これらをノートなどに書き出しておけば、心の支えになります。

 

 

実践ポジティブ心理学

「Three good things」 

「実践ポジティブ心理学」ということで、いくつかの代表的な実践を紹介していきます。ポジティブ心理学の分野では有識者の方が考えた、幸せになれる実践が数多くあります。

 

一番有名なのが、「Three good things」です。良かった出来事を3つ挙げて、書き出していくだけの簡単な実践です。なぜこのような単純な方法が効果的なのでしょうか。私たちは悪い出来事をよく覚えていて、良かった出来事を忘れがちです。良い出来事に目を向ける、認知を変えることができるのです。

 

ggia.berkeley.edu

 

「感謝の日記」

「感謝の効能」という言葉がありますが、感謝はされる人だけでなく、する人も幸せになります。以下も参考にしてください。

 

www.sunafuki.com

 

yeey.co

 

オススメコンテンツ

動画

これまでの病理モデルでは、心理学は人を治療しようとする態度でした

ポジティブ心理学は人の長所を伸ばす、普通の人をもっと幸せにする

人生の生きがいについての科学

自分の可能性が広がる23分間です

www.youtube.com

 

あなたは幸せになれる

少しの行動の変化が大きな違いを生む

勇気をもらえる動画です

www.youtube.com

 

「今まさに呼吸をしている自分」を阻む

「罪悪感」「劣等感」「不安感」

www.youtube.com

 

 

ポッドキャスト

日常の生活の中で「ポジティブ心理学」を実践したい、最新の研究成果を知りたいと思う方は3つのポッドキャストを購読してみてください。

Live Happy takes you on a journey to find your authentic happiness in life, at work and at home through inspiring stories and hands-on tips rooted in the science of positive psychology.

www.livehappy.com

 

Through articles, videos, quizzes, and podcasts, we bridge the gap between scientific journals and people’s daily lives, particularly for parents, educators, business leaders, and health care professionals. 

greatergood.berkeley.edu

 

On her popular website, she reports on her daily adventures in the pursuit of happiness and good habits. Millions of people read her posts each year. “I’ve become a bit of a happiness bully,” she confessed.

gretchenrubin.com