アメリカの詩人「Ross Gay」から学ぶ日常の中にある「Delight」の見つけ方

はじめに

四葉のクローバーとじょうろ

予期せぬところに喜びがある。嬉しいとか楽しいという気持ちはどこからやってくるのか。探そうと思って、その源泉を見つけることはできるのか?アメリカの詩人「Ross Gay」が教えてくれます。

 

「Delight」という単語の意味は、「Pleasure」よりも強い喜びを示し「Joy」よりも大きな喜びです。身振り、手振りを使って示したくなるような喜びとも言えるでしょう。

 

ハイタッチをしたり、誰かに「こんな良いことがあったのだよ」と思わず共有したくなる。そんな気持ちかもしれません。

 

今回は、「The science of Happiness」のインタビューを手掛かりに、日常の中にある「Delight」の見つけ方を考えていきます。

 

「Greater Good Magazine」

greatergood.berkeley.edu

 

「Greater Good magazine」は、科学的なリサーチをもとに、幸せになれるエッセンスを紹介しているサイトです。Web上には記事やビデオ、そして今回紹介するポッドキャストなどのコンテンツが充実しています。

 

最大の魅力は、ポッドキャストにトランスクリプトが付いてることです。心理学やライフスタイル系に興味があり、英語学習している方々はぜひチェックしてみてください。

 

コンテンツに関しては、カリフォルニア大学バークレー校のGreater Good Science Center (GGSC)によって運営されているので、心理学をはじめとする最新の研究成果を知ることができます。2001年から、同センターは幸せの源泉を探るための研究に力を入れているようです。

 

 

「Ross Gay」とは

rossgay.net

 

インタビュー記事に入る前に、「Ross Gay」を紹介してきましょう。 

 

「Ross Gay」はアメリカの詩人で、彼の詩はアメリカのAmerican Poetry ReviewやHarvard Reviewなどの雑誌に掲載されています。大学で教鞭を執りながら、本の執筆もしています。

 

日本とは異なり、海外では詩人の社会的認知度や影響力が高いように感じます。言葉をまっすぐに相手に届ける、人々が言葉にできなかった思いを見事に活字にする、それらの才能や功績は、日本でもっと評価されるべきではないでしょうか。

 

Ross Gayは Bloomington Community Orchardの創立者でもあります。後述しますが、果汁園を若者が協同で運営するというコミュニティは、彼の「Delight」に対する態度と似ている部分があります。

 

www.bloomingtoncommunityorchard.org

 

彼の最新の著書「Books of Delight」が今回のインタビューで紹介されました。彼が日常で見つけた「Delight」をユーモアたっぷりにまとめたエッセイです。

 

 

The science of Happinessでのインタビュー内容

では、「Greater Good magazine」のインタビューを紹介していきます。下記のリンクから直接アクセスできます!

 

greatergood.berkeley.edu

 

Ross Gayの「Delight」に対する考えを振り返っていきます。ぜひ彼の肉声も聞いてみてください。

 

So often the things that did make me feel delight were moments of interdependence; moments of people helping each other out, or moments of tenderness, or moments of caretaking. And that was one of the things where I sort of realized like, “Oh, this thing called interdependence which is the real thing makes me delightful.”

 

人々がお互いに気にかけたり助けたり

その瞬間に喜びが生まれる

喜びの源泉は相互依存

 

And the second thing that I realized is that when I witness that, upon feeling that delight, I want to tell someone. I want to share, you know. So there’s this whole sharing thing that that comes with it, and I haven’t quite articulated this yet. But there is something about this self that gets more truly connected. Like there’s some way that the self becomes more truly connected to other selves. You know, throughout all of this experience for me. That’s my feeling.

 

相互依存を目撃したとき

お互いに助け合う場面を誰かに言いたい。シェアしたい。

そこに、人と人を繋げる何かがある。

 

Research shows that when we savor the moments that we’re in, or even a moment in the past, it can make us happier. Cara Palmer is an Assistant Professor of Psychology at Montana State University. She studies the impact of savoring on our well-being.

 

今を満喫すれば幸せになる

 

I think in our society, right, we are constantly on the go. A lot of people are overworked, and a lot of times I think we think of happiness and feeling good feelings as a luxury, and almost like an afterthought. So I think just taking the time to stop and reflect on good events, and how good you feel during those good events, I think can be incredibly beneficial. Whether it’s just stopping for a second and thinking about it, or stopping and writing it down.

 

今の社会はみんな働きすぎる

 

ちょっと立ち止まって、楽しかったことを思い出してみる

 

彼は、日常を楽しむ達人のように思えます。生活の細かいディテイルを言語化するプロならではの技なのかもしれません。彼と一緒に生活をともにしたら、日常の見え方が変わるかもしれせん。

 

 

 

「親切」が「相互依存」の出発点

Ross Gayのインタビューで相互依存(interdependence)という言葉が出てきました。一方的に頼るdependではない双方向の依存です。相互に頼り合うことです。

 

話はそれますが、私は人に頼るのがすごく苦手です。海外で留学した際は、私が唯一の日本人でした。海外の留学生はお互いに頼るのが上手でした。最初は、どうやって頼ることができるのか不思議に思ってました。実は彼らは親切になれる瞬間、友達を助ける機会を常に探していたのです。一度友達を助けたら、自分が困ったとき助けを求めることができる。それが相互依存で、すべての始まりは親切なのだと。

 

実は人が親切になれば幸せになれる。研究によって証明されています。親切には簡単に短時間でなることができます。

 

www.inc.com

 

 

Berkeley校の幸せになる実践

Berkely校が運営している「Greater Good Action」というラボがあります。幸せ、繋がり、親切は一種のスキルである。ある実践を繰り返すことで、それらは育まれる。そう信じています。

 

「Greater Good Action」は何百もの研究結果を統合し、幸せになれる実践を提供し続けています。well-beingを高めたい人にもオススメのようです。

 

下記のリンクに入ると、「Connection」「Compassion」「Joy」などのキーワードが出てきます。それぞれの項目をクリックすると複数のページが出てきます。例えば、「Happiness」をクリックしたら、「Happiness」になるための実践が紹介されています。詳しい方法がステップごとに詳細に記述されているので、誰でも実践可能です。

 

今回は、その中から二つの実践を紹介していきます。

 

ggia.berkeley.edu

 

 「Compassion」というカテゴリーから、「Feeling Connected」という実践を選択しました。ライティングのエクササイズを通して、つながりや寛容さを育むことができます。

 

必要時間:

10分。少なくとも一週間に一回は実践すること。

 

第一ステップ

これまでの生活で、誰かと強く結ばれていた時をイメージしてみてください。その人と密接に繋がっていた具体的な経験を選んでください。この時は、あなたがその人と意義深い会話、相互のサポート、大きなものを失ったり、あるいは得た大切な時期だったかもしれません。

 

第二ステップ

その特定の経験を思い浮かべることができたら、数分の時間を使って書き出してみてください。特に、どうやってその人とつながりを感じるようになったのか考えてみてください。

 

実践の狙い

この実践は過去に強く人と繋がった時期を振り返ることによって、人に思いやりをもって接しようとするエネルギーが沸いてくるそうです。

 

ggia.berkeley.edu

 

次は「Happiness」というカテゴリーから、「Mental Subtraction of Relationships」という実践を選択しました。ライティングのエクササイズを通して、つながりや寛容さを育むことができます。

 

必要時間:

一週間に一回時間を作ってください。毎週別々の人を選んでください。 毎週寝る前やランチの前など同じ時間に実践するとより効果的です。

 

第一ステップ

これまでの人生で、大切だった恋愛や友情の経験を思い浮かべてください。

 

第二ステップ

その人とどうやって出会ったのか思い返してください。

 

第三ステップ

 その人と出会わないで重要な関係性を築くことができなかったことを想像してみてください。もし、特定のパーティーに参加しなかったらとか。

 

第四ステップ

別の出来事が起こって、その人に出会わないようになったであろう。あなたの予想できる出来事や決定を書き出してみてください。

 

第五ステップ

想像してみてください。もしその人に出会わないで今の生活を送っているとしたら。

そして、その人がもたらしてくれた喜びを思い返してください。

もし、その全てが否定されたらどのように感じるでしょうか。

 

第六ステップ

実際にその人に会って、そこから得た喜びを改めて考えみてください。今あなたは、その出来事があなたの人生にとって必要不可欠だったと考えるようになったでしょう。その人が自分の人生にとって大切だったと改めて感謝するでしょう。

 

実践の狙い

 

 その人とで出会ったことが本当に偶然の連続の結果であったこと。その人に出会うことがなかったら、今の自分がどうなっていたか。一度大切な人との出会いを否定することで、その人が今の自分にどれほど幸福をあたえてくれたのか。そのことに気づくことができる。

 

ggia.berkeley.edu

 

二つに共通するテーマは「大切な人をもっと大切にできる」ではないでしょうか。「大切な人」は自分にとって身近すぎて、感謝という気持ちが希薄しがちかもしれません。

 

 

まとめ

日常の喜びは私たちの外側にいくらでも転がっている。一人で喜びを味わいたいと思っても上手くいかない。喜びは誰かと分かち合って初めて味わうことができるものだから。日常の些細な親切が大きな違いを生むのではないでしょうか。

 

些細な行動が人から感謝され、人と温かく繋がることができます。利害関係に基づくつながりではなく、感情を交換できる結びつきです。人間は感情の交換が必要な生き物だと思います。ご飯を食べるように、それも人間にとって必要不可欠だと思います。

 

日常は忙しさに溢れています。何かのために自分の体力や時間を犠牲にしています。ですが、一日の10分ぐらいは自分のためだけに時間を使ってみるのも良いかもしれません。それは「大切な人をもっと大切にできる時間」です。大切な人と自分がいかに繋がっているかを再認識することで、今の自分を見つめなおすことができるはずです。

 

自分はひとりじゃなくて、人と繋がっているいるのだ。外側から入ってきた温かい感情を日々大切に育てていく。それは、Ross Gayが営むコミュニティのようです。些細な行動が大きな心の変化を生む。一人では「Delight」を見つけることも、共有することもできない。

 

「大切な人」との奇跡的な出会いに感謝しましょう。

「相互依存」ができるように「親切」になりましょう。

 

そう思えるようになりました。