はじめに
今回は、『ニューヨーク・タイムズ』紙ベストセラー作家のマーク・ネポ氏の
インタビューをてがかりに、コミュニティの可能性と幸せの源泉について考えます。
先日、私が大好きなポッドキャストでマーク・ネポ氏がゲストとして出演。
彼に興味を持ち始めました。
こちらのサイトでは、ブログも充実しているのでおすすめです。
学生時代から、「ソーシャルキャピタル」というキーワードに関心がありましたが
その思いが再熱しているのかもしれません。人間関係が希薄化している時代において
コミュニティの存在価値や注目度も高まっているはずです。
- マーク・ネポ氏とは
- 「More Together Than Alone」とは
- 「LiveHappy」でのインタビュー
- マーク・ネポのマクロ的・ミクロ的な視点
- 「どん底」を「幸せ」に転換するコミュニティ
- おわりに
マーク・ネポ氏とは
マーク・ネポの肩書きは実に多彩です。ニューヨーク・タイムズ』紙ベストセラー作家
として活躍しながら、ヒーリング・カウンセラー、哲学者としての顔をもちます。
ニューヨーク州立大学アルバニー校で教壇に立つほか、ヒーリングや医療関係の
コミュニティーでカウンセリング指導を行なっているそうです。
ベストセラーを記録した『「自分を変える」心の磨き方』は全世界23ヵ国語に翻訳
米メディアでは「本当の人生とは何かを解き明かした名著」として高い評価を受けて
いるようです。
今回、マーク・ネポ氏が語ったのは、2018年に執筆した「More Together Than Alone」
本書の内容を簡単に紹介します。
「More Together Than Alone」とは
In writing this book over the past twelve years, my aim has been to be present enough to the historical community,
It’s my hope that, by understanding authentic moments of community, we can confirm that community is real and possible-beyond any illusion or deception.
私たちのつながりが錯覚ではなく、実際に存在し力強い存在であったのかを力説。
著者が12年の歳月をかけて、人類のコミュニティの歴史をさかのぼりました。
アメリカでは、コミュニティの存在が疑問視されているような風潮もあるようですが
彼は間違いなく、人の絆の力と行動する勇気を信じています。
・ヒンドゥー教の神話
・難民の子供を救う人々
歴史的事件の背後には、人々を繋ぐコミュニティがあった。
困っている人を救いたいという思いが絆を生んだ。
人々の勇気が行動を生み、逆境を乗り越えてきたと。
エッセイ風に歴史を俯瞰しつつ、冷静に人間の心理を捉えるように努力しています。
彼のおおよそのメッセージは
「私たちはお互いに愛しあい気にかけていれば、行動する勇気は自然とでてくる」
ではないでしょうか。
それぞれのチャプター終わりには課題があります。たとえば
「自分の住むコミュニティをより良くするためにどうすれば良いのか、
何人かと話しあって考えみましょう。」
「LiveHappy」でのインタビュー
彼は今回のインタビューで何を語ったのでしょうか。
彼は主に二つの大きなテーマにそって議論をすすめました。
議論のポイント
・What is making us less connected in today’s world
(何が今日の世界でつながりを希薄にさせているのか)
・How our addiction to noise and fear is changing the way we see the world
(どのよう中毒じみた雑音や恐怖がどのように世界の見方を変えるのか)
当初、彼は一定の理論をつくるつもりはなかったそうです。
興味深い歴史的な物語を積み上げていきました。
歴史家と対話したのをきっかけ
その時々の「コミュニティ」を追いかけたい
情熱がわいてきます。 情報を集めて、ヒアリングしていろんな人の助けを求めます。
「私の作品の中で唯一書き終えることができるか不安になった」
そう語ります。
ここからが本題です。
今日の世界でつながりを希薄にさせているの「恐れ」
歴史的にも、違っているものを排除するジェノサイドや、迫害が存在した。
一方、自分と異なっている人々を「自分の分からないことを教えてほしい」と
受け入れた人々も存在していた。情報を共有して、より良い社会をつくろうと。
その違いの根底にあるのは、
人間のエゴイズムや国民主義。
自己を主張しすぎると、異なった考えを誤ったものと認識や排除につながる。
私たちがすべきことは、わからないものを受け入れる姿勢=学ぶこと
急いだ結論や推論は相手の否定につながってしまう。
お互いのストーリーを語り合って、共有して、受け入れる。
「どうやって社会に対して強烈な思いをもったのか」たずねていく。
恐れは自然となくなる。そこに対立は生まれない。
議論があちこち飛ぶので、間違った解釈でしたらごめんなさい。
マーク・ネポのマクロ的・ミクロ的な視点
彼は、大きなピクチャーから人類をとられ、「コミュニティ」を再発見しました。
歴史の細かいピースを集め、共通した強いつながりや絆を提示したのです。
ですが、彼は一定の理論を創り上げることを嫌っています。
そのピースは、一人一人の物語。
理論の要素にしてしまうと個人の存在がある方向に決め付けられてしまうからです。
彼は、ヒーリング・セラピストとして
個々の人間をしっかり観察して、人間の可能性を誰よりも知っています。
二つの視点が見えてきます。
・マクロ的な視点
「どんな難しい時代でも、「コミュニティ」が社会の問題を解決することができる」
・ミクロ的な視点
「個人の社会に対する思いは、物語を一人一人熱心に聞いて積み上げて理解する」
私たちは二つの視点をもつことで何ができるのでしょか。
「どん底」を「幸せ」に転換するコミュニティ
人が絶望したとき、ネポはコミュニティがその絶望を救ったと証言しました。
しかし、そのコミュニティが希薄な時は、個人は自殺という選択をします。
ネポはなぜ、著書の中に地域のコミュニティを考える課題を添付したのか。
彼は、コミュニティの可能性を最大限に発揮するためには、個人の行動する
勇気が大切だと力説しました。
そのためには、
一人一人の読者が「なるほど歴史的にコミュニティは私たち人類を救ってきた、どんな
難しい時期も」と納得するだけでは、終わってほしくない。
それだけではなく、
「こんな難しい時代だから、お互いの物語をきいて地域をより良くしていこう」
という行動を期待しているはずです。
社会活動の盛んな地域では、自殺率が低いという研究結果もあるようです。
https://www.health-research.or.jp/library/pdf/forum24/fo24_3_01.pdf
わが国の高齢者において、ソーシャ ルキャピタルの中でも社会参加の盛んな地域では、自殺率が有意に低い ことが示されました。これはアメリ カ50州において、クラブ活動への参 加と自殺率の低さが関連するという 先行研究に一致する考え方です。
先日興味深い記事を見つけました。
お金を儲けたいという上昇志向は限界がない。
10億円稼いでも、もっと稼がないと幸せのドーパミンがでないそうです。
人に親切にするだけで、同じようなもっと幸福がつづく脳内物質がでると。
しかも飽きずに、いくらでも。
おわりに
改めて「コミュニティの可能性と幸せの源泉」を考えていきます。
歴史を俯瞰してとらえ、共通したコミュニティをの存在を浮き彫りにすることで、
困難な時代でも、「コミュニティ」が社会の問題を解決することができる
マーク・ネポから学ぶことができました。
つまり、先ほどのマクロ的な視点に「コミュニティ」の可能性があてはまります。
・マクロ的な視点
「どんな難しい時代でも、「コミュニティ」が社会の問題を解決することができる」
↓
コミュニティの可能性
では、ミクロ的な視点をもてば「幸せの源泉」をみつけることができるでしょうか?
・ミクロ的な視点
「個人の社会に対する思いは、物語を一人一人熱心に聞いて積み上げて理解する」
↓
?
人に親切にすると、幸せの脳内物質がでてきます。
相手の物語を熱心に聞いて相手を気遣えば、絶望した人も救えます。
地域社会をより良くしたいという勇気は行動をうみだします。
しかし、「~すべき」という思考にはストレスが伴い、
コミュニティも機能主義的になってしまう。
そこで、現代風にコミュニティをデザインするということも必要です
こちらの座談会では、退出自由でゆるい関係の
「みんな仲良く」より、「お好きにどうぞ」型
多様性を寛容するコミュニティを形作るのではと。
まさに、このキーワードはマーク・ネポも語った「お互いを気遣う」出発点です。
「幸せの源泉」は一人ではなく、互いの物語を交換して、「お互いを気遣う」
ところにあるのでしょう。それが積み重なって、たくさん幸せのコミュニティが
生まれていくことを期待したいです。