元国語教師が「言語」と「英語」を考えるブログ

「言葉」との向き合い方、 英語学習、スペイン語、マーケティング、ポジティブ心理学について考えていきます!

「不足」ではなく「今あるもの」に注目する Nipun Mehta氏が提唱するギフティビズムとは?

 はじめに

森林浴の写真

「Scinece of Happness」にゲスト出演したNipun Mehta氏。今回は、「不足」ではなく「今あるもの」に注目する Nipun Mehta氏が提唱するギフティビズムに迫ります。

 

Nipun Mehta氏とは

プロフィール

Nipun Mehta氏は、インド生まれのアメリカ国籍。アメリカのカリフォルニア大学(UCLAバークレー校でコンピューター科学と哲学を専攻します。大学3年在学時に大手IT企業サン・マイクロシステムズでソフトウェア開発をしたのをきっかけに、1999年サービススペースを4人の友人と立ち上げます。ボランティア活動に従事しながら、様々な分野で活躍する人に、ギフティビズムの精神を提言し続けています。2015年にはバラク・オバマ大統領の貧困と不平等に関する政策提言評議会の委員に任命されました。

「五井平和賞」の受賞

2019年度の五井平和賞が、サービススペース(ServiceSpace)とその創設者Nipun Mehta氏に決定されたようです。

 

「五井平和賞」は、2000年の創設以来、教育・科学・文化・芸術など、様々な分野において、地球と人類の未来に真の平和と調和をもたらす上で、顕著な功績があり、「生命憲章」の理念原則と同じ方向性を持つ個人や団体を顕彰している国際的な賞

 

www.goipeace.or.jp

 

授賞理由は、Nipun Mehta氏が創り上げた、見返りを求めず提供する「ギフティビズム(Giftivism 造語)」が人々が生来持つ奉仕の精神を目覚めさせ、個人の意識や行動、ひいては社会・経済のあり方の変容を促し続けるとして、彼自身およびサービススペースの取り組みと貢献が評価されたとのことです。「ギフティビズム」と「サービススペース」はこの後で紹介します。

 

肉声から紐解く「The random acts of kindness practice」の価値

greatergood.berkeley.edu

 

ここからは「The Science of Happiness」のインタビューから彼の思想を代表する「the random acts of kindness practice」を紐解いていこうと思います。

 

「The random acts of kindness practice」とは。一言で言えれば「毎日何でも良いから親切をする実践」という感じでしょうか。下記のコラムで詳しく紹介されていますが、とにかく親切をしていくとWell-Beingが高まることが研究で明らかになっています。

 

代表的なのが

○不安な気持ちがなくなる

○心が穏やかになる

○幸せホルモン「オキシトシン」が分泌

 

positivepsychology.com

 

「The Science of Happiness」のインタビューでNipun Mehta氏は、心理的な効果よりも大事なことを指摘しています。

 

So usually our day’s actions are very oriented towards me. What am I going to do? What am I going to get? You open each door and you kind of you go in as a consumer and you say, what am I going to take from this? What am I going to get from this?

 

私たちの一日は普段、「何を得よう」「何を取ろう」と思って始まる。毎日扉を開けて最初に思うことは、消費者として何を得ようかとあれこれ考える。

 

But here are the practices to actually turn it around and say, I’m going to be a contributor. And so you open each door and you say, how can I contribute? How can I give? And as you start doing that and you say, “OK, well, I was just act number one and asked number two.” And by the time you get to, you know, four or five, you start realizing, “Wow, maybe I can just do that all day.”

 

しかし、親切な行動を続けていると、「よし!今日も誰かに貢献しよう」と毎日家を出ることができる。そうすると、自然と「どうやって貢献しようか」「どうやって与えようか」と考えるようになる。一度、二度続けていると、簡単に継続することができる。最後に「すごい!毎日できるじゃないか」と実感することができる。

 

 

「The random acts of kindness practice」の本当の価値は心理的に心地よくなったり、不安が和らぐだけではありません。自分の行動の規範が変わる。Nipun Mehta氏は「社会を見る目が変わる」と説きます。では、どういう風にかわるのでしょうか。そのヒントは、彼が作り出した「サービススペース」にあります。

 

サービススペース(ServiceSpace)

サービススペースとは

www.servicespace.org

 

世界中のあらゆるIT技術を活用し、世界中の人々に小さな奉仕の実践を奨励するボランティア組織です。匿名で親切を拡散する「スマイルカード」や、ギフト経済を実践する「カルマレストラン」の運営など様々なプロジェクトを運営しています。また、有給スタッフの雇用、資金集め、広告宣伝は一切行わず、人々の善意のみで成り立っています。そほ活動方針やミッションに共感する参加者は世界中に広がっており、人々の内面と社会を変革し続ける組織に成長しています。

 

「カルマキッチン」

サービススペースの代表的なサービスは、「カルマキッチン」と呼ばれる値段のないレストランです。自分が食べた料理は、前にお店に来た人がすでに支払ってくれています。次の人が食べる料理を支払う義務はありませんが、支払いをされたお客は自然と次の人の会計もしてしまいます。そうやって、親切の輪が続いていきます

 

www.youtube.com

 

日本でも、カルマキッチンを楽しめるようです。私もいつか行ってみたいです。

karma-kitchen.jimdo.com

 

「スマイルカード」

www.kindspring.org

 

「Smile Card」は、誰かに親切なことをしたときに、そっと渡すカードです。カードには、「あなたは匿名の優しさを受けました。今度はあなたの番です。」というメッセージが記されています。ガソリンスタンドで料金を払おうとしたら、「前の車の人が支払ってくれましたよ」とスマイルカードを従業員に渡されたり。「いたずらをいいことにできないか」という発想から生まれたスマイルカードは生まれたそうです。その実践は世界90カ国に広まっているようです。

 

匿名の人から親切を受けると、自然と自分も誰かに親切をしたくなる。何かを与えたくなる。そういう連鎖がサービススペースにはあります。サービススペースが立ち上がった時は、Nipun Mehta氏はそんなことは予測もしてなかったそうです。ビジネススクールの講師や研究者が疑問に思うほど、驚きの現象だったようです。

 

では、この大きな現象の背後にはどんなカラクリがあるのでしょうか?

つぎは「ギフティビズム」を見て行きましょう。

 

ギフティビズム(Giftivism 造語)になるための4つのシフト

www.youtube.com

When small acts of giftivism get connected,

It rekindles a gift economy.

A gift culture is marked by four key shifts.

 

送りあうカルチャーが生まれるためには4つのシフトがあるようです。

 

「消費者」から「貢献者」へシフト

Instead of asking, “What can I get”, open each door to say, what can I give?

 

アメリカでは一日に、平均35,000の広告に触れているそうです。そこに書かれているメッセージは、「私たちの商品・サービスが必要です」。その広告のシャワーを浴びると、人は無意識に受け身になってしまう。そうではなくて、自分は何を持っているのか、何を奉仕できるのか、そう考えることがスタート。もしも、匿名の親切を受けたら、次の人にも親切を続ける。そうすると、「貢献者」の連鎖ができていきます。

 

「取引」から「信頼」へシフト

Build synergy. You can’t shake hands with a clenched fist.

 

「取引」は私とあなたの1対1の関係で成り立っているので、与えたものに対して見返りを求めてしまう。一方で「信頼」は、何らかの形で、めぐりめぐって自分のもとへ返ってくる。「信頼」とは実は大きな可能性がある。これはどういうことでしょうか。

 

カルマキッチンでの人々の行動に疑念が生まれ、とある漫画ミュージアムである実験が行われました。入場料の支払い方法を変えて、入場者がいくら払うのかという実験です。結果は、以下の通りです。(支払額は入場者が決めます)

 

○自分の好きな値段をボックスに入れる→取引では1ドル20セントぐらい

○レジの人にお金を渡す→平均2ドル

○カルマキッチンスタイル→平均3ドル以上

 

何が明らかになったかと言えば、ボックスに入場料を入れる、あるいはレジの人にお金を渡す「取引」よりも、人々の「信頼」によって支えられたほうが、より多くのお金を支払ったということです。

 

「孤立」から「コミュニティ」へシフト

It is not enough that we connect, but rather how we connect. That’s difference btweenn graphite and diamond.

 

You can be Facebook friends; you can go out for a movie; you can volunteer together.

“Gift ties” are the strongest ties.

 

アメリカの子供が誕生日に無料の車洗浄イベントを企画しました。子供たちは、それぞれの役割を与えられ、自分ができることを探しました。彼らは自分ができることを必死にやり、奉仕を続けました。彼らはお互いを尊重し合い、彼らの絆はさらに深くなっていきました。その姿に感銘した者が今後は彼らを応援したい、コミュニティをつくりたいと輪が広がっていきました。

 

「不足」から「充溢」へシフト

Cultivate inner transformation, to arrive at enough.

“There is enough for everyone’s need, but everyone’s greed –Gandhi

 

ガンジーの言葉を引用して、 すべての人々のニーズは満たすことができる。だけど、すべての人の欲を満たすことはできない。この言葉がすべてを物語っていると説きます。

 

どんな苦しい状況、過酷な瞬間も自分がもっているものに注目する。自分が持っている何かを誰かに与えることができれば、そこに価値が生まれる

 

If everyone can share their gifts, we will discover new forms of value.

 

“充溢”を前提とする社会へのシフト

フィジーの「ケレケレ文化」

フィジーには「ケレケレ」という相互扶助文化が存在します。「ケレケレ」は日本語に訳すと「お願い」という意味です。お金や物を豊富に持っている人々が、必要な人に差し出すのは当たり前という価値観があるようです。

 

自分の富やモノを所有するという概念はあまりなく、みんなでシェアをすれば良いという考えが背後にあります。

 

alternas.jp

 

デンマークの「ヒュッゲ」

デンマーク語「ヒュッゲ」は「人と人とのふれあいから生まれる、温かな居心地のよい雰囲気」という意味です。当たり前の日常に感謝するという意味も込められています。

 

家族や友人との絆、美しい自然に目を向けて感謝する。それでいて、謙虚に質素に生きることを楽しみ、心の充足に価値を見出します

 

kinarino.jp

 

スウェーデンの「ラーゴム」

スウェーデン語の「ラーゴム」は、「ちょうど良い」「ほど良い」という意味だそうです。語源をさかのぼると、ヴァイキングたちの言葉「Laget om(ラーゲット・オム)=仲間と分け合う」という意味があるそうです。仲間とシェアする分があれば、ちょうど良いということでしょうか。

 

○インテリア 自然の素材を大切にする

○働き方   一人の時間を認める

○育児    学ぶ準備ができたら学ぶ

 

prtimes.jp

 

ギフティビズムの延長にあるのはどんな社会なのか?

 Nipun Mehta氏が提唱するギフティビズムとは、「不足」ではなく「今あるもの」に目を向けて、「充溢」する気持ちを持つことから始まります。一人一人の社会の見る目が変わることで、親切の連鎖が生まれ、新たなコミュニティが生まれていきます

 

「充溢」を前提とする文化や社会は、珍しいことではなく、フィジーや北欧の国々でも確かに学ぶべきことがたくさんありました。ただ、それらの文化や社会は私たちが簡単に取り入れることは難しいでしょう。それぞれの固有の習慣や風土に深く根付いているからでしょう。

 

「ギフティズムの延長にある社会」は国ごとに異なるでしょう。日本版のギフティズムの再考が必要になるかもしれません。すでに、「感謝の気持ちと報酬を送りあう実践」や「感謝が通貨になる経済」など、社会の見方もすでに変化しているのかもしれません

 

ideasforgood.jp

 

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