元国語教師が「言語」と「英語」を考えるブログ

「言葉」との向き合い方、 英語学習、スペイン語、中国語、マーケティング・コミュニケーションについて考えていきます!

洋書で考える THE BORROWERS

失うことへの不安

宮崎駿が手がけた、「借り暮らしのアリエッティ」の原作。この小説を読み終えて、人間の根源にある一つの欲求を疑いたくなります。それは、物を所有する欲求です。

 

物を所有する欲はいくらでも膨れ上がります。いったん所有すれば、失うのが怖くなります。物欲のある生活は精神世界にも影響をおよぼし、人も独占したくなるのでしょうか。これが私の率直な読後感です。

 

 

借り暮らし、日暮しの緊張感

小説の世界には、そのような独占欲や物を所有する欲は一切ありません。ですので、私利私欲のない世界です。そこには、ただ「借り暮らし」の緊張感と、物への敏感な注意力です。日々何気なく使っている家具、日用品はいったん所有してしまえば、文字通り自分のものです。それらを壊しても、捨てても誰も文句を言いません。

 

しかし、借り物はそうはいきません。いつか返却をしなくてはなりません。ですので、大切に使います。毎日状態を確認するでしょう。そうすることで、物への意識が高まります。小説のなかの、物への細かい描写はそのようなメッセージが含まれているのでしょうか。

 

 

自分の存在が知られてはいけないもどかしさ

人間は誰かに認められたい生き物ではないでしょうか。誰かに褒められ、賞賛されるとすごく嬉しくなります。そのために、自分の交友関係を広めていき、多くの人に自分の能力や力を認められるよう努力します。それが自分のアイデンティティの一部とも言えるでしょう。

 

では、借り暮らしの小人は自分の存在意義をどのように考えているのでしょうか。小人の世界でも、人間と同じように承認される世界があるのでしょうか?しかし、彼らは基本的にグループや集団で生活するのではありません。家族単位で生活をします。家族の中で自分の地位を高め、居場所を探して満足なのでしょうか。

 

 

ですが、外の世界を知っている以上、外側への興味、憧れは必ずあるでしょう。そのもどかしさはどうすれば良いのでしょう?アリエッティの行動力は、そのもどかしさからきているかもしれません。

 

 

精神的豊かさ、物への感謝と、日々生きることの意味

小人たちは、「人間は私たち借り暮らし族のために生きている」と皮肉交じりの発言をします。人間は物を所有する恐ろしい生き物だと。たしかにそうかもしれません。

 

物の所有を覚えた人間は、争います。争いは誰が、どれぐらい所有することへの不満から生まれてくるでしょう。小人にとってそのような不安は理解できないので、人間は獰猛な生き物に見えるかもしれません。

 

彼らの生活はいたってシンプルです。物への感謝に満ちた生活は、日々生きることの意味そのものです。物を借りて、生かされている自分は、一時的な存在という緊張感を生み出します。だからこそ、日々を掴みとろうと一生懸命に生きることができるのでしょう。