はじめに
今回は中国語の話し方を紹介します。私がどうやって中国語を身につけたのか、第二言語習得研究を活かした中国語学習ロードマップを解説していきます。ぜひ注目されている中国語をマスターしてキャリアを広げていきましょう。
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第二言語習得研究で中国語を完全習得
第二言語習得研究とは
第二言語習得(SLA:Second Language Acquisition)とは、人間が母語以外の第二言語を習得するプロセスを科学的に解明する学問のことを指します。 第二言語の習得プロセスには言語学だけではなく脳科学や心理学、社会学など幅広い領域が関わってくるため、第二言語習得研究は非常に学際的な領域となっています。
英語学習ロードマップの理論部分は割愛しながら、中国語学習向けのロードマップを今回はより具体的に、おすすめテキストを紹介しながら紹介していきます。理論的な部分は少し物足りない内容かもしれませんが、私の経験を織り交ぜながらより実践的な学習方法を解説していきます。
言語習得の仕組み
言語習得の4つのプロセス
第二言語習得研究においては、言語は4つのプロセスを通じて習得されると考えられています。インプットされたものが4つの段階を踏んでアウトプットされるという理論です。気づき→理解→内在化→統合を経て自動化された知識が中国語の会話には必要です。
全ての学習者が上手に4つのプロセスを経てアウトプットできているかは怪しく、大部分の人は理解の途中の段階にいます。浅い理解で止まっていると、中国語を話すことができません。これまで学習してきた浅い理解を深い理解に引き上げて、内在化していく必要があります。深く理解された文法や語彙の知識は運用能力が高く、中国語会話で実践的な知識となります。
言語知識の自動化
内在化された知識は、いよいよ最後の統合化のステップに入ります。知識が統合化されるためには、中国語知識の自動化が必要だと言われています。知識の自動化には様々な定義がなされていますが、私は下記のようなイメージで捉えています。シンプルですが、概念から形式への話すためのトレーニング、音声から意味理解への聞くためのトレーニングを繰り返すだけです。
上記のサイクルを何度も回すことで、冒頭でお伝えした相手の中国語の音声を聞いて瞬時に理解できる力が身に付き、相手の話を聞いて、それを理解して自分の考えを伝えることができるようになります。具体的な方法は次章以降で丁寧に説明していきます。中国語学習ロードップは新たに「フレーズ」学習を追加しています。
中国語の言語的特徴
形態論と語順
言語を形態論的に分類すると、孤立語・屈折語・膠着語に分類されます。中国語は孤立語に属していますので(※一概に孤立語として分類できないという説もあります)、他の屈折語や膠着語とは文の形態が異なります。孤立語は主体と対象を表す単語がありませんので、文構造はとてもシンプルです。ラテン語にある語形変化などはありません。
- 孤立語:単語の形は変化せず、並べる順番で文章が決まる(中国語、ベトナム語)
- 屈折語:単語の語形を変化させて文章を組み立てる(英語、ラテン語)
- 膠着語:「が」や「は」などをくっつけて文章を組み立てる(日本語、韓国語)
但し、日本語で言う「は」や「を」などの対象を決める助詞などがありませんので、語順が大切になります。語順が変わると別の意味になってしまうので注意が必要になります。中国語を学ぶ際には、主体と対象を意識しながら語順を的確に理解することが肝心です。
↓↓他の言語の特徴も解説しています
簡体字と繁体字
中国語には「簡体字」(simplified)と「繁体字」(traditional)があります。元々は「繁体字」が使用されていましたが、1950年代の漢字簡略化法案の成立により漢字の普及が求められ、より簡単に表記した簡体字が誕生しました。
2つの字体
実は日本は独自に漢字を簡略したため、「簡体字」と「繁体字」とも異なります。ですが、私達は漢字に慣れ親しんでいるためある程度意味を予測することができます。全く意味の異なる漢字や、形が大きく変わる漢字もありますが、およそ30%ほどは共通の意味をもっていると言われています。ちなみに「簡体字」と「繁体字」の読み方(発音)は基本的に同じで、後述するピンインも同じです。
「広」と「売」という漢字の比較
日本の町中にも簡体字と繁体字を駅や空港で見かけることがります。きっぷは簡体字では「车票」ですが、繁体字では「車票」となります。駅や空港では簡体字と繁体字で併記されていることが多いです。
なぜ簡体字と繁体字の区別が大切かと言えば、この2つの字を混同してしまうと異文化交流の妨げになってしまうからです。例えば、台湾では繁体字を使用していますので、彼らと交流する時に簡体字を使ってしまうと、交友関係が悪化する恐れがあります。私は携帯の言語に簡体字/繁体字を二つ入れて、必要に応じて使い分けています。
↓↓中国語の特徴について解説しています
四声
中国語の漢字、意味、ピンインを紹介していきましたが、最後は声調です。声調とは音のピッチです。実はこれを疎かにしてしまうと中国ネイティブの方に全く中国語が伝わらない事態に陥ってしまいます。中国語は別名で声調言語と言われているぐらい、音節の高低・上げ下げの調子が大切です。声調が違えば別の言葉になってしまうので、単語を覚える際には声調とセットにして覚えることが重要になります。
声調には第1声から4声まで4つの音声があります。声調にはドレミのように音が決まっているわけではありませんが、各人の声域で4つの声調を区別させます。中国ネイティブの人と話す時に最初は聞き取りにくいですが、徐々に聞き取れるようになるのは、相手の声調が脳の中で整理されるからです。
四声の特徴
- 第1声:高く平らにまっすぐ伸ばす。最後まで同じ高さを保つ。
- 第2声:一気に上げる。日本語の「エーッ」と驚いた時の調子。
- 第3声:低く抑える。
- 第4声:一気に下げる。カラスが「カー」と泣く時の調子。
参考:ニュープレス+中国語
拼音
ピンイン(中国語の名称である「拼音(pīn yīn)」から)とは中国語の漢字の読みかたをアルファベットで表したものです。日本語で言う「ふりがな」「よみがな」のようなもので、例えば「日本」のピンインは「rì běn」となります。そのままアルファベット読みをすれば「リーベン」ですが、「ri」は中国語独特の音声ですし、さきほど説明したアルファベットの上に付いている記号(四声)もマスターする必要があり複雑です。
上記のように初学者用のテキストには必ず漢字の上にピンインが併記されいます。ピンインは中国語の漢字と音声を結びつける大切な要素です。単語を覚える際には漢字の意味とピンインをセットで覚えることが大切です。
難易度
ディラ国際語学アカデミーがまとめた調査によると、中国語は比較的易しい言語Ⅱに分類されているようです。インドネシア語、韓国語に比べると難しいですが、中国語も比較的取得しやすい言語と言えるでしょう。
参考:ディラ国際語学アカデミー|言語によって、異なる効果的な研修方針
中国語が学びやすいと感じる最大の要因は、日本語と中国語には共通の漢字があるからでしょう。全く中国語を学習していない人でも、中国語の意味をなんとなくではありますが推測することができます。欧米諸国のアルファベットに慣れ親しんでいる人には真似できない能力です。
中国常用漢字は約2500字があり、日本の常用漢字も2136字があり、両方とも日常に使われる漢字の95%以上をカバーしています。中国語と日本語の常用漢字を比較すると、全く同じ漢字が約1683字で、部首簡体化された類似漢字が約400字あり、完全に簡体化された及び日本に使われていない漢字は約460字あります。
引用:長城学院 《漢字中国語》について
長城学院の調査によれば、私達が学校で既に学習した常用漢字2136字のうち、全く同じ漢字が1683字含まれているようです。中国語学習における語彙学習の負担がかなり軽減されることを意味しています。但し、前述したように同じ漢字でも意味が異なる場合や、字体の違いなどは注意する必要があります。
一方で、負の移転は日本語の文字表記や句読点をそのまま中国語にも応用してしまうことや、中国語の漢字を日本語の意味で理解してしまうことなどが挙げられます。後者の例は、中国語の「安心」は「気持ちが落ち着いている」という 意味で使われますが、「心配しなくてもよい」と言いたい場合は 基本的に「放心」という中国語が該当します。同じ漢字でも意味が異なる漢字があるので、注意する必要があります。
負の移転の例
- 日本語の文字表記をそのまま用いる。
- 句読点を日本語の習慣に従ってつける。
- 中国語にない表現をそのまま日本語から導入する。
- 中国語にあるが、日本語の意味や使い方で使用する。
- 日本語の表現を翻訳の過程を経て使用する。
- 日本語の構文で文を作ることによる文法成分の欠如
- 不必要な成分の生成
- 日本語の語順
- 前後関係や接続の問題
- 文章構成の問題
引用:目標言語から母語への逆向転移の実例 ― 日本語から中国語へ
発音
発音の落とし穴
中国語の発音学習は初学者にとって最も大切です。どんなに単語を覚えて、文法を覚えても正しい発音を身につけないと中国語ネイティブに全く伝わりません。そこで闇雲に発音を学習しても実は効率が悪いです。
発音は単独ではなく後述する四声を意識しながら、実際の単語を使って学習することです。単語を聞き分けるポイントが発音と四声だけになる時がありますので、日頃から発音を意識してインプットする事が大切です。
四声&拼音
すでに学習を始めている方は分かると思いますが、中国語で最初に学ぶのが四声です。四声は一番始めに学ぶものでありながら、学習者にとっては最難関だと言えます。実は中国出身者でも四声を間違えることがあるらしいので、初級者の方が四声を間違えてしまったとしても、全く気にすることはありません。むしろどんどん間違えながら、正しい四声を身につける事が大切です。
四声とは声調とも言われ、簡単に言えば音の上げ下げ、つまりイントネーションによって言葉を区別するものです。このように言うと難しく感じるかもしれませんが、それは四声と分類するものが日本語に無いからです。但し、日本語でも音の抑揚によって言葉を識別することはあります。
例えば「ハシ」という発音です。「ハシ」と始めのハにアクセントを置くと、食事をするときに使う「箸」という漢字がみなさんの頭の中に思い浮かぶと思います。逆に「ハシ」というように「シ」に力を入れると、「橋」や「端」の意味になります。このように、日本語の中には音の上げ下げによって使い分ける単語もあり、日本語の外国語話者も同様に学習しています。
おすすめ発音テキスト
後述する文法テキストでも十分中国語発音のトレーニングはできますが、口の形、息の出し方、声調などの要素をひとつひとつ意識しながら練習したい場合は「超低速メソッド中国語発音トレーニング」がおすすめです。
超低速メソッド中国語発音トレーニングの目次
- 第一課 単母音の練習
- 第二課 声調
- 第三課 子音の練習
- 第四課 二重母音の練習
- 第五課 er化発音の練習
- 第六課 三重母音の練習
- 第七課 難しい発音(巻舌音)
- 第八課 区別しにくい発音
- 第九課 文章の練習
中国語を初めて学習すると、音声のスピードが速く感じて聞き取れずに挫折しまいがちです。慣れてくると本当はそうではないですが初学者にとっては大きな壁になっています。この参考書は超スロー音声が収録されているので、気になった音を意識しながら徹底に練習する事ができます。困った時に、戻って来れる一冊としてはおすすめです。
単語学習
セルフ音読はNG
音読は語学学習には効果的ですが、間違った音読は化石化につながってしまいます。特に中国語は音声が最も重要なので、特に注意が必要です。ある特定の言語項目や規則が誤って習得され、その誤用がそのまま定着してしまうと化石化(fossilization)が起こってしまうと言われています。
また、第二言語習得研究者であるスウェイン氏は間違いの指摘は学習者のアウトプットを促進させると同時に、自分の中間言語に 「穴」 があることに気づかせることができると主張しています。(Swain, 1995, 2000)
↓↓第二言語の化石化についてはこちらで解説
おすすめ単語学習テキスト
キクタン中国語シリーズ
語学学習ではキクタンシリーズに大変お世話になっていますが、特に中国語の語彙力強化の際には重宝していました。中国語検定(中検)を目指す人にもおすすめで、必要な語彙を耳と目をフル活用して覚えることができます。音声もリズミカルで、脳に定着されやすい工夫がされています。
本書の4大特徴
- 過去の中検問題を徹底分析
- 耳と目をフル活用して覚える
- 1日16語、9週間のカリキュラム学習
- 生活スタイルで選べる3つのモード学習
起きてから寝るまで中国語単語帳
起きてから寝るまで単語帳シリーズは英語版が有名ですが、実は中国語バージョンも出版されています。私は英語版を個人的に愛用していたので、同じレイアウトとコンセプトで中国語単語を学習できるメリットがあったので、こちらを活用しました。咄嗟に身の回りの中語語が出ない時に辞書的にも活用できますし、コツコツ暗記学習にも活用できます。英語単語帳シリーズを持っている人は、本当におすすめです。
目次・シーン
- 第1章 朝(起床/寝室/洗面所/身だしなみ/朝食/食卓)
- 第2章 通勤・通学(玄関/庭/駅/公共交通機関/車/道路)
- 第3章 会社・学校(オフィス/会議/会社組織/学校/授業)
- 第4章 家事(部屋/掃除/洗濯/衣類/料理/台所)
- 第5章 外出(買い物/スーパー/銀行/郵便局/病院/レジャー/デート)
- 第6章 夜(レストラン/バー/帰宅/テレビ/読書/風呂/就寝)
HSK基本語彙
HSK基本語彙はHSK試験を目指す人におすすめのテキストで、1〜4級編(初学者向け)と5〜6級編(中〜上級者向け)の二つがあります。おすすめは5〜6級編で、ここまで上級の単語を網羅している単語は他にはなく、HSK6級対策としても重宝していました。
中国語文法
フレーズと単語を結合する中国語文法
中国語の英文法はそこまで複雑ではありません。特に初学者は最低限の基礎文法を意識するだけで、最低限のコミュニケーショが可能です。イメージとしては、単語とフレーズ学習をリンクさせるものと理解すれば良いと思います。中国語の骨組みの構造を知る程度だと理解していれば大丈夫です。
細かい文法よりも伝わり方
中国語では語気というのが最も大切で、これは実際に使用しながら気づきを得ていかなくてはなりません。コミュニケーションのためには細かい文法よりも、どのように相手に伝わったのかが特に重要になります。中国語は下記の記述文法を意識して文法学習を進めていきましょう。
仕上げとしてのパターンプラクティス
パターンプラクティスとは、日本では別名で文型学習などと呼ばれ、文の型(パターン)の知識を活かして、文を少しずつ変化させるトレーニングです。パターンプラクティスを何度も繰り返すことで「わかった」文法の知識が頭の中で想像したイメージと結びついて、「つかえる」運用可能な知識へと転換されていきます。
パターンプラクティスについてはこちらで解説↓↓
後述する「口を鍛える中国語作文」はパターンプラクティスのトレーニングブックとしても活用できますので、ぜひチェックしてみてください。
おすすめ文法テキスト
Why?にこたえるはじめての中国語の文法書
中国語教育者の相原茂氏が1996年に出版した中国語文法書のバイブル的存在です。中国語をこれまで学習した経験がある方は名前は知っているはずです。コンセプトは何故そうなのかというWhy?に初めてこたえる文法書で、規範文法的な性質をもちながら、記述文法としての一面も持っていいます。
文法事項が課ごとに整理され、系統的に覚えられるのが特徴で、豊富なドリルで実践力もつける事ができます。親しみやすいイラストで初心者の方でも、最後までなんとかやり切れるようになっています。一度文法学習を終えてから、辞書的に本書を活用することもできます。
↓↓こちらの動画で解説していただいています。
ビジュアル中国語・文法講座&例文ドリル
中国語学習教材の制作・販売をするカエルライフから出版されているビジュアル中国語シリーズの文法教材です。私が最も愛用した教材で、基礎文法を使った571の中国語会話例文を収録しています。中国語の基礎文法を大量の例文とともに定着させることができます。
↓↓教材のサンプル動画です
付属テキスト(PDFファイル)には、全例文に加えて、各章別に文法解説がされているので、文法をあらかじめ頭に入れてから例文を練習することができます。例文は左右に日中対訳が載せてあるため、音読教材として活用できます。
中国語のスタートライン
NHKテレビ・ラジオ講座を担当した輿水優氏による中国語入門書で、多くの大学で第二外国語のテキストとして採用されています。本書では中国語の学び方、発音、漢字、文法などを丁寧に解説しています。1課も分量も少ないので、隙間時間でコツコツ学習したいひとにおすすめです。文字も大きく、初心者の方にはおすすめの一冊です。
やさしくくわしい中国語文法の基礎
守屋氏とNHK中国語講座を担当する李軼倫氏が書いた本書は、中国語文法の構造全体を分かりやすく解説しています。初学者〜中級の学習者におすすめです。私が使用していたの旧版ですが、2019年に例文が見直され、解説もアップデートした新改訂版が出ているようです。
目次
- 第1章 文の構成素
- 第2章 品詞
- 第3章 フレーズ
- 第4章 文成分
- 第5章 文
- 第6章 中国語文法の要点
フレーズ学習
フレーズ&リズムで語順を習得
中国語学習で最も大切なのが単語学習です。ポイントは中国語をフレーズ単位で習得する事です。フレーズ単位でインプットする事で、中国語のリズム(四声と声調)を自然に身につけることができます。そのリズムにのったフレーズは、実際の中国語会話で大活躍されます。
中国語の教材ではピン音、四声、単語がバラバラに掲載されています。初学者の方は、それを個別に一つ一つ学習してしまいがちです。確かにそれぞれの項目を学習するのは大切ですが、最初は全体像を意識するだけにとどめましょう。実際に学習する際は、総合的なトレーニングをする意識をもつ事が大切です。
おすすめフレーズ学習テキスト
みるみる定着・中国語単語
こちらもカエルライフから出版されている中国語単語テキストです。中国語単語の教材でありながら、フレーズが豊富に掲載されいるのでおすすめです。私はPDFファイルを印刷して使っていました。
本教材では、2689語を89ユニットに分けて勉強します。1つのユニットで、25~35の単語を覚えることができます。
Step 1:単語をインプット
各単語を日本語→中国語の順に読み上げるので、日本語を聞いたら中国語がすぐに出てくるようになるまで繰り返し聞きます。
Step 2:フレーズで単語を定着
Step1で学んだ、それぞれの単語同士を組み合わせたフレーズを覚えます。
たとえば、“看 (見る)” と “电视 (テレビ)” という単語は、“看电视 (テレビを見る)” というフレーズで覚えることができます。このように単語同士をフレーズで覚えれば、単語が頭に定着しやすく、会話での使い方が自然に身につきます。
口を鍛える中国語作文
口を鍛える中国語作文は中国語を語順通りに理解するためのトレーニングブックです。初級編と中級編がありますが、まずは初級編を何度も繰り返し音読していきましょう。私が購入した時はCD版でしたが、改訂版では音声はダウンロードできるようになっています。
それぞれの文法・フレーズの項目ごとに8つの例文が取り上げられていますので、しっかり定着させることができます。音声は「日本語→中国語」の順で収録されているので、シャドーイングやリピーティングのトレーニングに最適です。
中国語を聞くためのトレーニング
リーディングとリスニングの共通点
リスニングとリーディングは別々の処理がされていると思われるかもしれませんが、実は同じインプット形式となります。耳から聞いて意味を理解する「聴解処理」と文を読んで理解する「読解処理」は入力のされ方が異なるだけで、脳内では基本的に同じ回路を辿っていると言われています。読解の場合は視覚で捉えた文字情報をインターナルボイスとして脳内で音声化しています。
引用:英語のリーディングの科学 音韻ループの2つの過程 p73
ですので、リーディングの際に間違った(声調や拼音を間違って覚えるなど)声でインターナルボイスを発してしまうと、リスニングにも悪い影響を与えてしまいます。後述する多読の際にも、注意していきましょう。
周波数は同じ?
日本語の周波数は他の主要欧米言語に比べてやや低くなっているのが特徴です。特にイギリス英語やロシア語は周波数が高く、慣れないうちは聞き取りが難しいと言えます。発音が難しいと言われる中国語の周波数は実はそれほど高くありません。若干中国語が高い程度です。
引用:Sound Frequencies of Language
中国語の音自体を聞き取るのは難しくないと言えそうです。声の上げ下げやイントネーションをしっかり会得すれば、それほど中国語の発音は恐る必要はないと分かります。
声調を意識したシャドーイング
シャドーイング(Shadowing)とは英語の音声を聞きながら、その音を真似して発音するトレーニングです。同時通訳の訓練にもよく使われているメソッドです。シャドーイングのポイントは、聞こえてくる音声のすぐ後ろを影(shadow)のように追いかけることです。
シャドーイングは第二言語習得研究の立場からも高い評価を得ています。特に、言語知識の自動化を促進する効果があると言われています。それだけではなく、短期記憶の定着を促す効果も期待できるようです。第二言語習得研究などでその高い効果が認められています。
シャドーイングの目的は音声知覚のために使用されるリソースをできるだけ減らして、意味理解をさせる余裕を増やしてあげることです。そのために以下のステップで徐々に脳への負荷を高めるトレーニングを実践しましょう。
シャドーイングの実践方法
詳しい解説は以前の記事で紹介していますので、そちらを参考にしてみてください。特に中国語学習においてはリズムを意識したプロソディ・シャードイングを重点的にトレーニングしていきましょう。私は下記の「華流スターの中国語」を使って実際にインタビューを受けたかのようにシャドーイングをしていました。
多読
多読の注意点
中国語を中国語のまま左から右に語順通りに理解するために、多読が効果的です。中国語の語順の脳回路を強化するだけではなく、中国語の総合力の強化にもなります。辞書に頼らなくても、内容をイメージできる本を選びましょう。初学者の方はかならず拼音が付いたものを選びましょう。
インターナルボイスで勝手な読み方をしてしまうと、リスニングに悪影響を与えてしまいます。おすすめの読み物を紹介していくので、自分のレベルに合わせて選んでみてください。
子供向けの読み物
私が最も多読で愛用していたものは子供向けの読み物です。内容が明瞭で絵が入っており、イメージしやすいのが最大の理由です。昔話や童話が多いので、内容も予測しやすく楽しく読み進めることができます。
子供向けの読み物では必ず、下記のように拼音が付いています。拼音や発音が不安な場合は、心中で声に出しながら読んでみましょう。慣れてきたたら内容だけを思い浮かべながら読み進めていきましょう。
Graded Chinese Readerシリーズ
Graded Chinese Readerシリーズは、中国語教育国際カリキュラムに準拠されたレベル別読み物です。現代中国作家によって書かれた中編小説の要約版で、日常生活を反映したものが多くとても楽しく読めます。拼音が記載され、難しい単語や文章には説明が加えられています。但し、英語話者のための学習教材のため、英語での説明となっているので注意が必要です。
多聴
多聴は、気軽に自分が興味の持てる音声をたくさん聴くのがポイントです。なんとなく内容が追える素材であれば大丈夫です。多読よりも少しリラックスして、リズムやイントネーションを楽しむ態度でも大丈夫です。憧れの俳優や歌手のインタビューやラジオ(ポッドキャスト)がおすすめです。
↓↓こちらで紹介されています
言語学者の白井教授は、以下3つの理由から、自分の好きな分野の音声を徹底的にインプットすることをすすめています。
- 動機づけ:自分の興味分野だと、動機づけにつながる。
- 背景知識:背景知識でカバーしやすく、内容理科につながる。
- 単語習得:似たような単語が何回も出てきて、単語習得が進む。
中国語を話すためのトレーニング
スピーチプロダクションモデル
中国語スピーキングの難しさを知る手がかりになるのがスピーキングモデルです。このモデルは元々は母語をのスピーキングのプロセスを説明するために考案されたものですが、第二言語を話すプロセスに示唆を与えてくれます。スピーチ・プロダクションモデルは、私たちのアウトプットのプロセスを3段階のステップに分解したモデルです。
まずは概念化装置で、自分の伝えたい想いを形成していきます。例えば、今眠たいなと感じたとしたら、「眠たいなと」心の声が生まれてきます。二つ目の形式化は、「眠たいなと」という心の声を言葉にのせる作業です。眠たいという単語を探して「困」という単語を頭の中の辞書から見つけると同時に、音韻・音声情報も作成します。最後の調音化は、実際に「我很困」と発話するプロセスを指します。
形式化
- 語彙・文法コード化:検索した語彙情報から語句を組み立てる
- 形態・音韻コード化:アクセントや音韻知識を活用
- 音声コード化:舌の位置、口の使い方、声帯の振動情報を作成
母語を話す際はこれらの複雑なプロセスは自動的に処理されますが、第二言語を話す際は各ステップを意識して実行する必要があるため、スムーズな会話が難しくなります。
概念→形式化トレーニング
スピーチプロダクションモデルにならって、文法別に自分の気持ち・行動・考えなどの概念をあらかじめ英語に形式化していきます。ここで、文法項目的に整理するのも目的となっているので、自分がしっかり理解した内容だけを整理していきます。シンプル中国語を心がけ、複雑な構文や表現はできるだけ避けましょう。
初学者向けには文法別のトレーニングがおすすめです。ノートやルーズリーフの左側に日本語訳、右側に中国語訳を書いて行きましょう。文法がしっかり定着しているのか、さきほど説明したパターンプラクティスの要領で知識を定着させていきます。
中級者は場面別に日本語と中国語の対照訳を作っていきます。文法別に整理した内容を活用することで、より文法の知識が深い知識に転換されていきます。まずは、自己紹介、家族、趣味など身の回りのことを表現する事をおすすめします。
スモールトックの練習メソッド一覧
- 15/45 exersise:トピックを15秒で考えて45秒で発話
- 4/3/2トレーニング:4/3/2分と話す時間を短くして繰り返し発話
慣れてきたら、大きな概念である「自己紹介」・「家族」・「趣味」を頭に思い浮かべて、スモールトークの練習もしてみましょう。うる覚えの表現が出てきたらもう一度覚え直しましょう。「こんな事も伝えたい」とか気づきが生まれたら、どんどん表現を追加していきましょう。
アプリを活用したタスクレペティション
タスクの繰り返し
同じテーマの反復学習(タスク)の繰り返しは退屈で学習効果が低いと思われるかもしれません。実はタスクを繰り返すことで、第二外国語学習者の流暢さ(1秒ごとの音節の数)が向上する研究成果もあります。
引用:TASK REPETITION AND SECOND LANGUAGE SPEECH PROCESSING
流暢さが向上する要因としては、下記の研究でも明らかになっている概念化への注力の減少があるかもしれません。言語形式(sytax)に意識を向ける余裕が生まれると、流暢さも向上するはずです。初学者は様々なテーマのスピーキングに挑戦するのではなく、同じトピックの課題を繰り返しトレーニングすることが大切です。
アプリを活用した場面別トレーニング
場面別トレーニングにはSNS型の外国語学習アプリがおすすめです。自己紹介や趣味の話しなどを何度も繰り返しトレーニングできるからです。同じようなタスクを繰り返していくうちに、語学力も向上していきます。実際の場面を想定したロールプレイングも有効だと言えます。
自己紹介の例
A:こんにちは。はじめまして(你好,很高兴见到你)
A:私はTakashiと言います(我叫たかし)
A:東京に住んでいます(我住在东京)
A:21歳で、大学生です(我今年 21 岁,是一名大学生)
A:日本語を勉強してますか?(你是学日语的吗?)
A:なぜ日本語を勉強してますか?(你为什么学习日语?)
B:あなたは?なぜ中国語を勉強してますか?(你呢? 为什么学中文?)
・・・・
・・・・
外国語学習アプリは数多くありますがハロートーク(HelloTalk)がおすすめです。中国発祥のアプリなだけでに中国語のサービスが充実している他、圧倒的にユーザー数が多いのが特徴です。メッセージ機能だけではなく、無料で音声やビデオ通話することも可能です。
中国語完全独学マップ
独学マップの全体像
今回も英語学習ロードマップ同様に上記図を基に学習を進めていきます。中国語学習向けに前述したフレーズ学習を入れています。今回はさらに、学習レベル(フェーズ)別の、学習項目の比重表も作成してみました。次の項目で、フェーズ別の学習方法を簡単に説明していきます。
フェーズ1(〜20時間)
最初のフェーズ1では、まずは発音と声調を徹底的にトレーニングしていきましょう。まずは中国語学習の土台作りが大切なので、焦らず文法を少しずつ学習していきましょう。この時期に、しっかり学習法略(学習計画や学習習慣)を立てることも大切です。
チェックリスト
✔️学習方略に基づく学習計画を立てた。
✔️発音と声調を少し理解できた。
フェーズ2(~40時間)
フェーズ2から本格的に上記の中国語学習マップを回していきます。フェーズ3との違いは、発音・声調への意識です。フェーズ2ではまだ、発音・声調が習得途中なので常に音を最優先にトレーニングをしていきましょう。このフェーズでは自信がなかったら複雑な文法を使ったアウトプットは避けていきましょう。
チェックリスト
✔️単語とフレーズを即座にアウトプットできる。
✔️意識しながら正しい発音・声調で中国語を話すことができる。
フェーズ3(〜80時間)
フェーズ2で発音と声調にある程度自信が持てるようになったら、やや複雑な文法を使ってアウトプットしてみましょう。フェーズ2では、中国語学習アプリで簡単な自己紹介しかできなかったかもしれませんが、フェーズ3では趣味や日常生活について話題を進めていきましょう。
チェックリスト
✔️無意識に正しい発音・声調で中国語を話すことができる。
✔️やや複雑な文法を使って発話できる。
参考
英語・中国語教育センター 目標言語から母語への逆向転移の実例 ― 日本語から中国語へ
ディラ国際語学アカデミー | 学びやすい外国語、難しい外国語
Medium | Sound Frequencies of Language
Cambridge University Press | TASK REPETITION AND SECOND LANGUAGE SPEECH PROCESSING